JR東日本は6日、輸送安定性の向上と業務革新に向けて推進している信号システム・業務のDX(デジタル・トランスフォーメーション)の具体的な取組みについて発表した。
信号設備のメンテナンスに関して、ICT(情報通信技術)などの先端技術を活用し、地上設備の削減、より緻密な設備状態の把握、現場検査や夜間作業の削減など、さまざまな取組みを推進している。直近では、2024年度から「ES II形電気転てつ機」における一部検査のCBM化、近赤外線を使用した「特殊信号発光機視認性確認システム」の実用化を予定している。
「ES II形電気転てつ機」における一部検査のCBM化は、転てつ機から得られた各種データをクラウド上に蓄積し、そのデータを確認することで現地確認の代替えとする試み。2024年度は23台を対象にデータ解析を適宜実施し、現地検査を年3回から年1回に減らしつつ、検査品質と生産性の向上を実現するという。さらに検証を行い、2025年度以降は対象箇所の拡大をめざす。
「特殊信号発光機視認性確認システム」は、踏切等の異常が発生した際、付近の列車を操縦する運転士に知らせるために赤色灯を発光させる装置(特発)。この装置の目視検査を省力するため、近赤外線と画像処理技術を用いた「特発視認性確認システム(IR特発)」の導入を進めている。現在までに地方線区を中心とした31線区で、約6,800カ所へIR特発を設置しており、2024年度から実用化予定としている。
その他にも、レール側面に取り付けられた軌道回路用信号ボンドの取付状態を確認する「信号ボンドモニタリング」の運用を2020年4月に開始。JR東日本における地方路線のスタンダードを見据え、GNSS(衛星を用いた位置測位システムの総称)と携帯無線通信網を活用した新しい踏切制御システムの開発も進めている。
2023年3月には、鉄道信号システム故障時のAIによる復旧支援システムを開発し、首都圏線区の指令所に導入。指令員が調査結果を時系列に入力することで、AIが過去の故障対応記録から類似事象を自動的に抽出し、原因の推測と対策の提案を行うシステムとなっており、指令員の経験知を補えるとのこと。