◆ 青柳はキャンプ初日にブルペン一番乗り
昨季は明暗の分かれた虎の師弟コンビが、ともに順調なスタートを切った。
沖縄・宜野座で始まったタイガースの春季キャンプ初日。ブルペンに一番乗りしたのは、青柳晃洋だ。
「(ブルペンの順番は)年功序列なんで。関係ないですよ」と1軍キャンプメンバーでは西勇輝に続く年長となった30歳は豪快に笑ったが、投じるボールには“一番乗り”の気概がにじんだ。
「野球人生を左右するような1年になる」
昨年11月の契約更改の場で青柳は悲壮感をにじませた。23年シーズンはキャリア初の開幕投手を務めたものの、約2カ月の2軍降格を経験するなど8勝6敗、防御率4.57と不本意な1年。
今オフは蓄積疲労で狭まった各所の可動域を戻すことに重点を置き、年明けから毎年拠点とする静岡でトレーニングに励んできた。
「昨年だったら肩が上がりづらいとかもあったけど、すんなり上がるようになってきている。土台作りの部分ができた」と手応えを口にして乗り込んだ9年目のキャンプ。
初日は約20球を投じ「良いボールがいっていたし、初日にしては良かった」と好発進に表情は明るかった。
◆ 師弟がともに目標に掲げる開幕投手の座
そして、先輩がマウンド降りた後、駆け足でブルペンに向かったのは村上頌樹。
プロ初勝利を含む10勝、最優秀防御率のタイトル、リーグMVPも獲得するなど一気にスターダムを駆け上がった。
覚醒のきっかけは23年1月に参加した青柳との合同自主トレ。投球時に左足をしっかりと着地してから腕を振ることの意識付けを教わって潜在能力が開花。
苦しんだ師匠の穴を埋める活躍でチームの顔に躍り出た。真価が問われる“2年目”。後輩右腕も、決意のもと初日からブルペン入りし、第1クールは“皆勤”で投手陣最多の231球を投げ込んだ。
「今の段階でしか投げ込みができないので、投げておこうかなと。(昨年の)疲れは取れていると思っているので、投げても大丈夫ですし」
今年も村上は青柳との合同自主トレを継続し、どん欲にエースから技術を吸収するだけでなく、経験をもとにした助言に耳を傾けた。
「(青柳には)いつも通り昨年と変わらず投げれば絶対勝てるからと言われたので。今までやってきたことを信じて今年も投げていければ」
他球団が対策を練り“村上包囲網”を敷く状況も予想されるが、あえて新球習得などには着手せず挑むつもりでいる。
師弟がともに目標に掲げているのが開幕投手の座。
「投手なら誰でも目指すところ」と青柳が意欲を燃やせば、村上も「やってみたい」と少々控え目ながら、開幕戦の相手となる巨人戦は昨季防御率0.00と有力候補であることは間違いない。
師匠の逆襲か、弟子の更なる進化か。2人の切磋琢磨が、タイガースを球団史上初の連覇へと導く。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)