2024年2月2日から、NVIDIAの新たなエントリーGPUとなる「ビデオメモリ6GB版GeForce RTX 3050」の発売がスタートした。このGPU最大の特徴は、ロープロファイルサイズかつ補助電源不要の製品が存在していること。

長らくこの条件を満たすGPUの最高峰はGeForce GTX 1650だったが、ついに変化するときがきた。今回はMSIの「GeForce RTX 3050 LP 6G OC」を用意したので、さっそくレビューをお届けしよう。

  • MSIの「GeForce RTX 3050 LP 6G OC」。実売価格は3万3,000円前後

今回紹介するMSIの「GeForce RTX 3050 LP 6G OC」は、GPUにビデオメモリ6GB版のGeForce RTX 3050を搭載するビデオカードだ。6GB版は2022年1月に発売され、エントリーGPUの定番になっているビデオメモリ8GB版のGeForce RTX 3050からスペックを削り、より低価格化したエントリーモデルという位置づけになっている。一番のポイントはカード電力が70Wへと減ったことで、RTXシリーズでは初となる補助電源不要での動作が可能になったことだ。

現行NVIDIA GeForceシリーズにおいて補助電源不要、かつ最もパワフルなモデルとなると、5年前に発売された「GeForce GTX 1650」しか選択肢が残っていなかった。CUDAコアはたったの896個とかなり少なく、VRAMも4GBしかない。AI機能も一切搭載しておらず、ゲーミング性能を大幅に引き上げられる「DLSS」にも対応していなかったので、機能面でも見劣りしていた。

しかも、MSIの「GeForce RTX 3050 LP 6G OC」は背の低いロープロファイルサイズにも対応している。拡張カードがロープロファイルサイズにしか対応していない、ゲーミング仕様ではないスリム型PCの強化にうってつけというわけだ。

これまでロープロファイルサイズに対応するのはGDDR5版のGTX 1650が中心だったので、ようやくの世代交代かと思う人もいるだろう。なお、GTX 1650はGDDR5版、GDDR6版の2種類があり、しかもコアで分けると4種類もあるとバリエーションが複雑なGPUだ。ここでは、GDDR5版のスペックを掲載する。

GPU名 RTX 3050(8GB) RTX 3050(6GB) GTX 1650(GDDR5)
CUDAコア数 2,560 2,304 896
ベースクロック 1552MHz 1042MHz 1458MHz
ブーストクロック 1777MHz 1470MHz 1665MHz
メモリサイズ GDDR6 8GB GDDR6 6GB GDDR5 4GB
メモリバス幅 128bit 96bit 128bit
アーキテクチャ Ampere Ampere Turing
DLSS 2 2 非対応
NVENC 第7世代 第7世代 第6世代
カード電力 (W) 130 70 75

気になる性能テストの前に、今回紹介するMSI GeForce RTX 3050 LP 6G OCのスペックを紹介していこう。ブーストクロックは定格の1,470MHzから若干OCされた1,492MHzながら、カード電力は70Wと定格通りだった。カード長は174mmと、Mini-ITXの奥行きである170mmとほぼ同じ。小型PCにも組み込みやすいサイズと言える。なお、厚さは2スロットにしっかり収まっている。

  • GPU-Zによる情報。ブーストクロックは1,492MHzと少しだけOCされている

  • 実測で50mm径のファンを2基備える。カード長は174mmだ

  • 出力はDisplayPort1.4×1、HDMI2.1×2で3画面同時出力に対応

  • ロープロファイル用のブラケットも付属。スリムPCにも組み込みやすい

  • 補助電源は不要だ。PCI Expressスロットからの給電だけで動作する

GeForce GTX 1650を大きく上回るパワー。DLSS対応タイトルでは圧倒的性能

気になる性能チェックに移ろう。テスト環境は以下の通りだ。比較対象としてビデオメモリ8GB版のGeForce RTX 3050と、GDDR5版のGeForce GTX 1650を用意した。

  • CPU:AMD Ryzen 9 7900X(12コア24スレッド)
  • マザーボード:ASUS ROG CROSSHAIR X670E HERO(AMD X670E)
  • メモリ:Micron Crucial DDR5 Pro CP2K16G56C46U5(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)
  • ビデオカード:MSI GeForce RTX 3050 AERO ITX 8G OC(NVIDIA GeForce RTX 3050)、ASUS GTX1650-O4G-LP-BRK(NVIDIA GeForce GTX 1650)
  • システムSSD:Micron Crucial T500 CT2000T500SSD8JP(PCI Express 4.0 x4、2TB)
  • CPUクーラー:Corsair iCUE H150i RGB PRO XT(簡易水冷、36cmクラス)
  • 電源:Super Flower LEADEX V G130X 1000W(1,000W、80PLUS Gold)
  • OS:Windows 11 Pro(23H2)

