フランスのアイデンティティを象徴するフリジア帽。パリ2024大会では、フリジア帽のマスコット「フリージュ」が大会を盛り上げる。
そんなフリージュがパラリンピック競技会場で記念撮影!? パリ2024パラリンピック約1年前となる2023年9月に、パリをめぐったアフロスポーツ所属・松尾憲二郎さんの撮影エピソードとともに紹介する。
競技会場は王道の観光コース
パリ大会は、既存のスポーツ施設のほか、観光名所に大会期間中限定で競技会場が設けられる。これは、サステナビリティ(持続可能)や環境に配慮した取り組みの一環。歴史とスポーツの融合もテーマのひとつになっていて、観客にとっては観光と競技が一度に楽しめるのもうれしい。
開催約1年前のパリはラグビーワールドカップ一色。フリージュはオフィシャルショップでしか購入できなかったそうフリージュとの旅は、世界体操(ベルギー)、ラグビーワールドカップ(フランス)、ベルリンマラソン(ドイツ)の合間をぬって行いました。
まず、オフィシャルショップで手のひらサイズのフリージュのぬいぐるみを購入するところからスタート。小さいサイズは、トートバックにも入るし、小回りが利きます。天候も良く、撮影日和となりました。
それでは、さっそく散策開始!
フリージュがやって来たのは、パリのシンボルであるエッフェル塔。ここで行われる競技は、ブラインドフットボールだ。
エッフェル塔の眼下に広がる広場が競技会場。エッフェル塔をバックに競技が見られるとは、なんとも贅沢だパリ大会の象徴となるエッフェル塔をからめたカットは、とくに気合いを入れて撮影しました。塔全体が映るようにするために、角度を調整するのが難しかったです。悪戦苦闘していたら、ちょうどいい場所に木があって、そこにフリージュを置くことにしました。あの木があって助かりました(笑)。
セーヌ川の水面に映ったエッフェル塔が、ロマンチックな雰囲気を演出写真の整理をしていたら、いつのまにかライトアップされていたので、セーヌ川の対岸からの眺めも写真に収めました。
エッフェル塔があるシャン・ド・マルス公園には、車いすラグビーと柔道が行われるシャン・ド・マルス・アリーナもある。
シャン・ド・マルス・アリーナは、トンネルのような形が特徴的アンヴァリッドはアーチェリーの競技会場。1687年に軍事病院および退役軍人の養護施設として建てられた場所で、ナポレオン・ボナパルトが眠っていることでも知られている。
アンヴァリッドといえば黄金のドーム。この部分は礼拝堂になっていて、地下にナポレオンの棺が安置されているアンヴァリッドはお気に入りの場所のひとつです。撮影時は、写真でもわかるとおり、建物の半分が覆われていて、工事中でした。アンヴァリッドに限らず、どの競技会場も工事をしている場所が多く、立ち入ることのできる範囲が限られていました。そのためアングル探しが難しかったです。
アンヴァリッドとグラン・パレを接続するのが、セーヌ川にかかるアレクサンドル3世橋だ。ここは、トライアスロンの発着地となる。長さ107m、幅45mで、1990年に開催されたパリ万国博覧会のために造られた。金色に光る豪華な像が目を引く。
華やかな装飾がパリ散策に花を添える。街灯に明かりがついた夜に訪れるのもよさそうだ「ここで本当に泳ぐの?」と思いながら撮影しました。
アレクサンドル3世橋を渡ると、車いすフェンシングとテコンドーが行われるグラン・パレが見えてくる。ガラス屋根が有名で、常設の「グラン・パレ・ナショナル・ギャラリー」のほか、展示会、スポーツ大会、ファッションショーなどの会場として親しまれている。
アレクサンドル3世橋と同じく、1900年パリ万国博覧会のために建てられたグラン・パレ。当時の最先端建築技術を駆使したパラリンピックの幕開けを祝う開会式では、シャンゼリゼ通りとコンコルド広場を選手が行進する。
街の中心部にあるコンコルド広場で、どんなパフォーマンスが行われるのかパリ12区に位置するベルシー・アリーナは、今から40年前、1984年にオープンした。車いすバスケットボールが行われるこの場所では、普段はスポーツイベントから著名な歌手のコンサートまで、さまざまな催しが行われている。
ピラミッドを思わせるベルシー・アリーナ。近くにある広大なヴァンセンヌの森でひと休みするのもいいかも水泳の会場は、パリ・ラ・デファンス・アリーナ。パリの中心部から少し離れたナンテール市に位置する。
鱗のようなパリ・ラ・デファンス・アリーナの外観。アルミニウムとガラスのパネル600個からなる近くに地元の人でにぎわうステーキ屋さんがありました。リーズナブルで美味しかったので、今年の夏にまた行きたいですね。
複数の展示ホールで構成される「パリ・エクスポ・ポルト・ド・ヴェルサイユ」。エクスポの一部であるパリ南アリーナでは、ボッチャ、卓球、ゴールボールが行われる。
「パリ・エクスポ・ポルト・ド・ヴェルサイユは、日本でいうところの幕張メッセのような場所です」(松尾さん)敷地も広いし、人も多かったので、撮影はけっこう大変で……“ラスボス”感満載でした!
