サムスンのハイエンドスマートフォン「Galaxy S」の最新モデル「Galaxy S24」シリーズがグローバル発表されましたが、まだ国内発表はされていませんが、海外版のレビュー機材を試用することができたので、そのレビューをお届けします。

今回試用したのは、最上位モデルのが「Galaxy S24 Ultra」。国内ではこの2月に「Galaxy S23 FE」が発表されているので、こちらも比較として試用してみました。

  • 「Galaxy S24 Ultra」と「Galaxy S23 FE」

    「Galaxy S24 Ultra」(左)と「Galaxy S23 FE」(右)

大画面&ハイパフォーマンスの最上位スマホ「Galaxy S24 Ultra」

「Galaxy S24」シリーズは、サムスンのハイエンドスマートフォンです。その中でさらに最上位なのが「Galaxy S24 Ultra」。以前は「Galaxy Note」シリーズの特徴だった、Sペンを使った手書き入力への対応も継承しています。

画面サイズは6.8型で、3,120×1,440ドットのQHD+ Dynamic AMOLED 2Xディスプレイを搭載します。前モデル「Galaxy S23 Ultra」が3,088×1,440ドットだったところ、わずかながら解像度が違うのは、ディスプレイの側面が従来のエッジディスプレイからフラットになった関係でしょう。

  • 「Galaxy S24 Ultra」のディスプレイ

    「Galaxy S24 Ultra」は大画面なので、片手で持つにはちょっと操作が厳しい感じ。コンテンツの閲覧という意味では見やすいので、どちらを優先するかでしょう

  • 「Galaxy S23 FE」のディスプレイ

    これに対して「Galaxy S23 FE」は扱いやすいサイズ。バランスがよいと感じます

「Galaxy S23」シリーズでも「Ultra」以外はフラットディスプレイだったのですが、「S24」シリーズでは「Ultra」もほぼフラットなディスプレイになりました。「ほぼ」と言ったとおり、実際には他のモデルに比べると若干側面がカーブしているのですが、使用感としてはフラットと同等と見ていいでしょう。

従来に比べて画面の輝度も1,750nitsから2,600nitsに明るくなっており、サイズと重さはH162.3×W79.0×D8.6mm/約232gで、ほぼ従来通りです。

  • 「Galaxy S24 Ultra」ディスプレイ正面

    大画面かつ狭ベゼルなので画面がさらに広く見えます

  • 「Galaxy S24 Ultra」背面

    本体背面はマットな質感

画面がフラットになっていますが、操作感が極端に変わったわけではありません。これまではボディを握って持ったときに、画面の橋に指が触れて操作不能になることがありましたが、よりフラットになったので、そうした問題はさらに発生しづらくなりました。画面の端におけるSペンの操作性も良くなりました。

  • 「Galaxy S24 Ultra」と「Galaxy S23 FE」の側面の比較

    右の「Galaxy S23 FE」に比べると、側面端がわずかにカーブしていますが、ほぼほぼフラットです

とはいえ、6.8型というスマホ最大級の画面サイズで、さすがに限界までベゼルが細くなっているので、横幅は従来と変わらず、片手持ちでの操作は大変です。画面サイズの大きさが魅力なので、このあたりはトレードオフではあります。

  • 右側面
  • 左側面
  • 上面
  • 下面

    本体四方の側面

バッテリーサイズが5,000mAhというのは「S23 Ultra」と同じで従来通りですが、公式には動画の連続再生時間が26時間から30時間に伸びた反面、音楽の連続再生時間は99時間から95時間に減少しています。少しよく分からない状況ですが、基本的にバッテリー持続時間は前モデルと変わらない程度という感じでしょうか。

Sペンの収納位置は従来通り左下。右利きのユーザーとしてはこれが右下にあるほうが使いやすいのですが、これはずっと変わりません。Sペンのスペック/機能に変化はなく、目新しいところはありません。

  • Sペンの収納

    Sペンは従来通り左下に収納されています

  • Sペンの使用感

    従来通りSペンの書き味は良好。ただしとくに新機能や進化があるわけではありません

取り出したときに立ち上がるショートカットのエアコマンドや、Sペンのボタンを押しながらペンを振って操作するなどが可能なエアアクションの機能も従来通りです。Sペン自体、もともと使い勝手は良いのですが、そろそろもう一進化がほしいところではあります。

