第9期叡王戦(主催:株式会社不二家)は本戦トーナメント2回戦がスタート。2月7日(水)には佐藤天彦九段―永瀬拓矢九段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、三間飛車対居飛車穴熊の熱戦を127手で制した永瀬九段がベスト4進出を決めました。
天彦流の振り飛車戦術
振り駒で後手となった佐藤九段はノーマル三間飛車を選択。居飛車党の棋士との対戦に限っていえば年をまたいで直近12局連続での振り飛車採用となりました。囲いを美濃囲いで済ませたのは佐藤九段の用意。盤上右辺に石田流の攻撃陣を築いて攻めの姿勢を示します。
対する先手の永瀬九段は居飛車穴熊の堅陣を構築して堅さで対抗。駒組みが頂点に達したところで7筋の歩を交換したのはこの戦型の急所で、リズムよく移動してきた右銀を活用しつつ仕掛けを模索します。後手が銀冠へ移行し始めたところで永瀬九段は動きました。
穴熊流の猛攻実る
9筋の歩を突っかけた永瀬九段は端棒銀の要領で戦線拡大。銀取りに打たれた歩を気にせず食いちぎったのが穴熊流の攻めのつなぎ方でした。攻めさえ続けば多少の駒損は問題ないと見るこの大局観がよく、本局はここから永瀬九段の独擅場となりました。
端の逆襲で拠点を築いた永瀬九段は、今度は飛車取りとなる銀打ちを手抜いて攻撃を続行。後手は飛車銀交換の駒得ながら、銀冠を裏口から突破された格好で適当な受けがありません。終局時刻は16時59分、最後は自玉の受けなしを認めた佐藤九段が投了。
本局を振り返ると、盤上右方に控える石田流の攻撃陣に一切触れることなく左辺から攻め切った永瀬九段の快勝譜となりました。これで永瀬九段はベスト4に一番乗り。次局で糸谷哲郎八段―本田奎六段戦の勝者と対戦します。
水留啓(将棋情報局)