伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は挑戦者決定リーグが進行中。2月16日(金)には紅組の佐藤天彦九段―藤本渚四段戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、四間飛車対急戦の熱戦を94手で制した藤本四段が初参加となる王位リーグの初戦を白星で飾りました。

ルーキー期待の初戦

事前の抽選で先手番と決まっていた佐藤九段は角道を閉じた四間飛車を採用。玉の移動を保留したのは藤井システム含みの駒組みながら、実戦はクラシカルな美濃囲いに囲って戦いを待ちました。対して後手の藤本四段は右銀を繰り出して急戦の態度を示します。

7筋で歩がぶつかった局面は居飛車に打開の権利がある形。四間飛車側は囲い側の歩を突いて形を保ちますが、これを見て中央の5筋の歩をぶつけたのが藤本四段の用意でした。昨年12月に指された自身の類例(順位戦・横山友紀四段戦)からの工夫が見て取れます。

リーグ最年少の白星スタート

銀を繰り出し中央を制圧した藤本四段は中央に築いた拠点の圧力でペースをつかみます。角成りを見せられた先手がたまらず飛車交換を挑むと、手番を得た藤本四段は悠々と飛車を打ち込み寄せを開始。一足先に美濃囲いに食いついて詰めろをかけることに成功しました。

攻めが途切れたかに見えた局面、藤本四段は好手で攻めをつなぎます。遊び駒の右桂を跳ねだして攻めに厚みを足したのが味の良い一手で、これを取ると端に眠っていた角が働きだす寸法。終局時刻は19時12分、最後は形勢の開きを認めた佐藤九段が投了を告げました。

これでリーグ成績は藤本四段が1勝0敗、佐藤九段が0勝1敗に。本局の結果を受け藤本四段の年度勝率(0.860)は暫定首位となっています(2位の藤井聡太竜王・名人は0.857)。

水留啓(将棋情報局)

  • 終局後のSNSには「渚先生、天彦先生に勝つんか…」「藤本先生の将棋がカッコよすぎる」と称賛の言葉が並んだ

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