まずは、3D性能を測定する定番ベンチマークの「3DMark」から見ていこう。

  • 『3DMark』実行時における性能

GeForce GTX 1650からは、40%ものスコア上昇が確認できた。今回用意したGeForce GTX 1650は、ロープロファイルで補助電源不要という同じ条件のモデル。それでこれだけの性能アップを果たしているのは素晴らしい。逆に8GB版のGeForce RTX 3050に対しては約25%スコアダウンとそれなりに性能差はある。ただ、8GB版のGeForce RTX 3050は8ピンの補助電源接続が必要になるため、スリムPCのゲーミングPC化には向かないモデルだ。

次は、実際のゲームを試そう。まずは、人気FPS/TPSから「Apex Legends」と「フォートナイト」を実行する。Apex Legendsは、トレーニングモードの一定コースを移動した際のフレームレート、フォートナイトはリプレイデータを60秒再生した再生した際のフレームレートをそれぞれ「CapFrameX」で計測した。

  • 『Apex Legends』実行時における性能

  • 『フォートナイト』実行時における性能

Apex Legendsは、中画質の設定で見るとGeForce GTX 1650に対して約40%フレームレートが上回る3DMarkと同じ傾向だ。8GB版のGeForce RTX 3050のほうが約26%上回るという結果も同様。高画質設定だと6GB版のGeForce RTX 3050は性能不足なのか、GeForce GTX 1650との差は小さくなる。

注目なのは、フォートナイトは画質のプリセットを最高にしても平均60.1fpsに到達しており、快適にプレイできるフレームレートが出ている点だろう。8GB版のGeForce RTX 3050とGTX 1650との差も順当と言える結果だ。

続いて、DLSSに対応するタイトルを試してみよう。「サイバーパンク2077」と「Call of Duty: Modern Warfare III」を用意した。どちらもゲーム内のベンチマーク機能を利用している。DLSSやFSRといったアップスケーラーを有効にした場合は、すべて「バランス」に設定して実行した。

どちらもAIによるフレーム生成が可能なDLSS 3対応タイトルだが、これを利用できるのはRTX 40シリーズが必要。RTX 30シリーズは超解像機能だけのDLSS 2までの対応となる点は注意したい。

  • 『サイバーパンク2077』実行時における性能

  • 『Call of Duty: Modern Warfare III』実行時における性能

サイバーパンク2077はGeForce GTX 1650と比較するために、レイトレーシングは利用していない。それでも画質プリセットを「ウルトラ」にした場合の描画負荷は高く、DLSSを使っていない場合は平均38.5fpsしか出ていない。しかし、DLSSを有効にすれば平均61.1fpsまで向上して十分快適にプレイできるフレームレートになる。

GeForce GTX 1650はDLSSに対応していないため、代わりにどのGPUでも使えるアップスケーラーのFSR 2.1を利用したが、それでも平均35.9fpsまで。基本性能の差に加え、DLSS対応の有無は大きいと言えそうだ。6GB版のGeForce RTX 3050でもDLSSに対応していれば、かなりの高画質設置でもゲームがプレイできるという事実は強力なアピールポイントになるだろう。

Call of Duty: Modern Warfare IIIも同様だ。画質プリセット最上位の「極限」でもDLSSを有効にすれば、平均71fpsと快適にプレイできるフレームレートを出せる。ただ、このゲームのポイントはDLSS 3と同様の「アップスケーラー&フレーム生成」を組み合わせたFSR 3に対応していること。

FSR 3は幅広いGPUで利用できるため、GTX 1650では適用し、画質を「ベーシック」にすれば、DLSSを使った6GB版のGeForce RTX 3050にかなり近くなる。FSR 3はRadeonだけではなく、旧世代GPUの延命につながる技術であると感じさせる結果だ。

フルHDなら多くのゲームを楽しめるパワーを、補助電源なしで実現

6GB版のGeForce RTX 3050はロープロファイル&補助電源不要のビデオカードに新時代が到来したと言ってよい結果だろう。これまで最高クラスだったGTX 1650に対しておおむね40%の性能向上があり、DLSSに対応したゲームなら高画質設定でもフルHD解像度という条件はあるが、快適にプレイできるフレームレートを出せるパワーがある。スリム型PCのゲーミングPC化手段として、間違いなく人気になるだろう。

  • 補助電源レスGeForceの任を長く背負って立つ製品になりそうだ