近年、「インターンシップ(以下、インターン)」制度を取り入れる企業が増えている。就職前の学生に自社の業務を体験してもらう制度で、就職後のミスマッチを防いだり、離職防止につながったりする効果を企業は期待しているのだ。実はインターンを行うメリットは学生にもある。

本稿では、書籍『学生がキャリアアップするための インターンシップ活用術』(総合法令出版)の著者で現役の大学生であるトテ ジェニファー麻綾氏が自らのインターン体験を通して身に付けたスキル、成長できた点について解説する。

インターンを経験したからできる就職活動の準備

就職活動において、本格的に選考が開始されるとなった際には、インターン経験を積極的にアピールしていきたいものです。

長期インターンの選考は、書類選考や面接によって行われることが多く、学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)や自己PR、志望動機を聞かれるのが通説です。そして、この流れは就職活動でもあまり変わりません。

就職活動では、これらに加えて、「就職活動の軸は何ですか」「他社の選考状況はどのような感じですか」「入社後にしてみたいことは何ですか」など、インターン選考ではあまり問われない質問が付け足されていくイメージです。

では、インターン経験を基軸にこれまでの取り組みをアピールするにはどうすれば良いのでしょうか。

専門用語を多用せず、誰が聞いても分かるような言葉遣いで伝える、具体的で定量的な表現を心掛けるなど一般的にセオリーとされているようなことは、もちろん取り入れるに越したことはありません。

しかし、それだけにとどまらず、インターンを経験したからこそできる準備もあります。

企業選考はインターンを通じて経験済み、成功体験を存分に活用する

就職活動では、仮に第1志望が業界最大手の企業だとしても、選考の練習や押さえの企業という意味で業界の2番手、3番手、あるいは歴史は浅いものの近年業績を伸ばしている新鋭の中小企業などにもエントリーすることになるため、数十社の選考を経験することになるはずです。

大学生であれば、アルバイトの採用面接を受けたことがある、あるいは履歴書を書くような選考経験がある人はザラにいます。

しかし、自己分析をした上で、中長期的に歩みたい道を考え、選考対策をし、企業の選考を突破したという経験がある人は決して多くはありません。

ここで、インターンとして働くためにしたことを思い出してみてみると良いかもしれません。モラルやマナーから、選考に望む前のマインドセット、書類選考や面接のTipsなど意識するべき点がいくつかあります。

人によっては複数社のインターン選考を受けているケースもあるため、このくらいならもうお手の物だということもあるでしょう。

少なくともインターンができているということは、インターン選考を経験し、1社以上で合格を得ていることになるため、対策から選考までの一連の流れをクリアしている、つまり、成功体験を味わっていることになります。

インターン選考の経験を就職活動に生かすためには、選考の振り返りが欠かせません。

就職活動においては、日々、新しい企業の選考を受けるたび、通過、落選の結果に応じて何が評価されたのか、何が足りなかったのかを考えることになります。それと同時に、インターン選考を振り返ることも効果的です。

長期間インターンをしていれば、社員との信頼関係もある程度出来上がっていると思います。そこで、インターン選考の担当者に、「面接でどのようなことを思ったか」を尋ねてみることをおすすめしたいです。

面接官1人の裁量で合否が判断されているわけではないにせよ、選考時の自分を最も間近に見た人として、忖度なしに率直な意見をもらうことができます。

  • 提供:総合法令出版

「第一印象は微妙だったけど、難しい質問も自分なりに考えて返事をしていて、話していくうちにだんだんと一緒に働きたいと思うようになった」と返ってきたら、ファーストコンタクトをよくするにはどうしたらよいかを考え、「経歴は良かったけど、ありきたりなことばかり話していてもう少し個性が欲しかった」と言われれば、エピソードトークを練り直す必要があります。

就職活動中は、インターンに応募したとき以上に複数の企業の選考を並行して行うことになります。

選考対策をする傍ら、ほかの企業の面接を受けなければいけないなど、やるべきことには歯止めがありません。

それに加えて、就職活動前や就職活動を始めたてのころは、選考の経験値が少ないため、振り返りに必要な材料が不足していることがあります。

そこで、インターン選考を思い出す工程を取り入れるのです。

選考時に関わった人から直接フィードバックをもらえれば、自分の癖や弱点を発見することが可能です。就職活動の前半戦でそれらを補完できれば、必然的に就活力は増していくことでしょう。

インターンの参加から現在までを見える化する

就職活動においても、インターン選考の時と同様にアピールポイントやエピソードストーリーを書いていくことに変わりはないですが、インターン応募の時とすべてが同じという状況にはなりません。

というよりも、手間暇かけてインターンをしたにもかかわらず、インターン応募時と就活開始時の状態がイコールになってしまっては、もったいないです。

仲のいい友人と久しぶりに再会した際に、「いまだから言える〇〇」というテーマで話をしたことはありますか。

当時は思っていなかったけど、いま回想してみるとこんなことが言えるな、あのときは言えなかったけど、実はイライラしていたなど、時間を経た、いまだからこそ感じられることを楽しむ、例のやりとりです。

インターン経験をこれに乗じて考えてみます。インターンに参加する前の自分、参加をして感じたこと、得たことを時系列的に並べてみましょう。

すべて過去のことではありますが、リアルタイムで体験していたときとは別の感情が出てくることもあるかもしれません。

「応募時は漠然と営業職をやりたいと思っていたけど、インターン後は、売り込む喜びより、お客さまと対等な立場でともに課題解決をするほうが向いているのではと感じた」など、心境が大きく変化したことがある場合もあります。

インターン選考と就職活動で似ている点、異なる点を把握するのと同様に、自身についてもインターンをする前の自分といまの自分で変わった点、変わらなかった点の理解を促します。

その際に、当時の自分にアドバイスできるとしたらなんと声をかけるか、これまでの経験を踏まえていまインターンをするとしたらどこの企業で働きたいかといったことも考慮すると、面接時の少し変わった質問にも対応が利きます。

書類選考とは異なり、面接ではテンポのいい返しが求められますが、それらは場数と準備にかかっています。

インターン参加から現在までの出来事や心情を、縦にも横にも広げて熟慮することが大切です。

著者プロフィール:トテ ジェニファー麻綾

MAVIS PARTNERS 株式会社トレーニー
共立女子大学ビジネス学部4年

株式会社サイバーエージェント、株式会社キュービックにてWEB マーケティング、メディアの企画・運営のインターンに従事。その後、オフショア開発セールス事業、長期インターン斡旋事業での起業を経てMAVIS PARTNERS 株式会社にインターンとして入社。就活では外資系金融、外資系IT 企業を中心にインターン(ジョブ)に参加し、うち複数社から内定を得た。
2023年11月に『学生がキャリアアップするためのインターンシップ活用術』(総合法令出版)を発売。共立女子大学4年生である著者が自身の経験をもとに、長期インターンシップを解説しており、すべての学生におすすめしたい内容となる。