  • Sペンの設定画面1
  • Sペンの設定画面2
  • Sペンの設定画面。エアコマンドやエアアクションといった従来の機能は継続して搭載されています

  • 入力欄への手書き入力

    テキスト入力欄にそのまま手書き入力します

  • Sペンによるカメラ操作

    Sペンを使ってカメラ操作をする機能も搭載

さらに高画質化したカメラ

カメラは従来通り四眼構成のクアッドカメラ。広角のメインカメラで2億画素の超高解像度センサーを搭載するのも従来通りです。超広角カメラは1,200万画素。望遠は光学3倍で1,000万画素、光学5倍で5,000万画素のセンサーとなっています。

今回のポイントは、「Galaxy S23 Ultra」では望遠カメラが最大で光学10倍だったのに対して光学5倍になり、さらに1,000万画素から5,000万画素にアップして、ピクセルビニングによる高画質化が図られたという点です。

  • 「Galaxy S24 Ultra」と「Galaxy S23 FE」のカメラの比較

    カメラは「Galaxy S24 Ultra」(右)が四眼、「Galaxy S23 FE」(左)は三眼の構成。「Galaxy S24 Ultra」のレンズは5つに見えますが1つはセンサーです

これは光学10倍に色々と無理があったということでしょうか。画質面でも安定する光学5倍に抑えたのは悪くない判断だと思います。その代わり、従来は光学ズームで対応していた10倍の倍率がデジタルズームでの対応になりました。ただ、画質面で言うとむしろ高画質になっているようにも感じられます。このあたりは、レンズの改善や画質処理の向上といった部分が奏功したのかもしれません。

  • 「Galaxy S24 Ultra」の光学10倍撮影例
  • 「Galaxy S23 Ultra」の10倍ズーム撮影例
  • 時期が違ううえに構図も少し異なっていますが、「Galaxy S24 Ultra」の撮影サンプル(左)と「Galaxy S23 Ultra」の撮影サンプル(右)を比較してみました。より描写が安定しているのは「Galaxy S24 Ultra」でしょう

もともと画質には定評があった「Galaxy S」シリーズです。派手めの色再現は従来通りですが、トータルでは描写性能も高く、トップクラスのカメラ性能となっています。クアッドカメラで4つのカメラを切り替えて使えるのも便利です。

光学5倍の望遠カメラでピクセルビニングに対応した点には注目です。前モデルの光学3倍から描写自体が大きく変わるわけではないようですが、夜景撮影などで低ノイズの恩恵はありそうです。

最大100倍というデジタルズームに関しては、特に大きな性能向上は感じませんでした。メインカメラでは2億画素/5,000万画素のそれぞれで撮影できますが、画質面では1,200万画素のピクセルビニングでの撮影が高画質なので、あえて高解像度で撮影する必要はないでしょう。

  • 広角カメラの撮影例

    メインの広角カメラでの撮影

  • 光学3倍の撮影例

    光学3倍での撮影

  • 光学5倍の撮影例

    光学5倍。光学3倍と比べても遜色はありません

  • デジタルズーム(10倍)の撮影例

    デジタル10倍ズーム。もちろん画質面では低下していますが、それでも細部までよく再現できています

  • デジタルズーム(30倍)の撮影例

    デジタル30倍ズーム。拡大すると細部は潰れていますが、何が写っているかは分かります

  • デジタルズーム(100倍)の撮影例

    デジタル100倍ズーム。さすがに無理がありますが、縮小画像だとごまかせています

動画では、8Kが24fpsから30fpsに対応してより滑らかに撮影できるようになりました。さらに夜景での画質も高画質化したとされています。実際、「Galaxy S23 FE」と比較してみると、暗所ノイズは大幅に軽減されているようで、よりクリアな画質になっています。その分、ややノッペリしていますが、よく描写されています。

  • 「Galaxy S24 Ultra」の4K/60fps映像からキャプチャした静止画

    「Galaxy S24 Ultra」の4K/60fps映像からのキャプチャ画像

  • 「Galaxy S23 FE」の4K/60fps映像からキャプチャした静止画

    こちらは「Galaxy S23 FE」の4K/60fps映像からキャプチャした画像。比較すると、「Galaxy S24 Ultra」の映像が明らかに低ノイズになのが分かります

