藤井聡太棋王に伊藤匠七段が挑戦する第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負(共同通信社と観戦記掲載の21新聞社、日本将棋連盟主催)は、第2局が2月24日(土)に石川県金沢市の「北國新聞会館」で行われました。対局の結果、角換わり腰掛け銀の研究勝負から抜け出した藤井棋王が94手で勝利。貴重な後手番勝利で防衛に向け前進しました。
復興への足掛かり
持将棋引き分けとなった開幕戦から3週間後の本局は例年通り金沢市での開催。対局には能登半島地震で倒壊した住宅から発見された駒が使用されました(塩井一仁さん所蔵)。先手の伊藤七段が角換わりを志向すると盤上は両者の息が合い腰掛け銀の定跡形に進みます。
後手の藤井棋王が6筋の位を取って持久戦を求めたところ、伊藤七段は銀交換から局面を打開。2年前に指された実戦例をベースにともにスラスラと指し手が進みます。駒交換が一段落した局面は、自陣三段目に誘い出された藤井玉に対して有効な攻めがあるかが焦点です。
勝敗分けた悲観
じっと歩を打って守りを固めた藤井棋王に対して伊藤七段は自玉の堅さを頼りに猛攻を開始。銀を犠牲に王手飛車取りをかけたのは好調のようでも、局後の伊藤七段はこの直前に誤算があって攻めすぎることになったと振り返ります。とはいえ形勢は互角のまま終盤戦へ。
藤井棋王が2枚の自陣角を打って守りを固めた局面が本局の分岐点となりました。竜を引いて当たりを避けた伊藤七段ですが感想戦でこの手を後悔することに。代えては金捨ての手筋から後手玉を見える形にしておけば先手にもチャンスの残る形と結論付けられました。
藤井棋王が1勝目
自玉の安全を確保した藤井棋王はここから鋭い反撃でリードを拡げます。先手の竜を捕獲してから中央に角を飛び出したのが決め手で、この自陣角が世に出ては先手に適当な受けはありません。終局時刻は18時28分、最後は自玉の受けなしを認めた伊藤七段が投了。
これで五番勝負は藤井棋王の1勝0敗1分に。一局を振り返ると、仕掛けから先手の攻めを耐え続けた藤井棋王が好機の反撃でかわし切った格好です。敗れた伊藤七段は「今日は内容がよくなかったので気持ちを切り替えて臨みたい」と前を向きました。
水留啓(将棋情報局)