今年は新しいNISA制度が始まったこともあり、以前よりも投資の話題を耳にする機会が増えました。これまでは銀行預金のみだった人も、「そろそろ投資にチャレンジしてみたい」と考えているのではないでしょうか。

しかし、投資経験がないと、「何から始めればいいの? 」「初心者の場合、どの商品を選べばいいのかな… 」など、わからないことだらけかもしれません。そこでこの記事では、投資を始めたい方や初心者の方に向けて、投資の基本的な知識をわかりやすく解説し、おすすめの投資方法をご紹介します。

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■投資は「貯金」や「投機」とどこが違う?

投資には「お金を増やしてくれるもの」という漠然としたイメージがありますが、詳しいことを知る機会はあまりありません。投資の基本的な知識を改めて学んでみましょう。

<投資とは>

投資とは、利益を期待して、株式や投資信託、債券などの金融資産に自分の資産を投じることです。銀行の預貯金は、元本(投じたお金)が保証されていますが、投資は基本的に元本が保証されていません。そのため、相場の下落などにより、当初投じた投資金額を下回る「元本割れ」が起きる可能性がありますし、必ずしも利益が得られるという確約もありません。

このように、投資には損失が生じる可能性がありますので、生活費や使う目的が決まっているお金で行うのではなく、当面使う予定のない「余裕資金」で行うのが大切です。

また、投資と似た言葉に「投機」があります。投機とは、短期的な相場変動から利益を得ることを目指すものです。一方、投資とは、将来的な利益を求めて、中長期的に資産を投じるものです。投機と投資はどちらも利益を狙う点では同じですので、たとえば、株式投資やFX(外国為替証拠金取引)がどちらに該当するのか、明確な線引きはできません。

あえてどちらかに当てはめるなら、デイトレードのように価格変動のみに着目し、短期で利益を得ることを目指すのが投機です。一方、資産の価値に着目し、中長期的に利益を得ることを目指すのが投資となるでしょう。

<投資の「リスク」と「リターン」>

一般的に、「リスク」というと危ないもの、避けるべきものというイメージがありますが、投資におけるリスクとは「価格の振れ幅」のことを指します。価格の振れ幅が大きいと「リスクが大きい」、振れ幅が小さいと「リスクが小さい」と言うのです。

また、投資におけるリスクとリターン(成果)は比例します。「ハイリスク・ハイリターン」という言葉があるように、大きな成果を求めようとするほど、運用中の値動きも大きくなります。 te 「ハイリスク・ハイリターン」と言われるものは、たとえば、株式投資や株式型の投資信託などが挙げられます。反対に、「ローリスク・ローリターン」と言われるものは、預貯金や円建ての債券などです。また、リスクやリターンが中程度の「ミドルリスク・ミドルリターン」の金融商品には、外貨預金や外貨建の債券などがあります。

■投資はまず何から始めればいいの?

投資について基本的なことがわかっても、実際に投資を始めるには、具体的に何をすればいいか悩むものです。投資を始めるなら、以下のような手順で準備をしましょう。

1.投資の目的を明確にする

はじめに、なぜ投資をしたいのか、目的を明確にしましょう。老後資金のようにずっと先に必要になるお金を備えるのか、それとも、結婚資金のように近い将来必要になるお金を準備するのかでは、運用(投資)期間や目標金額、適した投資方法が異なるからです。何のために投資したいのか明確になったら、そのお金が必要になる時期や金額も考えてみましょう。

たとえば、

・33歳までに住宅購入の頭金として800万円貯める
・65歳までに老後資金として2,000万円貯める

のように、「何のために(目的)、いつまでに(時期)、いくら(金額)」必要なのかをハッキリさせるのです。「何となく投資をしてみたい」という動機もOKですが、このように目的や時期、金額を決めると、自分の人生に必要なお金が把握でき、資産形成がうまくいきます。

2.目的に合った投資方法を選ぶ

投資の目的が決まったら、その目的に合った投資方法を選びましょう。投資方法を選ぶ際には、「運用期間」がどのくらいなのかを基準にすると決めやすいです。

運用期間は大まかに、「長期」「中期」「短期」に分けられ、おおよそ10年以上が長期、1年~10年未満が中期、数日~数ヶ月程度が短期として分類されます。一般的に、運用期間が長いほど価格の振れ幅が小さくなってリスクは低くなり、運用期間が短いほど振れ幅が大きくなってリスクは高くなります。

つまり、長期投資ほど損失を抑えやすくなり、反対に、短期投資は値動きで大きく損をしてしまう可能性があるのです。そこで、近い将来必要になるお金は、「定期預金」や、投資商品の中でも元本保証のある「個人向け国債」のような商品で安全に確保しましょう。

一方、運用期間が10年以上など長く取れる場合は、ある程度リスクのある商品の運用も視野に入ります。たとえば、数十年先の老後資金を備えたいなら、後ほど紹介するイデコ(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)を活用し、投資信託を運用するのもおすすめです。

3.少額でチャレンジしてみる

投資方法が決まったら、その投資についての書籍を1〜3冊読み、一通り知識を身に付けておきましょう。基本的な知識を備えたら、次は少額でさっそく投資にチャレンジするのがおすすめです。

