第9期叡王戦(主催:株式会社不二家)は本戦トーナメントが大詰め。2月28日(水)には糸谷哲郎八段―本田奎六段の一戦が関西将棋会館で行われました。対局の結果、得意の角換わり早繰り銀から抜け出した糸谷八段が117手で勝利。難敵を下してベスト4入りを決めています。

見えてきた頂上

残された4強の座はひとつ。これまでに永瀬拓矢九段、伊藤匠七段、青嶋未来六段が準決勝入りを決めています。振り駒が行われた本局は先手となった糸谷八段が角換わりを志向、玉の囲いもほどほどに早繰り銀の積極策を披露します。対する本田六段は腰掛け銀で対抗。

後手が攻防の自陣角を放ったのは先手のさばきを抑える定跡化された対応で、実戦はここから第二次駒組みに入ります。継ぎ歩の手筋で8筋を押し込んだのは本田六段の確実なポイントながら、本局では糸谷八段の繰り出した早繰り銀の再活用が光ることになりました。

糸谷流の早指しで快勝

成り捨ての歩で後手陣を乱した糸谷八段はおびき出した桂を目標に攻撃を続行。続けて打った端角が気づきづらい好手で、「桂の高跳び歩の餌食」の形となった後手は駒損を避けられません。感想戦ではこの直前、本田六段が打った銀取りの歩打ちが失着とされました。

角と銀桂の二枚換えで駒得に成功した糸谷八段は好調な攻めでリードを拡大します。飛車取りを手抜いて角を取ったのが速度重視の決め手で、豊富な持ち駒で敵玉への寄せを読み切った格好です。終局時刻は15時27分、受けなしを認めた本田六段が投了を告げました。

局後の検討では早繰り銀の攻めを受けるために後手は引き飛車からの大転換を見せる必要があったとの結論に。勝った糸谷八段は3時間の持ち時間のうち1時間以上を残す快勝でベスト4に進出。次戦で挑戦者決定戦入りを懸けて永瀬九段と対戦します。

水留啓(将棋情報局)

  • 糸谷八段は公式戦の連敗を3でストップ(未放映のテレビ対局除く)(写真は第46期棋王戦第1局のもの 提供:日本将棋連盟)

    糸谷八段は公式戦の連敗を3でストップ(未放映のテレビ対局除く)(写真は第46期棋王戦第1局のもの 提供:日本将棋連盟)