米AMDは2月13日(現地時間)、日本での組み込み向けソリューションの導入事例として、九州新幹線における線路点検の自動化事例について公表した。これによって安全性と運用効率が向上したとしている。
線路で専用デバイスを搭載した点検用カートを走行させ、AIを活用して線路の点検を行うというもの。デバイスにはFPGAベースのKria K26 SOM(System-on-Module)が中核に据えられており、これに高速カメラやDDRメモリ、不揮発性のストレージデバイス、セキュリティモジュール、アルミニウム製のヒートスプレッダを備えたカスタムビルドのAMD Zynq UltraScale+ MPSoCを統合。高速な画像処理と高度なAI機能を活用し、ボルトのゆるみなど線路におけるさまざまな問題を検出・判定できるとしている。
これによって、従来は夜間に徒歩で行われていた点検作業を大幅に高速化。適切なカメラと照明、画像処理ツールを組み合わせることで精度を高めたとしており、システムは濡れた線路の反射光などに惑わされることなく点検作業を進められるという。カートには検査ハンマーやレールのゆがみを測定するための専用機器も載せており、1人がカートを運転してもう1人が画像とデータをチェックする。
AMDは発表文書の中で、日本の安全確保基準が極めて高いことに言及。日本で過去5年間に発生した脱線事故が29件であることを指摘し、これは同時期に米国運輸省運輸統計局が報告した6,089件と比較して“驚くべき偉業だ”と述べている。
JR九州で新幹線部工務課課長代理を務める坂口和弘 氏は発表の中で、「TAI(編注:システムの開発・導入ベンダー)とAMDの新しいソリューションにより、従来の線路点検の効率を向上させることができました。将来的に機能を拡張していくことで、点検効率のさらなる向上を期待しています」と発言。
AMDも発表に寄せて、「AMD Kria SOMは、運用を通じてソリューション開発から展開までを簡素化し、エッジにおけるイノベーションを加速させます。JR九州は、Kria SOMの無限のプログラマビリティとエッジAIコンピューティングを組み合わせることで、マシンビジョンから産業用ロボット、AI/MLコンピューティングまで、さまざまなアプリケーションにおいてプロセスを自動化し、業務効率を劇的に向上させることができる完璧な事例といえます」と述べている。