静止画に関しても、「Galaxy S23 FE」との差は歴然。もちろん「Galaxy S23 FE」はあくまでFE(Fun Edition)であって最上位機種ではありませんし、「Galaxy S23 FE」も決して描写性能が厳しいというわけではないのですが、「Galaxy S24 Ultra」の描写は一段上です。最新の最上位機種の面目躍如というところでしょう。

  • 「Galaxy S24 Ultra」の夜景撮影例
  • 「Galaxy S23 FE」の夜景撮影例
  • 「Galaxy S24 Ultra」の夜景描写(左)はトップクラス。ISO感度はISO1600、シャッタースピードは1/50秒と、手ブレ・被写体ブレを抑えるためか高感度/高速シャッターになっています。それでいて低ノイズという点が見逃せません。一方の「Galaxy S23 FE」(右)も悪くはないのですが、「Galaxy S24 Ultra」と比べると少々分が悪いでしょう。ISO640と比較して低感度ですが、ノイズレベルは同等。シャッタースピードも1/25秒と遅くなっています。周辺の解像感にも差があるようで、「Galaxy S24 Ultra」の方が隅々までシャープに写っています

同じようなシーンで撮り比べると、「Galaxy S24 Ultra」はISO感度を上げてシャッタースピードを上げているシーンもあり、高ISO感度でも低ノイズを生かして手ブレ/被写体ブレが抑えられています。

反面、昼間の屋外のような明るいシーンでの画質差はあまりありません。基本的には最上位クラスの描写で、たいていのシーンで問題なくよく写ります。少し気になったのが、「Galaxy S24 Ultra」は「Galaxy S23 FE」に比べて落ち着いたトーンで描写されることが多かった点。「Galaxy」シリーズはかなり派手めの色再現と強めのHDRで見た目にインパクトのある描写というイメージがありましたが、シーンにもよるもののだいぶ落ち着いてきている印象でした。

  • 「Galaxy S24 Ultra」の超広角カメラの撮影例1
  • 「Galaxy S23 FE」の超広角カメラの撮影例1
  • 左は「Galaxy S24 Ultra」、右は「Galaxy S23 FE」、それぞれの超広角カメラでの撮影例です。細部の解像感に差があるようにも見えますが、それよりも色再現性の差が気になるところ。見栄えは「Galaxy S23 FE」の方がいいという人もいそうですが、見た目に近いのは「Galaxy S24 Ultra」のほうです

  • 「Galaxy S24 Ultra」の超広角カメラの撮影例2

    超広角カメラの撮影例をもう1点。まずは「Galaxy S24 Ultra」のもの

  • 「Galaxy S23 FE」の超広角カメラの撮影例2

    続いて「Galaxy S23 FE」の超広角カメラによるもの。やはり仕上げの色が異なっています

  • 「Galaxy S24 Ultra」のメインカメラの撮影例1

    メインカメラの撮影例。これは「Galaxy S24 Ultra」のもの

  • 「Galaxy S23 FE」のメインカメラの撮影例1

    こちらは「Galaxy S23 FE」のメインカメラ。やはり色の違いがあります。描写自体の違いはあまり感じません

  • 「Galaxy S24 Ultra」のメインカメラの撮影例2

    これも「Galaxy S24 Ultra」のメインカメラの撮影例。「Galaxy S23 FE」と比較すると、厳密には線の太さが抑えられて、シャープネスが自然になっています。レンズが異なるからかもしれません

  • 「Galaxy S23 FE」のメインカメラの撮影例2

    「Galaxy S23 FE」のメインカメラによる写真は、「Galaxy S24 Ultra」と比べると硬い描写でしょうか

Sペンが付属することで、ペンのボタンをシャッターボタンとして利用するなどの操作が可能です。このあたりは従来通りですが、Sペンを左右に振ってカメラを切り替えるなど、様々な操作ができるので慣れれば慣れるほど便利に使えます。

3倍/5倍というレンズの焦点域も使いやすい画角。デジタルズームでもカバーできる反面、やはり個別のカメラの方が画質は向上します。このあたりは、今後のソフトウェア性能の向上で変化するかもしれませんが、現状だとバランスがいいでしょう。

