普段何気なく使っている言葉の中にも、実は海外の言葉が日本語として定着した「外来語」が数多くあります。
本記事では英語はもちろん、英語以外の言語がもととなった外来語と、その意味や由来を紹介します。併せて和製英語もまとめました。
英語がもとになっている外来語一覧
まずは外来語の中でも数が多い、英語がもとになっている言葉の例を紹介します。
オクラ
野菜の「オクラ」の名前は、英語由来です。英語でオクラは「okra」と表記されます。
オクラは、紀元前2,000年代頃の古代エジプトで既に栽培されていたそうです。日本には、幕末から明治初期にアメリカ経由で伝わり、1970年代に全国的に広まりました。
なおオクラは英語圏だけでなく、スペイン語やドイツ語、オランダ語などの言語でも「okra」と表現されています。
ミシン
衣類などを縫う「ミシン」は、英語の「sewing machine(ソーイング・マシン)」を語源とする外来語です。この、ソーイング・マシンの「マシン」がなまって「ミシン」になったといわれています。
日本に最初にミシンが伝わったのは1854年で、来航したアメリカのペリー提督から、徳川将軍家に贈られたと伝えられています。
簿記
ビジネスにおいて、金銭の出し入れを記帳して整理する方法を「簿記」と言います。実はこの簿記が、英語由来の外来語であるとする説があるのです。
英語では簿記のことを「bookkeeping」と表します。この「ブックキーピング」の発音が、日本語の「簿記」になったといわれています。
なお、現在使用されている複式簿記を日本に伝えたのは、「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」の言葉で有名な福沢諭吉といわれています。
バズ・バズる
「バズ」「バズる」は、一時的に注目が集まり、世間の話題となることを表す外来語です。特にSNSや動画配信サービスなどの流行によって、広く使われるようになっています。
英語の「buzz(バズ)」は元々、ハチなどがブンブン飛んでいる様子や、機械が騒音を立てながら動く状態を表しています。さらに「うわさを立てる」「ざわつく」などの意味もあります。
日本では「バズ」だけでなく、その語尾に「る」をつけて、「バズる」という動詞としても広まっています。
英語でも「This is making a buzz on X.(これはXでバズっているよ)」といった形で使われます。
画廊
「画廊」は、絵画や彫刻などの美術作品の展示や、イベントの開催などに使われる空間を指します。
この画廊は、英語の「gallery(ギャラリー)」からの外来語とする説があるのです。
「ギャラリー」には「部屋同士を結ぶ、廊下としての機能も備えた長い部屋」の意味があり、西欧の貴族たちが自宅の一部を、美術品を展示する空間として使用していたことが、今日の画廊につながっているといわれています。
コンピューター
日本でも、今やオフィスワークには欠かせないと言える「コンピューター」は、英語の「computer」が語源です。
なお「computer」は英語で「計算する」という意味の動詞「compute」から来ており、「compute」はさらにラテン語が語源となっています。
背広
スーツを指す「背広」も、実は英語由来の外来語とされています。
詳細な由来には諸説ありますが、「市民服」を意味する「civil clothes(シビル・クロウズ)」がなまって日本語になった説が有力です。
また、ロンドンの高級洋服店が並ぶ通りの名「Savile Row(サビル・ロウ)」からとする説や、羊毛の産地「Cheviot(チェビオット)」からとする説などもあります。
英語以外の言語由来の外来語一覧
次に、英語以外の言語が由来となった外来語の例を見ていきましょう。
天ぷら
日本を代表する料理の一つ「天ぷら」は、実は外来語です。天ぷらはポルトガル語で「調理」の意味を持つ「tempero(テンペーロ)」が日本語化したとする説が有力です。
天ぷらが日本に伝わったのは16世紀頃です。
煙草(タバコ)
嗜好(しこう)品の「煙草(タバコ)」も、ポルトガル語の「tabaco」由来の外来語といわれています。
