2023年の世界選手権でパリ2024パラリンピック出場権を獲得したパラアーチェリーリカーブミックスの上山友裕選手&重定知佳選手、通称ウエシゲペア。好調の秘密に迫ろうと〇✕クイズを出題すると、それぞれの性格や競技中の様子がくっきり浮かび上がってきて……。

上山友裕(うえやま・ともひろ)
リカーブ男子。野球好きで、オリックス・バファローズのファン。メジャーリーグのドジャースに山本由伸が行くという予想が的中。「レッドソックスには(元オリックスの)吉田正尚がいるけど、ドジャース応援します」。遠征の必需品は、NintendoSwitch(ニンテンドースイッチ)。

「2028年のパラリンピックはロスですね?」と話を振ると、「パリの後のことはわからないけど、ちょっとロスには行ってみたいですよね(笑)」

重定知佳(しげさだ・ちか)
リカーブ女子。遠征には、米とライスクッカーとふりかけを持参。ふりかけは、「『永谷園おとなのふりかけ 紅鮭』が好き」。しかし、「米より(ゲーム機の)NintendoSwitchの方が大事」。遠征中の空き時間は、バトルロイヤルゲーム『Fortnite』に参戦。

「推しは、三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEの今市隆二くんです」

――〇✕クイズを出します。直感で答えてくださいね。

Q1 このペアは私のおかげで成立している。
上山:
重定: ✕⇒〇

「『立ち位置』も決まっていて右が僕で左が重定さんです」と上山選手

重定知佳(以下、重定): ✕です。だって、「私のおかげ」でしょう? 上山くんがいるからこのペアが成立してるので、私だけじゃないよっていう意味で。

パラリンピックを目指すようになったきっかけは上山選手。そんなわけで謙虚な重定選手です

上山友裕(以下、上山): いやいやいやいや、両方のおかげでしょう。だって、男子が僕で、女子が重定さんじゃなかったら、ウエシゲじゃなくなりますから。

重定: 確かに。では、〇にします。

上山: よし、論破した(笑)

重定選手は、アーチェリーを始めたとき、趣味だった釣り道具をごっそりコーチに譲って競技一色の生活に。大会後は一週間ずっと猫をなでて過ごすこともあるとか

Q2 自分は運が強いと思う。
上山:
重定: ▲⇒〇

上山: 運は、僕はあると思います。

重定: どういう運?

上山: 人生。

重定: なるほど。人生だと私も〇かな。

上山: 僕はたまたま、健常者のときにアーチェリーをやってたから今がある。この足になったから今がある。だから、運はいいかな。

重定: 上山くんとの出会いは運命的です。出会えてなかったら、競技を続けていなかったし、自分の人生を削ってでも上山くんと一緒にパラリンピックに出たいっていう気持ちでこの道に入ったので。それを考えると、二重、三重の〇、いや花丸ぐらい。

――ちょっと時代がずれてたら、会えてないわけですしね。

上山重定: そうそう。


Q3 運動神経がいいのは私だ。
上山:
重定:

表情が豊かな上山選手です。「撮っているこちらが楽しくなりますね!」とはカメラマン談

重定: パラアーチェリーの前は車いすテニスをしていたのですが、結局、運動神経がないから辞めたんです。そもそもスポーツ系でもない。

上山: 僕の運動神経は真ん中ぐらいかな。パラリンピアンだから何でもできるんちゃうかって、ほかのスポーツに挑戦する企画に呼んでいただくことがあるんですけど、あれはちょっときつい。卓球をしたときは、岩渕幸洋(パラ卓球)にめっちゃ負かされましたもん。

――車いすで走るならどうですか。

上山: 佐藤友祈(陸上競技/車いす)と比べたら、全然(笑)。


Q4 私の方が繊細だと思う。
上山:
重定:

重定選手のほうが5歳上ですが、アーチェリー歴は上山選手の方が長いです。ふたりが対決したら勝率は?「五分五分じゃないですかね」(上山選手)

重定: 私の方が繊細だな。私、結構“気にしい”なんですよ。そういうところが試合にちょこちょこ出てくる。

上山: そうですね。これは重定さんだな。

――試合中、何か気になることがあるんですか?

重定: なんだろう……。(リカーブ女子に出場して一人で試合をするときは)メンタルの波があるんですよね。

上山: 試合に入り込み過ぎるとメンタルを持って行かれるので、末武コーチが後ろから声をかけて、修正しているんですよ。


Q5 私の方がメンタルが強い。
上山:
重定:

射撃など“的当て系スポーツ”全般に興味があると重定選手。「ちなみにダーツにもチャレンジしたことあるけど、まったく的に届きませんでした」

上山: 重定さんは✕だと思ったら〇できた。どういうメンタルで試合をやってるのかは、本人の中に入らない限りわからないです。僕は、前より強くなってると思ってるけど。

重定: 私も前より全然強くなってると思う。

――東京2020パラリンピックのときは、どちらかというと、重定さんが支える方というイメージでしたが。

上山: あ、いや、それは噂だけで(苦笑)。

重定: 私、ミックスのときは全然緊張しないんです。

上山: 僕も。初めて2人でミックスの試合に出たときは、重定さん、震えて矢がつがえられなかったけどね。でも、最近では2人とも笑ってます。ミスして追い込まれても、笑いで流すというか。

重定: 「全然大丈夫、大丈夫」って感じ。お互いにね。私は、1人じゃないっていつも思っていて。2人だから力を出せるし、どちらかが調子が悪くても、お互いをカバーし合える。だから、あんまり負ける気がしなくなりました。

――どちらかが外したときに、カバーしなくちゃって力まないですか?

上山: 逆です。外してくれたから、自分らしくいこうって思える。まあ、でも僕が外して重定さんが当てるっていうパターンが多いんですけど。

重定: 私、一番最後に撃つから、あんまりプレッシャーがないんですよ。で、いいところを持っていく。

上山: 撃つ順番もよくて。

――順番はどうやって決めたんですか?

重定: 私は「後がいい」って。

上山: 僕は「先がいい」と。僕、逆やったら多分プレッシャー感じるんですよね。立ち位置(編集注:ミックス戦では、同じチームの男女が射線上に同時に並び、1本ずつ交互に撃つ)も僕は「前がいい」。

重定: 私は「後ろがいい」。一時期、前後を変えたことがあったんです。

上山: 末武コーチが強制的に変えたんです。けど、うまくいかなくて、すぐ戻した(笑)

――ウエシゲペアは、とにかく明るい! どんな競技でも、チームワークが勝敗を大きく左右することを考えると、快進撃も納得です。ますますパリが楽しみになりました。

text by TEAM A
photo by Hiroaki Yoda