船舶業界や航空業界などで無線の通信操作を実施する業務に従事するのが通信士です。無線通信士の資格にはいくつかの種類とランクがあります。無線を扱う通信士として活躍したいと考えている場合、通信士になる方法と必要な資格について知りたい人も多いでしょう。
この記事では通信士の資格や仕事内容などについて詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
通信士とは
現代では、無線通信の技術は私たちの生活になくてはならない存在となりました。陸上はもちろん、航空や海上において欠かすことができない通信手段です。そんな無線通信技術の運用を支えているのが、国家資格を保有している無線通信士です。無線通信士は、無線を使用した機器の操作や保全などの業務全般に携わる職業です。
ここでは、通信士の仕事内容と種類、活躍する職場などについて紹介します。無線通信士関連の資格取得を目指している人や、通信士について詳しく知りたいと考えている人は、ぜひ参考にしてください。
通信士の仕事内容
通信士の仕事は、無線を使った業務全般です。無線局で無線電話の通信操作をするのが主な仕事です。
無線通信士になるには、総務省が管轄している無線通信に関する国家資格の取得が必要です。無線通信士の資格取得には、無線工学だけでなく、機械工学や電気工学に関する専門的な知識が求められます。
今や無線はあらゆるシーンで使用されている技術のため、無線通信士は陸上だけでなく、航空業界や船舶業界などでも広く活躍できる職種です。無線工学について学んだ経験がある人や、無線通信を使った仕事に興味がある人は、ぜひ無線通信士の資格取得を検討してみましょう。
一般的には、大学などで工学系の学問をおさめてから、希望する進路や業種に合わせた種類の資格取得を目指すのがおすすめです。
通信士の種類
無線通信士の資格にはいくつかの種類がありますので、従事する職務内容など、必要に応じて取得する必要があります。それぞれの資格の特徴などを簡単に見ていきましょう。
まず、もっとも難関とされる資格の総合無線通信士は、海上、航空、陸上の無線局で無線設備の操作ができる総合的な資格です。種別は第一級、第二級、第三級があります。
次に、海上無線通信士資格は、海上関係の無線局の無線設備で操作を行える資格です。種別は第一級から第四級までの海上無線通信士資格、第一級から第三級までの海上特殊無線技士、レーダー級海上特殊無線技士です。
また、航空無線局の無線設備の操作を行う資格には、航空無線通信士と航空特殊無線技士があり、ランクはそれぞれひとつのみです。
最後に、陸上無線局の無線設備の技術的な操作を行う資格には、第一級陸上無線技術士と第二級陸上無線技術士の種別があります。
資格 | 内容 | 種別 |
---|---|---|
総合無線通信士 | 海上、航空、陸上の無線局で無線設備の操作を行える総合的な資格 | 第一級 第二級 第三級 |
海上無線通信士 | 海上関係の無線局の無線設備で操作を行える資格 | 第一級から第四級までの海上無線通信士 第一級から第三級までの海上特殊無線技士 レーダー級海上特殊無線技 |
航空無線通信士 航空特殊無線技士 |
航空無線局の無線局の無線設備で操作を行える資格 | - |
陸上無線技術士 | 陸上無線局の無線局の無線設備で操作を行える資格 | 第一級 第二級 |
通信士が活躍する場所
無線通信は、陸上だけではなく航空、海上などの幅広い分野で使用されている技術です。そのため、無線通信士はさまざまな業界での活躍が可能です。
活躍できる場所としては、主に無線機の製造販売を手がけるメーカーや電気通信事業者などが挙げられます。また、無線通信は陸上だけではなく航空や海上でも多く使われます。そのため、無線通信士は航空関連業界や船舶関連企業などでも高いニーズがある仕事です。さらに、各省庁や地方公共団体に所属して無線通信関連の業務に従事するケースもあります。
無線通信士は、上位ランクの資格を取得することで活躍できる場をさらに広げられるので、終業後にも学習を継続して、段階的に上級資格の取得を目指すのがおすすめです。
通信士がおすすめの人
無線通信士は、工学系の知識が必要な職業です。そのため、工学系の大学などに進学した人におすすめの職業です。また、無線機器を日常的に操作する必要がある仕事につくことが多いため、機器操作やメンテナンスに抵抗がない人に向いているでしょう。
もちろん、異なる分野の学業をおさめた人でも、無線通信士関連のいずれかの資格を取得することで無線通信士としての就業は可能です。無線通信に興味がある場合には、まずアマチュア無線技士の資格を取得するところからスタートするのもよいでしょう。アマチュア無線技士は、アマチュア局の無線設備での無線通信ができる資格です。
通信士になる方法
無線通信士になるには、資格試験を受験して国家資格に合格することが必須です。無線通信士の試験を受験する場合、受験資格は特に定められていません。そのため、学歴や年齢を問わず、誰でも挑戦できるのです。
ただし、無線通信士の資格試験の合格には、無線工学をはじめとした幅広い分野の知識が求められます。そのため、無線通信士の資格試験を受験する人は、短大や大学、専門学校などで工学を学んだ人が中心です。一部には、すでに社会人として働いており、業務に必要なために資格取得を目指すケースもあります。
下位資格や比較的難易度が低い資格から挑戦するのであれば、独学で挑戦してみるのもよいでしょう。資格試験に合格したら、総務省総合通信局に無線従事者免許申請書を提出すると資格取得できます。
通信士の資格の種類と取得方法
