アストンマーティンが新型「ヴァンテージ」を日本でお披露目した。今回は大規模なマイナーチェンジでありながら、馬力(最高出力)は驚異の155PSアップを果たしている。どうやってパワーアップを実現したのか。新型ヴァンテージの何がスゴイのか。実車を確認してきた。

  • アストンマーティンの新型「ヴァンテージ」

    アストンマーティンジャパンが2月12日に日本でお披露目した新型「ヴァンテージ」(本稿の写真は撮影:原アキラ)

「真のドライバー」のために作りました

新型ヴァンテージはワールドプレミアからたったの1日後に日本に登場。改良型は前モデルに比べ、155PSもの出力アップを果たしていた。しかも、現代のクルマでは当たり前ともいえる「電気のパワー」(ハイブリッドシステムなど)を使わずにだ。どんなクルマに仕上がっているのだろうか。

発表会に登壇したアストンマーティンジャパン プレジデントのグレゴリー・アダムス氏は、「皆様の前にあるクルマは、限界の限界まで走りを楽しみたい『真のドライバー』のために設計したスポーツカーです」と挨拶。「数時間前、英国のシルバーストーンで、F1カーのAMR24とGT3レーシングカーとともに発表したばかりです」とし、日本市場の重要性を強調した。

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    アストンマーティンジャパン プレジデントのグレゴリー・アダムス氏

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    車名の「ヴァンテージ」は、今から74年前の1950年に登場した「DB2」のパワーアップレーシングバージョン「DBR2」から使用が始まった象徴的な名称だ。1964年には「ボンドカー」にも選ばれた「DB5」の高性能バージョンにヴァンテージのバッジが取り付けられ、1970年代初めには単独モデル名として登場した

最高出力665PSを発揮!

ユニオンジャックのカバーの下から現れた改良型ヴァンテージは、同社のアイコニックカラーである「スターリンググリーン」ではなく、新鮮で珍しいレッドに塗られていた。アストンの伝統に則ったロングノーズ・ショートデッキの迫力あるボディはコンパクトかつワイド(全幅は先代比30mm拡張)。長いボンネットのミッド寄りに、新しくなった4.0リッターV型8気筒ツインターボエンジンが収まる。

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  • ボディサイズは全長4,495mm、全幅2,045mm、全高1,275mm

動力性能は最高出力665PS(489kW)/6,000rpm、最大トルク800Nm/2,750~6,000rpmと圧倒的。前モデルに比べると、なんと155PS、115Nmも数値が増えている。向上率はそれぞれ30%と15%だ。昨今のモデルによくみられるモーターアシストでなく、純粋なチューニングによるものというから驚くばかりである。

開発チームはタービンの大径化やエンジンカムプロファイルの変更、圧縮比の最適化などを行うことで高出力化を達成したのだが、一方で気になるのは発生する熱負荷の増大だ。このため冷却システムも完全新設計とし、インタークーラーの冷却水回路に低温ラジエーターを追加したり、中央のメインラジエーターに補助クーラー2機を追加したり、表面積を2倍に拡大した補助外部オイルクーラーを取り付けたりして対処したようだ。

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    冷却性能へのこだわりは、(冷たいエアを大量に取り入れるための)開口部が38%も大きくなったフロントグリルを見ればすぐにわかる。最近の電気自動車(EV)で見慣れたグリルレスのすっきりした顔つきとは一線を画す、新鮮でアグレッシブな表情だ

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    リアはファットな4本出しマフラーでしっかりと“武装”しているのも素敵だ

インテリアはスポーティーかつラグジュアリーで、デジタルとアナログを上手に融合させたイメージ。5つに増えたドライブモードの変更や空調の調節など、よく使う機能にはダイヤルやボタンなどの物理スイッチを用意する。一方、10.25インチのタッチスクリーンには進化したコネクテッド機能を搭載。「what3words」が使えたり、Bowers&Wilkinsのオーディオで極上のサウンド空間が楽しめたりと便利に使える。

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  • レッドパイピングのしなやかなレザー製シートは、ちょっと座っただけでもそのホールド感と肌触りの良さが体感できた

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  • よく使う機能には物理スイッチを用意。運転への集中を妨げないための心配りだ

すごい“サウンド”が楽しめる!

増大したパワーを受け止めるのは、ミシュランがヴァンテージ専用に開発した「AML」コード付きの「パイロットスポーツS5 AML」タイヤ。21インチの鍛造アロイホイールの中には前410mm、後360mm径のカーボンセラミックディスク(オプション)を装着。それぞれ6ピストン、4ピストンのレッドキャリパーも備え付けられていて、それがホイールアーチに隙間なく完璧に収まっている様子は見事というしかない。ちなみに、ウインタータイヤも専用のものが用意されているというから、さすがである。

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  • タイヤサイズは前275/35/ZR21、後325/30/ZR21と巨大でワイド

ローンチコントロールやESP(エレクトリック・スタビリティ・プログラム)、ATC(アジャスタブル・ドラクションコントロール)、E-Diff(エレクトリック・リア・ディファレンシャル)など、タイヤのスリップやトラクションをコントロールする機能はフル装備状態。足回りには最先端のサスペンションを搭載している。

アルミニウム構造で乾燥重量1,680kgのボディは前後重量比50:50を達成。2トンを超えるボディを大パワーの電池とモーターで動かすスポーツEVとは一味異なる、機敏でシャープなハンドリングを見せてくれるはずだ。8速のZF製オートマを介したその性能は、0-100km/h加速3.5秒、最高速度325km/hを実現している。

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    前後重量配分は50:50の理想的なバランス

発表会を終えたグレゴリー氏に話を聞くと、「発表前に100人ほどのお客様に見てもらいましたが、いずれも大好評でした。ここでは試すことができませんが、走るとすごいサウンドが聞こえてくるんですよ」と純エンジン車の魅力をアピール。やっぱり、こういうクルマを求める人はまだまだたくさんいるのだなと思わされたし、既存のスタイルをピュアに突き詰めたクルマを開発し続ける英国ゲイドンの開発陣には頭が下がる思いだ。

この性能で2,690万円というのは、ちょっとしたバーゲンプライスかも。2024年の第2四半期にはデリバリーが始まるという。

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