パリ南アリーナからトラムで20分ほどのところで見つけたのが「ピエール・ド・クーベルタン通り(Av. Pierre de Coubertin)」。そう、クーベルタンとは近代オリンピックを提唱した「近代オリンピックの父」。オリンピック好きには知られた存在ですよね。現地に行かれる方は、ぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょう。
2体のフリージュが仲良く一緒に
オリンピックとパラリンピックのフリージュは、大会関連のイベントに登場する際、2体ペアで活動していることが多い。
オステルリッツ橋でパチリ。オリンピックの開会式はセーヌ川が会場となるオリンピック・パラリンピックといえば、以前は全く別の大会という感じでした。でも東京2020大会の開催が決まってからは国内だけでなく、世界的にもオリンピックとパラリンピックが「セット」になってきた印象です。なので、基本的には2体ペアで撮影することを意識しました。
史上初めて両大会でマスコットが同じになるなど、まずは、パリ大会が近づいてきたと話題にしてもらうことが大事ですよね。そうすれば、大会を知るきっかけをつかんでもらえるからです。
とくに、パラリンピックは知ってもらうことが大切だと僕は思います。興味を持ってもらって初めて、競技について知ったり、選手のエピソードに共感したり、勇気づけられたりと、つながっていきますよね。
パリのバリアフリーは?
パリは歴史が息づく街だ。それは誇るべき財産だが、義足で歩くパラリンピックのフリージュにとっては難点もあったようだ。
正直なところ、パリの街にはパラリンピックをまったく感じられませんでした。理由は、アクセシビリティ対応が不十分だと感じたからです。エレベーターのある駅もありますが、障がいのある人が公共交通機関を自由に使えるかというと疑問が残ります。それに、パリは石畳の歩道も多いですから歩くのも大変そうです。
そういった様子を見ると、日本のアクセシビリティは良い点が多いことがわかってきます。これは、東京パラリンピックが残したレガシーのひとつではないでしょうか。
パリの必需品は!?
今回、松尾さんが3日間で記録したパリ散策の歩数は、なんと約10万歩! マラソンやトライアスロンの撮影ではたくさん歩くそうだが、多いときで1日2万歩ぐらいだとか。「10万歩は誇れる数字です(笑)。パリの地下鉄は、上ったり下ったりが多いので、それも歩数がかさんだ要因ですね」と松尾さんは振り返る。
パリ散策は体力が必須。僕はこの夏、オリンピックの撮影を担当することが決まっています。「体力」と「筋肉」をつけてパリ大会に臨みます!
松尾 憲二郎(フォトグラファー)1985年、東京都生まれ。元エクストリームスキーヤー。2014年より「アフロスポーツ」所属。2016年のリオパラリンピックでパラリンピックを初めて撮影した。好きなパラアスリートは、ドイツが誇るロングジャンパーのマルクス・レーム。
text by TEAM A
photo by AFLO SPORT