『Octane』UKスタッフによる愛車レポート。今回は、1989年BMW 320i コンバーチブルに乗るグレン・ワディントンが、昨年旅をしたベルギーまでのロードトリップの準備と道中の模様をお届けする。
【画像】車が乗り入れ禁止になっているのではないかと思わせるほど美しい街、ベルギーの旧市街(写真4点)
愛車の整備はついつい先延ばしにしてしまいがちだが、なんとしてでも終わらせないといけない状況を作り出す、例えばロードトリップを計画するというのはおすすめだ。
フルサービスから戻ってきた私のBMWは、かねてより心配していたラジエーターではなく、ウォーターポンプを交換する必要があった。クーラントが垂れているからだ。ポンプが到着し、テンプルトン・ガレージで作業している間に、ショップオーナーのスチュアート・テンプルトンが新しいカムベルトを取り付け、タペットを締め、オイルシールが漏れていたのを直し、エンジンブロックのスチーム洗浄までしてくれた。車は完璧に回復し、フィーリングもさらに良くなった。スチュアートがまた数馬力パワーアップさせてくれたのは間違いない。直6は今、レブカウンターの上のほうでジリジリと回転数を上げていく。
車は水曜日の夜に戻ってきたので、ベルギーのブルージュまでのドライブに備えて翌日木曜日の午後に車の掃除と準備をした。私と私の親友の誕生日を祝うため、その親友の奥さんがブルージュの旧市街に大きなAirBnBを予約してくれていたのだ。私の友人たち(とその妻たち)は全員マンチェスターから飛行機でやってきたが、私は車でも同じくらいの所要時間だと考え、陸路を利用することにした。
パンデミックのせいで実現しなかったが、2020年に計画した北フランス旅行のために用意した旅行セットが掃除の最中に出てきた。恥ずかしながら、BMWを所有して12年になるが一度も国境を越えて走ったことがないことに気づいた。金曜日のユーロトンネル横断を予約し、あとは荷物を2つ積み、ヘッドランプコンバーターを取り付け、エアバッグベストと三角板を手に入れるだけだった。アマゾン・プライムがあることに感謝だ。
絶好の天気に恵まれるとの予報だったので、幌を畳み、日よけを付けて出発した。タイミングベルトを交換するだけで、車のフィーリングがこんなに変わるなんて驚きだ。このベルトからはわずかな異音もするが、直6サウンドとうまく調和して、逆に心地よく聞こえる。スロットルへの反応もより鋭く感じられ、以前よりも勢いよく回転が上がる。こうして、ノーザンプトンシャーからA14、M11、M25を経由してケント州に入り、M20を下って海岸に向かう移動は、難なくこなせた。
ビールフェスティバルとル・マンが重なったこともあり、予定より30分ほど遅れてのドーバー海峡横断となった。海峡を渡る列車に車を載せるための列に、911やM3に混じって並び、トノカバーをテーブル代わりにしてピクニックを楽しんだ。
この遅れのせいで、夕方のラッシュアワーにぶつかると思っていたのだが、意外にもそんなことはなかった。ブルージュはカレーからヤブベーケ経由で約70マイル。クラッシュバリアの向こうに使われなくなった車道があるだけで、かつてのスピードトライアル用ルートだった名残は何も残っていないが、矢印のようにまっすぐな道と平坦な地形は、なぜここであれほど高速テストが行われたのかを実感させてくれる。
ナビは私たちをブルージュの旧市街まで案内してくれた。車が乗り入れ禁止になっているのではないかと思わせるほど美しい街だったが、歩行者、自転車、バスが行き交う迷路のような通りを進んでいくと、走っているのは私たちの車だけではなかった。
それから数日間は、特に車に関して記すことはない。私たちの車はAirBnBのガレージに無事収まったからだ。月曜日の帰路は、町からヤブベーケ方面へゆっくり出て、ダンケルクでアイスクリームを食べたり、海の空気を吸ったりした後、トンネル・スー・ル・マンシュを通ったのだがル・マンの影響でかなり混乱していた。あと数分でも遅かったら、私たちはまったく駐車できず、予約時間より早く到着していたとしても、海峡を渡る順番はかなり遅くなっていただろう。
私たちは最後尾に乗り込んだのだが、改造されたBMWやAMGと相乗りになった。どの車も私たちのコンバーチブルよりはるかに高性能だったが、話題になったのは私の愛車、古い320iだった。
そうそう、私たちは往復とも飛行機より早く到着することに成功し、無事勝利を収めることができたことも書き添えておく。
文:Glen Waddington