内海さんお勧めの東南アジア野菜5選

大阪府富田林(とんだばやし)市のカフェを併設したベトナム雑貨・食材店「SHO-KYU(ショウキュウ) ティエンベイカー」では、大阪産の新鮮な東南アジア野菜を販売している。それらの野菜は店主である内海さんが隣町の河南町で育てたものだ。内海さんによると、ベトナムから野菜を輸入すると、航空便でも収穫から1週間程度かかってしまうという。そんな輸入野菜と比べて鮮度で勝る内海さんの野菜は、東南アジア出身の人々が購入するだけでなく、エスニック料理店でも使われている。内海さんいわく「リピート率はほぼ100%」なのだそう。
そんな内海さんが思うニーズが高く育てやすい東南アジア野菜5つを選んでもらった。

パクチー(コリアンダー)

独特の強い香りが特徴のパクチー(コリアンダー)は、中国、タイ、ベトナム、中東、地中海沿岸部など世界の幅広い地域で食され、各地の料理に欠かせない存在だ。日本でもパクチー好きな人は多く、栽培農家も増えた印象だ。
ただ、栽培には注意が必要だと内海さんは話す。
「暑さに強そうなイメージのパクチーですが、意外と夏の暑さには弱いんです。東南アジア原産の野菜ではなく、地中海沿岸や西アジアが原産といわれています。海外から取り寄せたパクチーの種で育てた場合は、暑すぎると発芽率が落ち、暑さで葉っぱが溶けたりして思うような生育が望めないので要注意です」
内海さんの場合、夏場の播種(はしゅ)の場合は日本産の晩抽性の種を使用しているとのこと。海外産のパクチーの種に比べ、味は多少マイルドである。

フンルイ(スペアミント)

「ミントといっても種類は数えきれないほどあるんですよ。ベトナムでは、ミントのことをフンルイといいます。その中でもスペアミントはポピュラーなミントで、甘さと香りがあり、穏やかな風味でクセがないのが特徴です。ベトナムなど東南アジアでは、飾りではなく、サラダや春巻きにふんだんに使われます。ペパーミントもスイーツやサラダ、肉料理にも使います。うちではスペアミントとペパーミントを栽培しています」(内海さん)

フンルイ(スペアミント)は世界でも有名なハーブのひとつで、清涼感がありつつも優しい香りである。一方、ペパーミントは主成分がメンソールなので、刺激を感じるほど清涼感のある香りが特徴だ。

「スペアミントは挿し芽で育てています」という内海さん。香りのよいスペアミントがあれば、挿し芽や株分けで育てた方が、その香りを保てるからだそう。
「東南アジア料理ではミントは使用頻度も高く、日本ではミントを専門に栽培している農家は比較的少ないので、安定して供給ができれば需要があります」(内海さん)

エンツァイ(クウシンサイ)

エンツァイは日本では「クウシンサイ」として知られ、最近ではスーパーなどでも見かけるようになった野菜だ。シャキシャキとした歯ごたえが特徴で、中国をはじめとするアジア各国の料理で炒め物の定番として登場する。

「エンツァイは断トツで育てやすいと思います」と内海さんは話す。熱帯アジア原産のため暑さに強く、真夏でもよく生育するからだ。夏場の貴重な葉物野菜としてニーズが高いといえる。

ノコギリコリアンダー(パクチー・ファラン)

ノコギリコリアンダーはその風味がパクチー(コリアンダー)と似ていることから、「パクチー・ファラン」や「ロングコリアンダー」とも呼ばれる。細長くノコギリのようなギザギザの葉が特徴の野菜だ。東南アジア料理だけでなく、メキシコ料理にも使われている。
「ノコギリコリアンダーは日本で栽培している人が少ないので、うちでは大人気の野菜です。フォーには必ず使います。風味はパクチーと似ていますが、パクチーより食べやすくて好きだという方もけっこういます」(内海さん)

タイバジル

タイ料理やベトナム料理によく使われるタイバジルは、さわやかな良い香りが特徴。乾燥させた葉はハーブティーとしても人気。葉がツルッとして光沢があり、茎が少し紫がかっている点はスイートバジルと異なる。
タイ料理の「ガパオライス」は日本でも最近知名度が上がっている。ベトナム料理のフォーにも欠かせない。グリーンカレーに使われているのもタイバジルだ。

しかし、内海さんによると「タイバジルは、葉と葉が擦れ合うとダメになってしまう」とのこと。販売の際には注意したい。

農家からのアドバイス

ここまで紹介した5品目の東南アジア野菜は、それぞれの原産国であれば簡単に育てられるもの。しかし、日本での栽培では「温度管理や土壌の違いに苦労しました」と内海さんは話す。内海さんは主にベトナムから種を取り寄せているが、袋の裏に書いている説明書きにはベトナムで栽培するときのことしか書いていないので、日本での栽培ではあまり参考にならない場合が多いからだ。
また、発芽率も一定ではないという。「同じ種でも保存状態が悪いものは芽が出なかったりすることもあります」とのことなので、収穫量は予測しにくいかもしれない。
内海さんの畑では、さらに利益率を上げるために、露地栽培とハウス栽培の両方を行っている。わざと旬を外すことで希少価値を高められるからだ。「温度管理が大変ですが、レストランなどに通年安定して供給できるので重宝されています」(内海さん)

今後ますますニーズが高まるであろう東南アジアの野菜たち。栽培だけでなくニーズをとらえて販路を開拓することで、農家にとってもうかる品目に成長するかもしれない。