北陸新幹線金沢~敦賀間の開業(2024年3月16日)まで1カ月を切った。東京駅からの新幹線が福井県へ進出を果たす一方、京阪神エリアから福井・金沢方面の運行体系は大きく変わる。特急「サンダーバード」は敦賀駅止まりとなり、同駅で北陸新幹線「つるぎ」へ乗換えが必要になる。

  • 敦賀駅発着で湖西線を経由する新快速。途中の近江今津駅から12両編成で運転される

同じく京阪神エリアから敦賀駅へ乗り入れる列車として、湖西線経由の新快速も運転されている。特急「サンダーバード」は大阪駅発着だが、新快速は姫路方面から直通し、特急料金等も不要。神戸市に住む筆者にとって、敦賀駅発着の新快速も利用価値がありそうに思える。はたして新快速は「サンダーバード」の代替となりうる存在だろうか。

現在、平日ダイヤにおいて敦賀駅発着の新快速は昼間時間帯(9~17時台)に湖西線経由で運転される。早朝と夕方に北陸本線経由の新快速もあるが、高規格で営業キロも短い湖西線経由は引き続き京阪神エリアへの主要ルートになるだろう。実際、敦賀駅から京都駅までの所要時間を比較すると、湖西線経由の新快速は約1時間35分だが、北陸本線経由の新快速は2時間弱も要する。

近江今津駅まで4両編成、新快速の本領発揮は近江舞子駅から

先月、敦賀駅で行われた報道公開を取材した後、帰りに敦賀発姫路行の新快速を利用した。新快速は敦賀駅の5番線から発車する。

北陸新幹線金沢~敦賀間の開業後、特急「サンダーバード」「しらさぎ」は新幹線駅舎の1階に新設された在来線特急ホームから発着する予定だが、新快速は引き続き従来の在来線ホームを発着するという。敦賀駅での新幹線ホームから在来線特急ホームへの乗継ぎ標準時分は8分とされているが、新快速が停車する在来線ホームへは連絡通路を通る必要があり、さらに時間を要することになる。

連絡通路はエレベーターとエスカレーター(上り・下り)に加え、動く歩道も整備されているが、それでもスーツケースなど大きな荷物を持っての移動はかなり面倒に感じることだろう。敦賀駅の在来線ホームは乗降ドアとの段差も大きいため、北陸新幹線からの乗継ぎに関して、特急列車と新快速の間に大きな差が生まれるのではないかと予想する。

  • 敦賀駅の新幹線ホーム(2月1日の報道試乗会にて撮影)

  • 敦賀駅の在来線特急ホーム(2月1日の報道試乗会にて撮影)

  • 従来の在来線ホームにつながる連絡通路。動く歩道も整備される(2月1日の報道試乗会にて撮影)

筆者が乗車した新快速は13時23分に発車し、敦賀駅を後にした。次の新疋田駅まで、北陸本線の上り線はループ線となっており、ぐるりと1周しながら徐々に標高を上げる。車内の様子を確認すると、平日の昼間ということもあって空いている。当然のことながら、「青春18きっぷ」利用者のような旅人も見かけない。

敦賀駅発着の新快速は、途中の近江今津駅まで身軽な4両編成であり、しかも近江舞子駅まで途中の各駅に停車する。京阪神エリアを12両編成で疾走する新快速のイメージとは大きくかけ離れており、ローカル線の普通列車と大して変わらない。13時39分、北陸本線との分岐駅である近江塩津駅に到着。昼間時間帯、北陸本線経由の新快速は近江塩津駅発着で運転され、敦賀駅発着の新快速から約30分差で連絡している。

近江塩津駅を発車した新快速は湖西線へ。永原駅、マキノ駅、近江中庄駅と各駅に停車し、14時0分、近江今津駅に到着した。ここで10分間停車し、先頭車側(京都方)に8両編成をつなげ、見慣れた12両編成の姿になる。同駅停車中、後続の上り「サンダーバード22号」にも抜かれた。

近江今津駅を発車してもなお、新快速は途中の各駅に停車する。敦賀駅を発車して1時間以上が過ぎ、14時28分、近江舞子駅に到着。ここからようやく途中駅を通過するようになり、新快速としての本領を発揮する。その後は堅田駅、比叡山坂本駅、大津京駅、山科駅の順に停車。どの駅でも京都・大阪方面の利用者がまとまって乗り込んできた。

  • 湖西線を走る新快速と特急「サンダーバード」

車内の座席が埋まり、扉付近に立つ利用者も増えたところで、14時58分、京都駅に到着。周囲を見回したが、さすがに敦賀駅から乗り通したのは筆者だけのようだった。敦賀駅を発車してから、すでに1時間35分が過ぎていた。「サンダーバード」だと約50分の道のりである。

京都駅から先も新快速に乗り続け、大阪駅到着は15時28分。敦賀駅を発車してから2時間以上が過ぎていた。正直なところ、敦賀駅から乗車すると、京都駅から大阪駅までの乗車時間が普段よりも長く感じられた。転換クロスシートとはいえ、「サンダーバード」のリクライニングシートと比較すると、疲労感は比べ物にならなかった。

新快速が「サンダーバード」の代替列車になるとは考えにくい

北陸新幹線金沢~敦賀間の開業で特急「サンダーバード」の運転区間が短縮されることに対し、さまざまな意見を見かける。ただ、大阪~敦賀間の距離感について、関西の人でもピンと来ないのではないかと感じることがある。

湖西線経由で大阪~敦賀間を走行した場合、営業キロは136.9kmである。東海道新幹線で比較した場合、東京~三島間の営業キロ120.7kmに近い。朝ラッシュ時に三島発東京行、夕ラッシュ時から夜間にかけて東京発三島行の「こだま」が設定され、所要時間は約50分。この区間を新幹線で通勤する人も多いと聞く。一方、在来線の東海道本線東京~三島間を直通する平日日中時間帯の定期特急列車は、1日あたり上下各2本しかない。

もちろん東京~三島間と大阪~敦賀間の環境は大きく異なるが、やはり営業キロ120kmを超えると、追加料金を払ってでも速達性・快適性の高い列車を求めたくなるだろう。このように考えると、大阪~敦賀間で新快速が「サンダーバード」の代替列車になることは考えにくい。

  • 現在、湖西線経由の新快速は京都~敦賀間を1時間半以上かけて走る

京都~敦賀間なら新快速の利用価値があるかもしれないが、現行の新快速は同区間を約95分で走る。一方、特急「サンダーバード」は約50分で走り、所要時間に45分の差がある。京都~敦賀間で1時間を切る「サンダーバード」と、1時間半以上かかる新快速の差は大きい。敦賀駅で北陸新幹線から乗り継ぐ際の利便性も考慮すると、京都~敦賀間でも新快速は「サンダーバード」の代替列車になりにくいだろうと思われる。