軽自動車で荷物の配送を行う現役ドライバーの声から生まれたクルマ「ASF2.0」に試乗した。電気で走る商用軽バンはラストワンマイル配送の担い手として活躍が期待される乗り物だが、ASF2.0にはどんな工夫が盛り込まれているのか。詳しく見ていきたい。
佐川急便のプロドライバー7,200人に聞きました
「ASF2.0」はASFという会社が企画・設計を担当し、中国の五菱(ウーリン)が生産を手掛ける軽商用EV。ASFの営業担当によると、同社は日本国内初の商用EVベンチャーとして2020年に設立した会社だという。
このクルマの開発にあたりASFは、軽自動車で配送業務を行う佐川急便のドライバー7,200人にアンケートを実施し、クルマへの要望や不満を聞き取ったうえで、さまざまな機能や装備を盛り込んだ。
はたらくEVって乗るとどうなの?
もともと軽自動車はそんなにパワーがないし、配送業務だと荷物を積んで重くなるので、ガソリンエンジン車ではアクセルペダルを踏みこんでもなかなか進まなかったり、特に上り坂などでは大きな音がしたりするという弱点があった。そのあたりについてASFの営業担当は、「EVだとトルクが約2倍ですから、軽く踏んでも進んでいきます」と説明する。200kgくらいあるバッテリーを車体中央の床下に積んでいるため、荷物を載せていない軽い状態でもふらつかないそうだ。
実際に運転してみると、確かにガソリンエンジンの軽自動車よりもパワフルな走りであることが実感できた。ただ、テスラなどに比べるとペダルを踏みこんだ際の加速はかなりマイルド。このあたりは「ガソリン車と同じ感じで踏んでも違和感がないように」という現役ドライバーからの要望を踏まえた味付けにしてあるという。急加速すると積んだ荷物が崩れかねないわけだし、よく配慮された乗り味だと思った。自動ブレーキなどの安全装備についても基本的なものは押さえてあるとのことだ。
EVといえば静かな走りが特徴だが、ASF2.0の場合は車内にモーター音がけっこう聞こえる。遮音はコストをかければできたはずだが、商用車は価格を抑えて作ることも大事なので、そのあたりは割り切ったのかもしれない。ただ、エンジンのようにうなりを上げるような音ではないので、気分的にはEVのほうが楽ではあると思う。
商用EVの競争は激化する?
ASF2.0はすでに日本の公道を走り始めている。佐川急便では実証実験用として6台ほどを運用していたが、2024年3月からは車両を増やしていく予定。マツキヨココカラではECの個別配送用として約100台が稼働している。
軽商用EVの世界には2024年にホンダ「N-VAN e:」が登場するし、トヨタ自動車、スズキ、ダイハツ工業も車両を開発中だ。ミニキャブEVや海外から入ってくる車両も含めライバルは増え続けるが、佐川急便のドライバーから聞き取った生の声を参考に作ったという点はASF2.0の強みとなるだろう。価格は260.7万円で各種補助金が使える。基本はリースで使う形だ。ちなみに、「コスモMyカーリース」のHPを見ると、事業用車の「国+東京都の補助金込みリース料」として「月々2万2,990円」との表示があった。かなり安いのではないだろうか。