ロッテ・髙部瑛斗[撮影=岩下雄太]

◆ 復帰初戦の対外試合で3安打

 一軍の実戦では昨年3月26日の中日とのオープン戦以来の出場となったロッテ・髙部瑛斗が13日、楽天との練習試合に『3番・指名打者』で先発出場し、3安打を放ち復活への第一歩を踏み出した。

 0-0の初回一死一塁の第1打席、先発・内星龍が投じた初球のストレートをセンター前に弾き返すと、4-0の5回一死一塁の第3打席では左の弓削隼人が1ストライクから投じた2球目のカットボールを左中間に破る二塁打でチャンスを広げた。

 勢いの止まらない髙部は、5-0の8回二死一塁の第5打席、バットの先に当たった打球も俊足を飛ばして、三塁への内野安打で猛打賞を達成した。

◆ 復活目指す今季

 髙部は22年にリーグトップの44盗塁、リーグ2位の148安打、守っても外野手部門最多得票でゴールデングラブ賞を受賞したが、昨季は開幕前の3月9日に『右肩甲下筋肉離れ』と診断され、開幕直後の4月29日に『右肩甲下筋損傷』で離脱し、9月1日に『第一肋骨切除術』と故障に泣いた1年だった。

 レギュラー入りを狙った21年オフは技術、フィジカル、メンタルの向上を図り、大ブレイクに繋げたが、今オフは「まずは怪我をして1年間できていなかった。体の感覚というのを呼び戻すというのと、今までできたことができなくなったりしたので、そういうものを少しでも増やせるように意識してやっていました」と、感覚を取り戻す作業に重点を置いた。

 春季キャンプが始まってからは、福浦和也ヘッドコーチ兼打撃コーチとマンツーマンで打撃練習を行う日が何度もあった。髙部は「いろんな感覚、福浦さんが持っていたものというのを話をしてくれて、それに近い感覚というのをどんどん教えてくださるので、1つでもそれがいいものが起こせるようにというか、そういうふうに思ってやらせてもらっています」と説明した。

 また、自主トレの取材で「22年に経験したこともすごくありますけど、結局は過去のことなので、24年はしっかりまたイチから自分を作り上げていきたい。毎年そうだと思うので、出ていない関係なく、しっかり自分の形というのをどんどん作り上げたい」と話していたが、春季キャンプ中に改めて“2024年型の髙部瑛斗”を作ることができているのか問うと、「実戦をやってみないと新しい感覚が出てこないと思う。新しい感覚を常に求めて、2024年だけじゃなく続けてやっていきたい」と意気込んでいた中、対外試合の初戦で3安打。

 外野のレギュラー、復活するために必要なことについて「まずは怪我を治して、しっかりできるところを見せていくことが大事。レギュラーになったとも思っていない。もう1回しっかり試合に出られるように続けられるように、結果を求めてやっていきたい」と決意を述べた。

 今は“期待”と“不安”、どちらの気持ちがあるのだろうかーー。

 「期待ももちろんありますけど、不安の方がでかいのは常だと思いますので、その不安をしっかり技術、自分の強さに変えていけるようにと思って毎日やっています」。

 昨季は22年の活躍を踏まえて、さらなる飛躍が期待された中で故障に苦しんだ。今季は「充実した1年にしたい」と髙部。「まずは自分。チームのこともそうですけど、自分がしっかり出てチームを勝たせられたりとか、チームのためになれる、優勝した時の一員になれるようにと思って常にやっている。まずは自分のことをしっかりやってから、チームのことを考えられるようにと思ってやっています」。

 振り返ればレギュラーを掴んだ22年は練習試合で少ないチャンスをモノにし、オープン戦では12球団トップの打率をマークして、開幕してからも大きく調子を落とすことなく1年間を戦い抜いた。“期待の若手”が多い中で、唯一1年間結果を残し続けた経験を持つ。髙部がシーズン通して、グラウンドで打って、走って、守れば、それだけで大きな戦力になる。

取材・文=岩下雄太