テンペとはどのような食べ物?

テンペはインドネシア発祥の大豆発酵食品。同国では400年以上前から食べられている伝統的な食材です。日本の納豆とも似ていますが、納豆は蒸した大豆を納豆菌で発酵させたもので、テンペは水煮した大豆をテンペ菌(クモノスカビ)で発酵させたものです。形状も納豆とは異なりブロック状のかたまりです。

味は淡白でクセがない

大豆の発酵食品というと納豆のように独特の味でにおいが強そうですが、意外にも淡泊でにおいもありません。大豆の味が主体で、少し納豆と似た風味も感じられますが、糸を引くことはなく、クセが少なく淡泊な味で食べやすい食材です。

解凍後、加熱調理が基本

テンペは冷凍で販売されていることが多いので、その場合は自然解凍または電子レンジで解凍してから加熱調理します。焼く、揚げる、炒める、煮る、蒸すなど、さまざまな調理ができますが、生で食べることはありません。

植物性でも過剰摂取には注意

テンペの原材料の大豆は、タンパク質や食物繊維などの栄養が豊富です。だからといって特定の栄養補給のために大量に食べていいわけではありません。厚生労働省と農林水産省が策定する「食事バランスガイド」などを参考に、一つの食品や成分に偏らずバランスのよい食事を心がけましょう。また、大豆に含まれる機能性成分、大豆イソフラボンは女性ホルモンと似た働きをするため、サプリメントで追加摂取するとホルモンバランスの乱れが生じることがあります。

テンペに含まれている栄養と効能

テンペは高タンパク・低糖質で、糖質制限などの食事にも利用されています。また、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富に含まれ、栄養価に優れたスーパーフードとしても注目されています。テンペに含まれている栄養を見ていきましょう。

タンパク質

テンペには100gあたり15.8gのタンパク質が含まれています。この値は同量の豆腐の倍以上、鶏むね肉の7.4割に相当します。タンパク質は、筋肉、臓器、皮膚、毛髪などを構成し、体の機能を調整するホルモン、酵素、抗体などを作るために欠かせない成分です。

ミネラル

テンペはミネラルが豊富な食品です。非発酵の大豆食品の豆腐と比べて、カリウム、リン、鉄、亜鉛などが多く含まれています。カリウムは塩分の取りすぎを調整し、リンはカルシウムとともに骨や歯を形成します。また、鉄は赤血球に存在し全身に酸素を運び、亜鉛はDNAやたんぱく質の合成に欠かせない成分です。

ビタミンB群

ビタミンに関して、テンペは非発酵の大豆食品の豆腐と比べてビタミンB群を多く含んでいます。ビタミンB群は水溶性のビタミンで血液などの体液に溶け込んで、体内のさまざまな代謝に必要な酵素の働きを補っています。

食物繊維

大豆は食物繊維が多い食品の一つで、テンペには100gあたり10.2gの食物繊維が含まれています。食物繊維には、整腸作用、血糖値の上昇抑制、血液中のコレステロール濃度を低減させるなどの働きがあります。日本人に不足しがちな食品成分なので積極的な摂取が勧められます。

テンペはどこで買える?

日本ではテンペを見かける機会は少ないかもしれませんが、業務スーパーなどの量販店、ナチュラルフード(自然食品)店、アジア食材店などで販売されていることがあります。また、Amazonや楽天などの通販サイトで手軽に購入することができます。商品にもよりますが、240gで500円(税別)程度です。

テンペを自分で作る方法

テンペは自分で作ることもできます。原材料は大豆とテンペ菌のみ。機材は発酵中の温度を保つための発酵器が必要です。テンペ菌は本場インドネシア産のほか、日本国内で製造されたものもあり、粉末の状態でネット通販などで入手することができます。テンペの作り方の手順を見ていきましょう。

材料(作りやすい分量)

大豆(乾燥)200~1000g
酢 (大豆200gに対して)100ml
テンペ菌 大豆200gに対して1~10g(菌種によって異なる)
米粉または片栗粉 適宜

1.大豆を洗い、水につける

大豆をボウルに入れ、水で洗います。皮の汚れは発酵に影響を及ぼすことがあるため、ていねいに落とし、洗ったあとは大豆の量の4倍ほどの水を入れ、微生物の増殖を防ぐため食酢を加えて6〜24時間ほどつけておきます。大豆が水を吸うと容積が2.5倍以上に増えるので、大きめのボウルを使用しましょう。

