パーソル総合研究所は2月20日、「仕事と私生活の境界マネジメントに関する定量調査」の結果を発表した。調査は2023年9月20日〜10月2日、正社員として働く20代〜50代の男女を対象に行われた。
まず、仕事と私生活の切り分ける「境界コントロール」のメリットを分析したところ、境界コントロール実感が高いと、継続就業意向や自発的貢献意欲、人生満足度やはたらく幸せ実感が高くなる傾向が見られる事が分かった。また、バーンアウト(燃え尽き)傾向が低くなる結果となっている。
時間不足でも境界コントロール実感が高ければ人生満足度が高いという結果も出ており、時間不足感の解消よりも、境界コントロール実感を高めることが人生満足度とプラスに関連する事も分かった。
境界コントロール実感と人生満足度との関連性を属性別で見てみると、特に20代男性や中学生以下の子どもがいる育児期男性では、境界コントロール実感が人生満足度と強く関連している結果となっていた。
仕事と私生活をうまく切り分けるための方策で6要素(切断、感情制御、計画、縮小、調整、優先)からなる「境界マネジメント」の実践度を見たところ、30代〜40代女性や50代男性では高く、20代〜40代男性では低い傾向が見られた。また、既婚女性では高く、シングル男性や育児期男性で低くなっている。
境界マネジメントの実践状況としては、タスクにかける時間を事前に計画するなどの「計画」や、自分の感情のコントロールを心がける「感情制御」、予定していた退勤時間に仕事を切り上げる「切断」の実践度が高かった。一方で、希望する働き方を職場で伝える「調整」の実践度は低い。
また、個人が境界マネジメントを実践することにくわえ、上司が柔軟な働き方を許容する事や部下の仕事を理解している事、長時間労働是正、残業時間が短い事が境界コントロール実感にプラスに影響している事も分かった。
中学生以下の子どもがいる育児期女性においては、約6割が毎日時間に追われている状態であるものの、時間不足を感じながらも境界コントロール実感が高い人とそうでない人が見られた。時間不足感の解消よりも境界コントロール実感を高めることが人生満足度とプラスに関連している事が伺える。
さらに、「長時間労働是正」や上司による「アウトプットでの評価」が、特に育児期女性の境界マネジメント実践に影響を与える事も分かった。正社員全体と比べると、アウトプットでの評価が強く影響している傾向が見られた。
残業時間が長いテレワーカー(週3回以上のテレワークをしている人)においては、境界コントロール実感が低い結果となっている。残業時間が短い場合の境界コントロール実感は正社員全体の平均より高いが、残業時間が長い場合には大きく下がっている。
また、境界マネジメントの実践度別に見ると、残業時間が長くて境界マネジメントの実践度が低いテレワーカーは、境界コントロール実感が低くなっている。