煙草が日本に伝わったのは戦国時代の末期頃といわれており、日本に渡来したポルトガル人によってもたらされたとする説が有力です。
じょうろ
「じょうろ」は、草花に水をかける際に使用する道具で、元々はポルトガル語由来の外来語であるといわれています。
ポルトガル語では、水の噴出を「jorro(ジョルロ)」と言い、これがなまって「じょうろ」になったとする説が有力です。「如雨露」という当て字もあります。
かるた
室内で遊べるカード型の遊戯具「かるた」は、ポルトガル語の「carta(カルタ)」が語源といわれています。
「歌留多」という当て字があります。
かぼちゃ
日本人にもなじみ深い野菜の「かぼちゃ」は、ポルトガル語由来の外来語です。
かぼちゃは、カンボジアで採れたウリの一種として、日本に来航したポルトガル人によって伝えられたといわれています。このときの「Camboja(カンボンジャ)」がなまって「かぼちゃ」になったとする説が有力です。
ポン酢
「ポン酢」は柑橘系の果実の汁を使った調味料です。和食にもよく用いられますが、オランダ語の「pons(ポンス)」から来た外来語といわれています。
オランダ語では「pons(ポンス)」は柑橘系果実を搾った汁を指し、元々は柑橘果汁やスパイスを蒸留酒に混ぜたカクテルの一種だったそうです。このポンスの音がなまって、さらに「酢」を当て字として「ポン酢」になったとする説が有力です。
お転婆(おてんば)
「お転婆」は活発な女の子に対して使われる言葉で、オランダ語由来の外来語であるとする説があります。
オランダ語では「御しにくい、ならしにくい」ことを「ontembaar(オンテンバール)」と言います。これが日本語に変化して「お転婆」となったと考えられています。
カンパ
人々がお金を出し合う「カンパ」は、ロシア語の「kampaniya(カンパニア)」の略だとする説が有力です。
ロシア語で「カンパニア」は、「政治的な活動や闘争」の意味を持ち、目的を達成するために大衆を先導する組織的活動の意味合いがあります。ここから、目的達成のための資金集めのことを表現するのにも「カンパ」が使われるようになったといわれています。
イクラ
日本でもおなじみの食材「イクラ」は、ロシア語由来の外来語です。
日本ではサケやマスの卵をイクラと呼びますが、ロシア語では、魚の卵のことを総称して「ikra(イクラ)」と呼びます。
ドン
「首領」や「親分」などの意味で用いられる「ドン」は、スペイン語やイタリア語を由来とする外来語です。
スペイン語やイタリア語では、男性の名前の前に敬称として「Don」をつけることがあります。この敬称としての「ドン」は、元々貴族階級の出身に人に対して使う言葉でしたが、現在では「~様」や「~さん」のようなニュアンスで使われています。
ネイティブには通じない和製英語に注意
和製英語は、英単語をつなぎ合わせるなどして日本で独自に作った言葉で、ネイティブには通じません。身近な言葉にも和製英語は多くあるので、覚えておきましょう。下記に例を紹介します。
ホッチキス
紙を束ねる「ホッチキス(ホチキス)」は、ネイティブに通じない和製英語です。日本で最初に販売されたものが「E・H・ホッチキス社製」のものだったことが由来で、日本ではこう呼ばれるようになりました。
英語ではホチキスのことを「stapler(ステープラー)」と呼び、「staple(ステープル)」はコの字型の針を指しています。
スマート
日本では体形の表現に使われる「スマート」という言葉も、和製英語の一つです。
英語では、ほっそりしている人の体形は「slim(スリム)」と言います。本来、英語の「smart(スマート)」は、「頭が良い」や「動きがキビキビしている様子」を表す言葉なので注意が必要です。
コンセント
電気を通す「コンセント」も和製英語です。英語のネイティブに「コンセント」と言っても通じません。
英語圏では米国を中心に「outlet(アウトレット)」と言います。またイギリスでは「socket(ソケット)」と呼びます。
ロース
焼き肉やとんかつなどでおなじみの「ロース」は、英語の「roast(ロースト)」が由来となった和製英語です。