2.薄皮をむいて煮る

水につけた大豆は薄皮をむきます。薄皮が残っているとテンペ菌が付着しにくいため、きれいに落としましょう。大豆をこすりあわせるとうまくむけます。薄皮をむいた大豆を鍋に入れ、大豆の重量の約4倍の水に分量の酢を加えて、1時間ほど弱火で煮ます。

3.水切りをして冷ます

煮上がった大豆はザルにあげて水を切ります。ザルをやさしく振って水分を蒸発させながら、大豆の温度を40℃くらいまで冷まします。大豆の表面に水分が残っていると発酵に影響するため水分はしっかりと蒸発させましょう。

4.テンペ菌をつける

大豆にテンペ菌を種付けします。大豆200gに対しテンペ菌1〜10gが目安です。テンペ菌は10倍の量の米粉または片栗粉を加えて混ぜ合わせておきます。水を切った大豆はポリエチレン袋などに入れ、米粉または片栗粉と混ぜ合わせたテンペ菌が全体にまんべんなく行き渡るようにまぶします。種付けが完了したら食品保存袋に移します。テンペ菌は発酵すると炭酸ガスを発生するため、食品保存袋には空気穴をあけておきます。目安は3cm四方ごとに1カ所です。

5.保温・発酵させて完成

テンペ菌を種付けした大豆は、食品保存袋を平らに寝かせて押し固めて形を整え、30~32℃で保温しながら発酵させます。発酵時間は季節によって異なりますが20〜24時間が目安。保温器を使うと便利です。大豆の表面が白い菌糸に覆われ、ブロック状に固まれば完成
です。長期保存する場合は、袋のまま冷凍庫に入れます。

テンペをおいしく食べる! おすすめレシピ5選

テンペは程よい弾力があり、味は淡泊でクセがなく、焼く、揚げる、煮るなど幅広い調理法で和洋中さまざまな料理に使いやすい食材です。レシピサイトからおすすめ料理をピックアップしました。

テンペのから揚げ

お肉のような食感を生かしてから揚げに。下味をしっかりつけることがポイント。衣に米粉を使い、フライパンで揚げ焼きにすると、少量の油でよりヘルシーにカラッと上がります。

テンペの塩麹焼き

大豆発酵食品のテンペを発酵調味料の塩麴でうまみアップ。発酵の力を取り入れた味わい深くヘルシーな一品。ストックの材料で手軽に作れますが、テンペと塩麴を手作りするところから始めても面白いかもしれません。

テンペのディップ

テンペをすりつぶしてディップのベースにするというアイデア料理。マヨネーズとの相性もよく、なじみのある味わいに。卵不使用の豆乳マヨネーズでヴィーガン対応にも。テンペは蒸すとすりつぶしやすくなるそうです。

酢豚風テンペ

お肉の代わりにヘルシーなテンペを使った中華の定番料理。一口大のテンペのかみ応えも満足なボリューム料理。テンペ自体にしっかりとしょうゆで下味をつけることがおいしく作るポイントです。

テンペのてりやき

テンペの弾力のある食感とクセのない味は甘辛のたれと相性抜群で、ご飯も進みます。キャベツやラディッシュなどの野菜と一緒に見た目もヘルシーに盛り付けたワンボウルで、てりやき丼にもぴったりです。

多様な食生活に対応するスーパーフード

日本人にも親しみのある大豆の発酵食品。インドネシアの納豆と呼ばれるテンペは、高タンパク・低脂肪・低糖質で栄養価が高く、食材としての汎用(はんよう)性が高いことが魅力。弾力のあるブロック状のかたまりで、クセのない淡泊な味。好みの形や大きさにカットすれば幅広い調理法で味付けができるので、料理レシピのバリエーションも豊富。まだ一般的には知られておらず、流通量や販売店も限られていますが、国産の材料を使って家庭で手作りすることもできます。健康志向や糖質制限、ベジタリアン、ヴィーガンなど多様な食生活にも対応できるスーパーフード。今後さらに注目を集めそうです。