働くパパやママにとって、「仕事と育児の両立」は永遠のテーマ。特に、最近では男性の育休が認知されつつありますが、実際に取得に至る男性はまだ多くはありません。そんな中、第一三共ヘルスケアで働く有村祐次郎さんは、これまでに3度の育休取得を経験され、仕事と育児の両立に奔走されています。
今回は、そんな有村さんにインタビューを行い、育休取得時の状況や、仕事と育児を両立させるコツ、これからのキャリアについて詳しくお話をうかがいました。
■育児は男女関係なくどちらも「初心者」と気づいた
━━有村さんはこれまでに3度育休を取得されましたが、それぞれの育休の取得期間や取得された時の状況を教えてください。
現在、0歳、2歳、4歳の3人の子どもがいます。いずれの子も里帰り出産ではなく、産後は自宅で世話をしました。夫婦ともに、しっかりとキャリアを積んでいきたいという思いがあり、妻とは以前から「子育ては2人で協力して対等にやっていこう」と話していました。そこで、「スタートが大事」ということで、第1子出生時から育休を取得しました。
育休の期間は、それぞれ出生時から、
第1子: 育休約6週間+有休約2週間、計約2ヶ月
第2子: 育休約6週間+有休約2週間、計約2ヶ月
第3子: 育休約3ヶ月+有休約1ヶ月、計約4ヶ月
です。取得期間については、妻と話し合ったうえで、上長とも話して最終的に決定しました。3人目の時は、育休を2度経験して何となく産後の状況も理解していましたし、もう少し長く子どもと一緒にいたいという思いや、上にも小さい子が2人いて大変になるという予想がありました。そこで、長めに育休を取りたいと上長に相談したところ、快く了承してくださりました。
━━育休を取得される前と後で、環境の変化、子育てに対するお考えに変化はありましたか?
第1子の育休取得時は、研究センターで固形製剤の研究開発業務に従事しており、現在の所属である品質技術グループでは、第2子・第3子の育休を取得しました。
品質技術グループでは、研究センターで培った知見を生かしながら、主に上市(製品が市販されること)後の製品の品質メンテナンスに関わる業務を行っています。
育休取得前は、何となくしか子育てを理解していませんでしたが、育休や子育てを通して、より解像度高く子どもとの生活を理解するようになりました。自分自身、子どもが生まれるというライフステージの変化によって、「周りの方々も色々なバックグラウンドや価値観の中で働いてるんだ」ということに考えが及ぶようになりましたね。
また、育児に関しては、「女性の方が男性よりも子育てが得意」というイメージを抱きがちですが、実際2人で赤ちゃんに向き合ってみると、どちらも初心者で「男女は関係ないんだ」と気づき、初心者同士で協力し合いながら子育てするのが大事だと実感しました。
■子育ては「壁」だらけ。両立のコツは"情報共有"と"優先順位づけ"
━━現在のような働き方を確立されるまでに壁にぶつかったことはありますか? また、その壁をどのように乗り越えたか、子育てと仕事の両立のコツがあれば教えてください。
まさに壁だらけだったと思います。まず、「どこの保育園にいつから預けられるか」という保育園探しも大変でしたし、今も保育園の送り迎えや準備などはとても大変です。
あと、子どもは一筋縄ではいかず、5分で終わると思ったことに1時間かかったりしますね(笑)。その分色々な視点は得られますが、日々悪戦苦闘しながら刻一刻と変わる状況の中で育児をしているという感覚です。
子育てと仕事の両立で意識しているのは、たとえば、1〜2週間前から、妻と仕事のスケジュールや「ここは抜けられない」という日を共有するようにしています。子どもはいつ風邪をひくかわかりませんので、「もしこの日に風邪をひいたらどちらが休む、どちらがお迎えに行く」など、そういう点は事前に話し合っています。
職場でも、子どものことで突発的に対応しなければならない状況を踏まえ、事前にチーム内で情報共有していますし、必要な情報やデータに関しては、自分のためにも常に整理して共有ファイルの中に入れるようにしています。
