ジンズホールディングスはこのほど、同社が支援した臨床研究により、子どもにおいて世界でも初めて就寝前のブルーライトカットメガネの使用による睡眠への影響が示唆され、2023年の世界睡眠学会、米国睡眠学会、日本睡眠学会で報告されたことを発表した。
ブルーライトと睡眠の関係性については、これまで様々な研究が行われており、就寝前にブルーライトを浴びることが睡眠やサーカディアンリズムに悪影響を及ぼすことなどがわかっている。しかしこれらは大人を対象としており、子どもを対象にした研究はこれまでになかった。そこで同社は、ブルーライトと睡眠の関係性のさらなる解明に寄与したいとの想いから、西野精治博士、千葉伸太郎博士、西野直矢医師らによる臨床研究(研究名称「学童に対する就寝前ブルーライトカット眼鏡装用における唾液メラトニン濃度への影響に関する前向き、無作為化、クロスオーバー法による探索的研究」)を支援。
今回の研究では、就寝前にブルーライトを浴びる習慣のある10~12歳の男子小学生39名が参加し、ブルーライトカットメガネと一般的なメガネ装用による睡眠への影響を比較した。参加者を2つのグループに分けて条件を入れ替えて調査する「クロスオーバー法」という研究手法を採用。Aグループは初めに、JINS提供のブルーライトカットメガネ(カット率40%のブルーライトカットレンズを装着した度付きメガネ)を就寝前3時間装用して2週間を過ごし、そのあと何も装用しない期間を1週間おいた後、一般的なメガネ(ブルーライトカット機能のない度付きメガネ)を就寝前3時間装用し2週間過ごした。
他方Bグループは、装用するメガネの順序を入れ替えて、同様のスケジュールで過ごした。その上で唾液メラトニン量を測定、ウェアラブル加速度センサーを用いて、就寝時刻と起床時刻を客観的に測定し、また、アンケートによって起床時や日中の主観的な行動の変化などを調査した。
その結果、唾液中のメラトニン濃度に影響はなかったが、就寝前3時間のブルーライトカットメガネ装用によって、一般的なメガネ装用時と比べ、就寝時刻と起床時刻が早くなり、その効果は2週間目に顕著になった。起床時刻はブルーライトカットメガネ装用によって1週間目に比べて2週間目で早くなった。また、日中のイライラ感や兄弟・友人への暴言のスコアが、一般的なメガネ装用時と比べて2週間目で減少した。
このように、就寝前のブルーライトカットメガネの装用は、子どもを早寝早起きにさせ、日中の気分・行動を改善することが示唆された。
こうした結果について、西野精治博士は「日本の子どもたちの睡眠時間は世界でも最も短く、就寝時間も後退しています。子どもは大人と違って、睡眠状態が良くない際"昨夜よく寝れなかった"、"日中眠い"などと訴えることは少なく、機嫌が悪い、かっとなる、集中できない等の日中の問題行動として表面化することが多いです。今回、学童で眼鏡装着による就寝前のブルーライトの照射の抑制が、睡眠リズムや、日中の行動を改善し、またメラトニンの分泌がその改善機序に関係していないことは、社会実装面、学術的にも非常に興味深いと思われます」、千葉伸太郎博士は「近年、世界的に"Sleep health"が注目されています。Sleep healthとは、普段の眠る、起きるなどの睡眠関連の習慣、行動をチェックし、より良い方向へ変えることにより、ひとびとの心身の健康を増進し、社会全体の幸福を目指すことが目的です。日本の子どもたちの睡眠時間は世界で一番短いとされ、経済的な成長と競争力の強化を優先する多忙な日本社会が、子どもたちの日常生活にも大きな影響を与えています。特に今回の研究では、子どもたちの睡眠にブルーライトが大きく影響していることが明らかになりました。 社会全体としてブルーライトのコントロールに取り組むことは、子どもたちの将来のため、Child sleep health推進に重要な役割を担うと考えます」とコメントしている。