将来的に無線通信に関わる仕事をしたいと考えているなら、無線通信士資格の取得を目指しましょう。無線通信関連の資格にはたくさんの種類があります。資格によって従事できる業務範囲が異なり、操作可能な機器もそれぞれ細かく制限されています。そのため、自分が目指す進路や就業したい職務内容に合わせて最適な資格を選択してください。
ここでは、無線通信士資格の種類と取得方法を紹介します。
通信士資格の種類
無線通信士の資格は、総合・海上・航空・陸上の4種類です。資格の種類によっては、それぞれランクが設定されていて、業務範囲が異なる場合もあります。受験科目にも違いがあります。
例として、総合無線通信士の種別による業務範囲と受験科目の違いをまとめました。
総合無線通信士の業務範囲と受験科目 | ||
種別 | 業務範囲 | 受験科目 |
---|---|---|
第一級 | 船舶・海上・航空・陸上全ての無線通信設備の操作が可能 | 実技・英語に加えて地理も受験科目 |
第二級 | 従事できる業務や設備の範囲が限定 | |
第三級 | 実技や英語も受験科目 |
総合無線通信士資格の場合には、第一級総合無線通信士、第二級総合無線通信士、第三級総合無線通信士があります。各資格では、従事できる業務範囲が異なります。第一級総合無線通信士では船舶・海上・航空・陸上全ての無線通信設備の操作が可能ですが、第二級・第三級では従事できる業務や設備の範囲が限定されます。
また、総合無線通信士試験では、無線工学や無線通信に関する法規関連の出題以外にも、三級から実技や英語が必須科目となっています。さらに二級と一級では地理も受験科目となり、非常に専門性が高い問いに対応する必要があるのです。
資格を取得してより専門的な無線通信業務に取り組みたいと考えている場合には、第三級の資格試験取得からスタートして、順番に上位資格の取得を目指すのが一般的です。
通信士資格の取得方法
無線通信士の資格は国家資格です。取得すれば仕事に活かせるため、興味があるなら挑戦してみるのがおすすめです。試験の種類にもよりますが、毎年1〜2回実施されます。
受験申し込みはインターネット上での手続きが可能です。受験申し込み専用のページが準備されているのでアクセスし、必要事項を入力して申し込みます。受験料は資格の区分ごとに異なり、5,000円〜20,000円程度です。
試験方法は筆記試験と実技試験があり、試験会場は全国各地に設定されていますので、行きやすい最寄りの会場にて受験が可能です。また、合格後には資格取得のための申請が必要ですので、忘れずに行いましょう。
通信士資格取得のメリット
国家資格である無線通信士は、無線通信関連の仕事を行う上で非常に役立ちます。一度取得すれば一生使える資格なので、難関ではありますがチャレンジしてみる価値は十分にあるでしょう。
通信士資格を取得することで得られるメリットは、ほかにもいくつかあります。ここでは無線通信士資格を取得するメリットを3つ紹介します。
無線通信や電波に関する知識がつく
無線通信士の資格試験は、出題される範囲が非常に広いのが特徴です。通信機器の操作だけではなく、公共電波の利用に関する技術に関する基礎から専門的な内容まで深く理解している必要があります。そのため、無線通信士の資格取得を目指して勉強すると、無線通信や電波に関する知識がつくメリットがあります。実践に役立つ知識ばかりなので、現場での仕事に活かせることも多いでしょう。
また、上位資格になる程さらに求められる知識の幅と深さが増していくために、AIやIoTなど最新技術に関しても十分な理解が可能となります。
資格を活かして就職できる
無線関連の知識と技術が必要な業種に就く場合、無線通信士資格を保有していることが応募の必須条件となっていることがあります。中には就職した後に仕事をしながら資格取得を目指す人もいますが、すでに無線通信士の資格を取得済みであれば、他の応募者よりも大きなアドバンテージを持っているのは確実です。そのため、下位資格でもOKなので、まずはいずれかの資格を取得しておくのがおすすめです。
また、無線通信関連の上位資格の保有者や、無線通信業務の実務経験がある人は、中学校や高等学校の助教諭・教諭免許の取得ができるメリットがあります。さらに、一定の要件を満たした資格保有者は、総務大臣からの登録を受けることで、無線局での点検業務を請け負う個人事業主としての開業も可能です。
関連する資格試験で受験科目の免除がある
無線通信士資格を保有していると、関連する資格試験で受験科目の免除が受けられるケースがあります。例えば、同じく国家資格である電気通信主任技術者の資格試験受験時においては、無線通信士資格と重複する内容に関して改めて受験する必要がありません。そのため、無線通信に関連するそのほかの資格の取得を目指す場合に、非常に効率よく勉強と取得が実現できるのです。
情報化が進んだ現代社会において、幅広い分野に浸透している無線技術に関する資格を保有していることは、享受できるメリットが非常に大きいということでもあるのです。
資格を取得して通信士として活躍しよう
世界中のあらゆるシーンで利用されているのが、無線通信技術です。無線通信士関連の国家資格は、種別によっては難易度が高く、上位資格になるほど合格率が低くなります。
いくつかある無線通信士関連の資格の中でも、特に総合無線通信士はもっとも広い分野での活躍が可能な資格のため、難易度が高い資格です。なんと、各級ともに合格率は10%以下という難関なのです。そのため、数年かけて合格を目指す人も多い資格ですが、見事合格すれば活躍できる仕事の幅を大きく広げることが可能です。
無線通信関連の業務に携わる人は、ぜひ積極的に無線通信士資格の取得に挑戦してみましょう。