  • 「Galaxy S24 Ultra」のメインカメラの撮影例3
  • 「Galaxy S24 Ultra」のメインカメラの撮影例4
  • この2点も「Galaxy S24 Ultra」のメインカメラで撮影したもの。画面内に強い光源があっても破綻しづらく、安定した描写

従来通り最大100倍までのデジタルズームにも対応しており、スマートフォン画面上では拡大しなければ十分に何が写っているのか分かる写真になっています。拡大すると絵としては破綻しているのですが、細かいことを言わなければ意外に何が写っているのか分かります。

  • 暗所での撮影例

    暗所の屋内の描写も十分。ただし、明るく写りすぎるのでマイナス補正は必要です

  • 夜景の撮影例

    夜景の描写も問題ありません

基本的にカメラは従来通りで、順当な画質向上を図ったという印象です。

  • 解像度ごとの画質比較/1,200万画素

    撮影解像度の比較、まずは1,200万画素の画質。細部までよく写ります

  • 解像度ごとの画質比較/5,000万画素

    次は5,000万画素の50MPモードで撮影したもの。細部が潰れ気味で、あえてこのモードを選ぶ必要性があるかといわれると微妙です

  • 解像度ごとの画質比較/2億画素

    最後は2億画素で撮影しました。さらに細部が潰れて、デジタルズームのような描写になっています。基本的には1,200万画素での撮影でいいでしょう

生成AIを取り入れた画像編集機能の強化

カメラそのものよりも気になるのが、撮影後の編集機能のアップデート。はやりの生成AIを取り入れて、画像編集機能が強化されています。例えば画像内の人物などの被写体をタッチすると自動選択され、消去できるといった機能です。

  • 画像編集の手順1
  • 画像編集の手順2
  • 画像編集の手順3
  • 画像編集の手順4
  • いちばん左は標準の写真アプリの編集画面。左側にある星マークが生成AIによる編集機能です。写真内の人物などをタッチするとそれが自動選択され、そのまま場所を移動したり消去したりできます。消去を行うといったんその部分が空白になります。そこで「生成」をタップして数秒待つと、消去した部分をAIが生成し、ぱっと見はきれいに消えています

  • 編集前の写真

    元画像(一部画像処理をしています)

  • 編集後の写真

    写り込んでいる人物を消去し、その部分をAIで生成した画像。拡大してみるとさすがに色々と粗がありますし、背後の建物の窓が置き換えられてしまっています。左下には生成AIで静止したことを示すアイコンも記録されています

このあたりの「コンテンツに応じた塗りつぶし」のような機能はこれまでにもあり、また生成AIとの差があまり分かりにくいところですが、画像の角度を変更して背景を補完するといった使い方もできます。

  • 角度補正+生成AI
  • オブジェクト消去
  • 生成AIでは、角度補正をして背景を生成AIで補完するといった機能もあります(左)。もっとも従来から、「オブジェクト消去」のような機能はありました(右)

  • オブジェクト消去で編集したもの

    これは先の画像の写り込んだ人物の一部を「オブジェクト消去」で消したもの

まあ、現状はまだ失敗も多く、複雑なことはできません。「たまたまうまくいったらラッキー」ぐらいの気持ちでいた方がいいでしょう。観光地の写真で写り込んだ人を消す、といったぐらいの使い方が良さそうですが、これも今後ますます発展していきそうです。

  • オブジェクト消去でビルを消去

    ちなみにオブジェクト消去だと、文字通り消去しかできません(背後のビルに注目)

  • 生成AIでビルを置き換え

    生成AIを利用する場合は、こんなふうに違うビルで置き換えることもできます

まとめ

最新のSoCであるSnapdragon 8 Gen 3 for GalaxyはAI性能を向上させたとしており、生成AIを活用した機能は今後もますます追加されることになりそうです。今回は試用版の制限もありカメラ関係の機能を中心に紹介しましたが、AI活用はカメラ以外の場面でも行われます。

そんなSnapdragon 8 Gen 3 for Galaxyを搭載した「Galaxy S24 Ultra」は、パフォーマンス面でも優秀。今回はベンチマークテストは行っていませんが、使っていてパフォーマンス不足を感じることはほとんどなく、問題は感じませんでした。

全体的に、デザイン面がさらに良くなり、Sペンの操作性も従来通り快適。カメラの進化もあり、生成AIによる新たな可能性を感じられるということで、最上位モデルとして満足できるデバイスに仕上がっていると感じました。