藤井聡太王将に菅井竜也八段が挑戦する第73期ALSOK杯王将戦七番勝負(毎日新聞、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟主催)は、第4局が2月7日(水)・8日(木)に東京都立川市の「オーベルジュときと」で行われました。対局の結果、角交換型の三間飛車からの乱戦を121手で制した藤井王将が無傷の4連勝で3期連続となる王将防衛に成功しました。
菅井八段の反撃なるか
開幕3連敗と後がなくなった菅井八段はカド番を角道を止めない三間飛車に託します。この一週前に指されたA級順位戦・佐藤天彦九段戦でも採用している作戦で、本局もそのとき同様に角交換から乱戦に突入。敵陣に作った馬を自陣に引き上げ合って盤上は駒組みに入りました。
後手が四間飛車に振り直したあと、藤井王将が右銀を4筋に上がったのは控室を感心させた一手。二枚換えの駒損の筋がチラつくものの、丁寧に読むとタタキの歩の反撃があって問題ありません。間合いの計り合いののち菅井八段が封じ手を記入して1日目の戦いが終了。
藤井王将の読みが光る中盤
開かれた封じ手は振り飛車側から飛車交換に応じるもの。これ以降、局面のテーマは「自陣への飛車の打ち込みを警戒しながら馬を起点としていかに手を作るか」に移っていきます。菅井八段が3筋に馬を寄って銀取りをかけた局面が中盤のポイントとなりました。
じっくり1時間を投入した藤井王将は1筋への自陣飛車で対抗。こうなると後手は一手損となる飛車合わせで受けるよりありません。丁寧な読みで手番を得た藤井王将は歩の手筋を駆使して後手陣に竜を作ることに成功。ここから藤井王将の独り舞台が始まりました。
激辛の快勝譜で3連覇達成
藤井王将の竜はやがて自陣に引き上げることになりますが、これにより先手陣は打ち込みのスキが一切ない形に。万全の準備を整えた藤井王将は満を持して敵陣攻略に乗り出します。手にした金で後手の馬を追ったのが玉頭一帯を支配する激辛流の決め手となりました。
終局時刻は17時52分、攻防ともに見込みなしと認めた菅井八段の投了により藤井王将の防衛が決まりました。これで藤井王将はタイトル戦20期連続獲得の新記録を樹立。敗れた菅井八段も「明日からも頑張って生きるしかないので頑張ります」と前を向きました。
水留啓(将棋情報局)