roastには、「焼く」や「炙る(あぶる)」という意味があり、焼いたり炙ったりして食べるのに最適な部位の肉ということからロース肉と呼ばれるようになったと考えられています。一般的に肩や背中、モモ肉などがこれにあたります。
クレーム
日本では、企業や行政窓口などに利用者が文句を言うことを「クレームをつける」「クレームを言う」などと言いますが、これも英語とは意味が異なる和製英語です。
本来、英語の「claim」は「主張する」「要求する」「言い張る」という意味を持ち、日本語の「クレーム」のことは「complaint(コムプレイント)」と言います。
サイン
日本では、有名人の書いた名前や署名のことを「サイン」と言いますが、これは英語では通じない和製英語です。
英語の場合、有名人などのサインは「autograph(オートグラフ)」、署名は「signature(シグネチャー)」と表現されています。
マンション
日本語で集合住宅のことを指す「マンション」は、英語ではその意味が変わります。
英語では「mansion(マンション)」は富豪などが住む「大邸宅」を意味しており、一般的な集合住宅は 「apartment(アパートメント)」や「condominium(コンドミニアム)」と言います。イギリス英語の場合は「flat(フラット)」と表現されます。
ノートパソコン
現代生活に欠かせない「ノートパソコン」も、ネイティブには通じない和製英語の一つです。
ノートパソコンは英語で「laptop(ラップトップ)」と言います。laptopの「lap」は、日本語にすると「膝」の意味。膝(lap)の上(top)にのせて使うパソコンなので、英語ではノートパソコンのことを「laptop」と呼びます。
シュークリーム
大人気のスイーツ「シュークリーム」も和製英語です。元々「シュークリーム」は、フランス語の「chou à la crème(シュー・ア・ラ・クレーム)」と、英語の「cream(クリーム)」が合わさってできた言葉だといわれています。
英語で「シュークリーム」と言うと「shoe cream」、つまり「靴のクリーム」となってしまいます。日本語の「シュークリーム」は英語では「cream puff(クリームパフ)」と呼ばれます。
外来語とはどんな言葉か
ここでは、そもそもの外来語の定義や、歴史について見ていきましょう。
外来語の意味・歴史とは
外来語とは、外国語から取り入れた言葉が、その国の言語の一部として常用されるようになった言葉を指します。他国の言語を借用して、自国の言葉として使用していることから、「借用語」と呼ばれることもあります。
日本における外来語は、中世末期にポルトガル語が日本語として使われるようになったものや、江戸時代にオランダ語から流入したものもありますが、多くは明治以降に渡来してきたものです。
現在の外来語には英語からの言葉が多く、英語由来の外来語は全体のおよそ8割を占めるといわれています。その他の言語からの外来語には、ポルトガル語やオランダ語に加え、ドイツ語、フランス語、イタリア語由来のものなどがあります。
なお広義では中国語から入った漢語も含まれますが、狭義では主に欧米諸国からの言葉を指します。
和製英語・カタカナ語の意味とは
「外来語」と似た言葉で、「和製英語」と「カタカナ語」があります。
日本における「外来語」とは前述のように、英語をはじめとした外国語から取り入れた言葉が、日本語として定着したものです。
「和製英語」とは英単語をつなぎ合わせるなどして日本で独自に作った、英語っぽい言葉のことを言います。文法や意味が異なるため、英語としては通じません。
また「カタカナ語」とは、カタカナで表記する言葉のことで、主に外来語のことですが、和製英語のことも含みます。
外来語を理解して世界とつながろう
日常の中で特に意識せずに使っている言葉にも、英語やその他の言語由来の外来語が混ざっています。また、日本独特の和製英語やカタカナ語も数多くあり、私たちは日常的にそれらを使用しているのです。
外来語の由来を知れば、外国語の学習や、文化を知ることにもつながるでしょう。