たとえば、投資信託なら、証券会社によっては100円から投資できますし、最近では、貯めたポイントで投資ができる「ポイント投資」というものもあります。また、株式投資の中には1万円台で買える銘柄や、「ミニ株・単元未満株」といった通常よりも少ない株数で取引できる仕組みもあります。

何事もそうですが、いくら知識を身に付けても、実際にやってみなければわからないものですし、「失敗して初めて気づいた」という経験は誰にでもあるでしょう。投資にも、これと同じことが言えます。まずは、たとえ失っても気にならない程度の金額から始め、取引や操作方法に慣れてみましょう。

■初心者におすすめの投資方法4選

最後に、初心者の方におすすめの投資方法を4つご紹介します。

1.投資信託

投資信託とは、たくさんの投資家から集めたお金をプロ(ファンドマネージャー)がまとめて運用し、利益を配当金として投資家に還元する金融商品です。それぞれの投資信託は、国内外の株や債券、不動産といったさまざまな資産に投資されていて、投資される地域や資産、その割合は投資信託によって異なります。

資産運用では「長期・積立・分散投資」が王道とされ、これを意識して運用すると投資のリスクが抑えられより多くの成果が期待できると言われています。投資信託を長期間積み立てると、この3つのポイントをカバーしながら運用できます。

たとえば、投資信託は通常、1本で数十〜数百の銘柄に投資していますので、投資信託を購入するだけで、自動的に分散投資できることになります。また、運用をプロに任せられる点、100円や1,000円など少額から始められる点もメリットです。

2.イデコ(個人型確定拠出年金)

イデコとは、毎月掛金を出して自らの判断で運用し、老後資金を作る年金制度です。運用できる商品は保険や定期預金、投資信託で、将来受け取る年金額は、運用成績によって増えることも減ることもあります。

イデコは、自営業者や会社員、公務員、専業主婦(主夫)など、20歳以上65歳未満のほとんどの人が加入でき、月5,000円以上1,000円単位で掛金を決められます(上限額は加入している年金の種類や企業年金の有無によって異なる)。積み立てた資産は60歳以降に、一括または分割で受け取ります。

イデコは掛金の全額が所得控除の対象ですので、将来のお金を増やしながら、税金も安くできるメリットがあります。また、運用益は非課税となり、効率よくお金を増やせます。今のご時世、誰にとっても老後資金の準備は欠かせないものです。初めての投資として何をやればいいか悩んだら、イデコで老後資金の運用から始めてみるのもいいでしょう。

3.NISA(少額投資非課税制度)

NISAとは、NISA口座内で投資した株や投資信託から得られる利益が非課税になる制度です。通常、投資から得た利益には約20%の税金がかかりますが、NISAの場合はこの税金がかかりません。

2024年1月には、新しいNISA制度が始まり、投資できる金額や期間に大きな変更がありました。新NISAでは、これまでのつみたてNISAに当たる「つみたて投資枠」とこれまでの一般NISAに当たる「成長投資枠」が併用でき、生涯に投資できる金額も1,800万円までと大幅にアップしています。また、制度に期限がなくなり、好きな時に自分のペースで投資できるようになりました。

新NISAのつみたて投資枠では、金融庁の基準を満たした投資信託やETF(上場投資信託)が積み立てられます。いずれも手数料が安く、長期の積立投資に適した商品ばかりがラインナップされていますので、初心者の方も始めやすいでしょう。一方、成長投資枠では、つみたて投資枠では対象外となっている投資信託にも積立投資できるほか、株式投資も可能です。

NISAも100円や1,000円程度の少額から投資できますし、利益に税金がかからない分、効率よくお金が増やせますので、イデコとあわせてぜひ検討していただきたい制度の一つです。

4.個人向け国債

個人向け国債とは、国が個人に向けて発行している債券(国債)で、一定期間保有することで定期的に利子がもらえ、満期を迎えると元本が戻ってくる商品です。年12回、月に1度のペースで募集および発行されており、好きなタイミングで1万円から購入できます。

個人向け国債には、金利や満期の異なる、「期間10年・変動金利型(変動・10年)」「期間5年・固定金利型(固定・5年)」「期間3年・固定金利型(固定・3年)」の3つのタイプがあり、自分の資金計画に合わせて好きなタイプが選べます。

個人向け国債は投資商品ですが、元本が保証されていますので、投資した元金以下になる心配がありません。また、満期は設定されていても、1年経つと中途換金が可能です(中途換金の場合、直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれる)。

個人向け国債の金利は発行時期によって異なり、最低金利は年率0.05%が保証されていますが、他の投資商品と比べると、期待できる利益は大きくありません。ただし、投資商品でありながら元本が保証されている点や、1万円から購入可能な点、3つのタイプから選べる手軽さは初心者向きですので、安心して投資を始めたい方にはおすすめの方法です。

■初心者向けの方法から投資を始めてみよう

投資を始めたくても、「リスクが怖い」「どの商品を選べばいいかわからない」など、一歩踏み出せない理由は色々とあるでしょう。そういう方は、今回の記事を参考に、初心者におすすめの方法から始めてみてください。

少額でも、若いうちから投資を始めておけば、「本格的に投資がしたい」と思った時に非常に役立ちます。今年は新NISAも始まりましたので、ぜひ投資にチャレンジする1年にしてみてはいかがでしょうか。