現地時間2月11に開催される第58回NFLスーパーボウル・ハーフタイムショーのヘッドライナーを務めるアッシャー(Usher)が、通算9枚目の最新アルバム『COMING HOME』をリリースした。世界中で8000万枚以上のレコードを売り上げてきた問答無用のR&Bスターは、どのような最新モードを見せているのか?
20年以上もの間、アッシャーは最も印象的なリリースを続けるトップランナーの一人だった。 90年代から2000年代初頭にかけてR&Bの新世代が生まれては消え、自分の同世代が低迷するなか、このカメレオン歌手は時代に適応し、その魅惑的な威勢はそのままにダンス・ミュージックにも挑戦している。
アッシャーがソロアルバムをリリースするのは8年ぶり、ゼイトーヴェンとのコラボレーション・プロジェクト『A』からは6年ぶりとなる。彼は10代の頃以来、最も長いあいだリリースから遠ざかっていた。 近年はラスベガスでのレジデンシー公演が成功し、彼がイッサ・レイ、キキ・パーマー、ドージャ・キャットといった名だたる女性たちに歌唱を捧げる光景が無数のバイラルクリップに収められたことで、アッシャーのリバイバルに拍車がかかっている。 スーパーボウルでハーフタイム・ショーのヘッドライナーを務めるという大役も控えており、アッシャーが新作を携えて戻ってくるうえでこれ以上のタイミングはない。 全20曲もの大作となった最新アルバム『COMING HOME』は、そのタイトル通りノスタルジックで親しみやすく、アッシャーが古臭さを感じさせることなく過去に寄り添っている。
ビリー・ジョエルのサンプリングに垣間見える「らしさ」
『COMING HOME』は4曲連続のフィーチャリング・ソングで幕を開ける。 バウンシーで淫らな二重表現のタイトル曲にはバーナ・ボーイ、「Lovers And Friends」風の「Good Good」にはサマー・ウォーカーと21サヴェージ、トラップを取り入れた「Cold-Blooded」にはザ・ドリームが参加。 意外なハイライトはビリー・ジョエルをサンプリングし、ラトーを迎えた「A-Town Girl」だ。明るくキャッチーなポップ・モーメントで、アッシャーは「Uptown Girl」を完璧に反転させ、アトランタ生まれの愛を祝福しているーー"ショーティはAタウン・ガール/自分のお金は持ってるけど、中に入るのにお金は払わない/嘘じゃないよ”。 アッシャーならではの可笑しなサンプル使いだ。しかも実に上手くいってる。
アルバムの大半でアッシャーは一人で歌っているが、勢いを保ちながらダンサブルに仕上げている。映画『カラーパープル』のサウンドトラックでH.E.R.とデュエットした、スロー・ジャムだが決してスロー過ぎない「Risk It All」も、シンセが映える楽観的なラブソング「Keep on Dancing」、恋人に自分のもとへ戻ってくるよう誘う欲情的なミドルテンポ「Bop」に挟まれる形でアルバムの中盤に挿入されている。
高品質でスムースな楽曲たちはアッシャーの音楽における両極、ホームパーティー向きのジャムとセックス・プレイリストの名曲の間を行き来するかのようだ。このアルバムは少なくとも、彼の素晴らしかった時代を思い出させてくれる。 アッシャーの帰還は実に喜ばしいことだ。
From Rolling Stone US.
アッシャー
『COMING HOME』
発売中