車いすバスケットボール女子の国際親善大会「2024国際親善女子車いすバスケットボール大阪大会」(大阪カップ)が2月16日から18日にかけて行われた。
会場となったAsueアリーナ大阪は、パリ2024パラリンピックの世界最終予選(4月)の舞台にもなる。
客席には、大阪府内の小中学生、AKATSUKI JAPANの選手、車いすバスケットボールファン……さまざまな人たちが駆けつけ、世界最終予選に出場する日本代表選手らに熱い声援を送った。
3日間でのべ8063人が試合の行方を見守った強化が実を結ぶとき
昨年2大会ぶりに世界選手権に出場、1月にタイで開催された2024アジアオセアニアチャンピオンシップス(AOC)ではパリ切符を獲得した中国相手に善戦。車いすバスケットボール女子日本代表はいまパリの出場圏内にいる。
男子日本代表としてパラリンピックに出場した選手出身の岩野HC2021年からチームを率いる岩野博ヘッドコーチ(HC)は充実感を浮かべて語る。
「チーム発足時から積み上げてきた走って速攻のスタイルが実を結んできたかな」
その日本とイギリス、タイ、オーストラリアの4チームが総当たりの予選を行った大阪カップ。
日本は初戦のオーストラリア戦を72-28の大量スコアで制して波に乗ると、すでにパリパラリンピック切符を手にしているイギリスに完敗。格下のタイにはしっかり勝ち、予選2位で決勝に駒を進めた。
準優勝の日本から萩野真世(写真)と北田が個人賞に選出された決勝は再びイギリスとの対戦。しかし、雪辱戦ならず、46-71で敗れた。それでも、それぞれのコメントからは手応えが見て取れる。
「最後まであきらめずにやろうという姿勢で挑めた」(岩野HC)
「ディフェンスで削ることができて(勝利チームのオンコートインタビューで)相手が苦しかったと言ってくれた」(柳本あまね)
「昨日はボコスカにやられたけど、今日は3発殴られているうち1発は殴り返せた感覚」(北田千尋)
日本のスターティング5を担う網本麻里、北田千尋、柳本あまね、萩野真世、財満いずみ最終予選に向けた収穫と課題
日本代表歴の長い網本麻里は、重要な立ち上がりにおいて「まず速攻アーリーをやろう、パスをつないでクロスで行こうとか、みんなが迷わずできるというのが大きい」と振り返り、連携がレベルアップしていることを示した。
3度目のパラリンピック出場を目指す網本決勝はスターティング5のプレータイムが長かったが、16点ビハインドから一時差を縮めた第3クォーターでは中学生・小島瑠莉、高校生・西村葵の若い2人がコートへ。
岩野HCは、起用理由を「追いかけている場面で経験させる」ことと「柳本と萩野のファウル・トラブルが混んできたので、最後までコートにいられるように(やむなく交代した)」ことだと明かしたが、最後まで粘り強くプレーし、若手の突き上げを図った。
シュート力も高い小島はチーム最年少で日本代表を目指すそんななかでオフェンス面では後半のスコアが伸びなかった。
「ハーフタイムで個々のシュートタッチを確認する時間を増やすとか、走って心拍を上げておくとかをしていけたらなと思います」(柳本)
「(インサイドでプレーするチーム対策として)最終予選までに、アウトサイドシュートも確率を良くしていきたいと思います」(網本)
走力の面で自信を深めた柳本パスのミスも課題のひとつ。走る網本につながらない場面もあり、「走っている人に対して前に出すパスがいいけれど、後ろになってつなげないところもあった。みんなでパスのバリエーションなどを工夫してやっていきたいです」とチームの得点源は前を向いた。
プレータイムを伸ばしている清水千浪は、オーストラリア戦でトップスコアラーにキャプテンの北田は大会前、選手たちに「ここが最終予選の会場なんだから最高のタイミングで最高のリハーサルをさせていただけることに感謝して1分1秒を無駄にしないようにしよう」と話したという。
そんな全4試合を戦い終え、多くの収穫を手にした日本代表は2ヵ月後の最終予選、そしてパリ本番に向けて準備を続けるのみだ。
コート外でも強いリーダーシップを発揮しているというキャプテンの北田4月の世界最終予選では、8チーム中4位以内に入れば、パリ切符を獲得できる。
「車いすバスケ界の今後を左右するような大会になると思います」と北田は力を込める。
パリパラリンピック出場権獲得を目指す女子日本代表「『パラリンピックに出場するか、しないか』で、フィーチャーのされ方も、たぶんお金の感じとかも変わってくると思うんです。(ロンドン大会とリオ大会の出場権を逃した)女子がパラリンピックに出られなかった時期は男子が出場してつないでくれたので、今度は女子がつなげたいと思っています。何より男子が東京大会で銀メダルを獲ってくれて車いすバスケットボールのブームが来たと思うんです。そのファンの皆さんを、女子がパラリンピックに出ることでつなぎとめて、私たちの次の世代につなげていきたい。この盛り上がりを今、途絶えさせるわけにはいかないんです」
最後は気持ちの強いものが勝つ。2ヵ月後、同会場で日本の歓喜が見られることを期待したい。
3位のタイ、4位のオーストラリアも最終予選に出場するtext by Asuka Senaga
photo by X-1