第17回朝日杯将棋オープン戦(主催:朝日新聞社・日本将棋連盟)は、準決勝・決勝の計3局が2月10日(土)に東京都千代田区の「有楽町朝日ホール」で行われました。このうち藤井聡太名人・竜王と永瀬拓矢九段の間で行われた決勝戦は129手で永瀬九段が勝利。ライバルとの大一番を制して悲願の初優勝を果たしました。

初優勝か2連覇か

午前に行われた準決勝で藤井名人・竜王は糸谷哲郎八段に、永瀬九段は西田拓也五段に勝っての登場。詰めかけた約600人のファンの拍手に迎えられ両対局者が対局場に登壇します。振り駒で先手となった永瀬九段は初手に角道を開けて矢倉を志向しました。

後手が現代調の中住まいに組んでくるのを見越して早繰り銀の要領で仕掛けたのは研究と思われる進展。60手目までで消費時間1分と、永瀬九段は驚異的なハイペースで指し手を進めます。対する後手の藤井名人・竜王は2筋に飛車を回って逆襲を目指しました。

勝利のためのリスク

2筋で飛車交換が行われて局面は一段落。直後に受け一方の自陣飛車を余儀なくされた藤井名人・竜王ですが持ち駒の角銀を敵陣に打ち込んで反撃を開始します。これに対し受け切りは難しいと見た永瀬九段も攻め合いで応じ、盤上は激しい終盤戦に突入しました。

両者秒読みの競り合いのすえ永瀬九段がリードを奪います。6筋に打ったタタキの歩は後手の攻めを呼び込んで怖いものの、手に乗って持ち駒を増やせば自然と後手玉も危険な状態に。藤井名人・竜王は感想戦で、この一連の勝負手を軽視したことを明かしました。

永瀬九段が初優勝

リードを奪った永瀬九段は落ち着いた手つきで敵玉への寄せの網を絞ります。終局時刻は16時48分(対局開始14時45分)、最後は自玉の詰みを認めた藤井名人・竜王が投了。自身二度目となる決勝の舞台を快勝で飾った永瀬九段が悲願の初優勝を果たしました。

永瀬九段は局後、「ミスが出ない状態で押し切ることができた、努力がひとつ報われてよかった。昨年の王座戦では3敗したので33%くらいは借りを返せたか」と喜びを語りました。

水留啓(将棋情報局)

  • 永瀬九段の全棋士参加棋戦(タイトル戦を除く)での優勝は初めてのこと

    永瀬九段の全棋士参加棋戦(タイトル戦を除く)での優勝は初めてのこと