また、何事も優先順位をつけるようにしています。仕事だけでなく、仕事と家庭の両立や、自分自身においても「何が大事か」というのは考えるようにしています。
━━育休について、会社の他のメンバーの方はどのように理解してくださっていますか? 育休に対する企業風土や福利厚生制度についても教えてください。
少なくとも私の周りでは、本当に皆さん前向きに背中を押してくださりました。はじめに上長に育休の話をした時も、快く了承してくださり、育休中やその前後も、「どのようにしていこうか」と相談に乗ってくださりました。
同僚の皆さんも、快く休職中の仕事に対応してくださって、帰ってきた時も優しい言葉をかけてくれて、非常に恵まれている環境だなと思っています。
上層部の方たちの理解も、すごくありますね。昔は育休自体あまり取得することがなかったようですが、今は時代が変わったということで、「若い人は子どもが生まれたら、育休をぜひ活用して」とウエルカムな雰囲気でいてくださります。
また、社内制度としても、育児に関するeラーニングのほか、育児短時間勤務や看護休暇なども整備されていて、看護休暇は15分単位で取れます。それに、フレックスタイム制や裁量労働が根付いていますし、職種によってはテレワークもできますので、それぞれ融通を利かせて働ける環境にあります。
元々、育休だけでなくさまざまな面に理解のある、非常にいい風土の会社だと思っています。
■育児の学びは仕事にも活かされ、働き方やマインドに変化があらわれた
━━ご自身の今後のキャリアについては、どのようにお考えでしょうか。また、現在のお仕事のやりがいや、業務の中で特に意識している点はありますか。
子どもが生まれる前後でそこまで変化はありませんが、子どもと接し、日々成長している姿や色々なことにチャレンジしている姿を見ていると、自分自身もさまざまな業務を通して幅広い経験や多角的な視野を得ていきたいと感じます。今後も、新しい環境や挑戦の機会があれば、ぜひ積極的にチャレンジしていきたいですね。
現在所属しているグループは、発売後の製品のメンテナンス、たとえば、原料や製造所で課題が発生したり、変更が必要になったりした時に、技術的な面で課題を解決する部門です。社内のハブとなって色々な部門を取りまとめながら、お客様に安心して製品を届けられるよう対応しています。
業務の中で色々な方とご一緒しますので、柔軟性や適応力が非常に大事だと思っていますが、そこは一筋縄ではいかない子育て経験が生かされていると思います。
また、以前は時間を気にせず仕事に打ち込み、正直退社する時間もあまり気にしていませんでした。しかし、子どもが生まれてからは、保育園からの帰宅後の時間が最も大変な時間帯ですので、その時間には在宅できるよう時間や効率性、生産性をとても意識するようになりました。
生産性を上げるために工夫していることは3つあり、1つめ目は先ほどもあった、「優先順位を決める」ということ。2つ目は、「早め早めの対応」です。先のスケジュールを見ながら、「もしかすると明日やあさっては時間が使えないかもしれない」という前提で、早めに対応しています。3つ目は、これも先ほどの「情報の整理・共有」です。そのうえで、自分一人ではどうしようもない時は、周りの協力を得ながら乗り切っています。
━━もし、今後入社される方や若い方に育休について相談されたら、どのようにアドバイスしますか?
それぞれ個人やご家庭ごとに、考えや価値観、親のサポート事情などは違いますので、育休を取得するかどうかは、本人やご家族が納得する形で決めたほうがいいと思います。
もちろん当社には、育休を取りたい人には取れる風土がありますので、そこは問題ないですし、逆に、家庭で話し合った結果、「育休は取らず仕事を頑張る」というのもいいと思います。どちらも無理なく自由に選択できる、と伝えたいです。
ただ、子どもはすぐ大きくなってしまいます。育休中は子どもとずっと向き合うことができ、それは人生の中でも貴重な機会でしたので、私個人としては育休を取ってよかったです。