第72期王座戦(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)は予選が進行中。2月1日(木)には一次予選と二次予選の計4局が東西の将棋会館で行われました。このうち、東京・将棋会館で指された伊藤匠七段―高野智史六段戦は135手で高野六段が勝利。角換わり腰掛け銀の熱戦を制して二次予選進出まであと1勝としました。
角換わりの最新研究
本一次予選は20名前後からなるトーナメントを勝ち抜いた計6名が二次予選に勝ち上がるもの。振り駒が行われた本局は先手となった高野六段の注文で角換わり腰掛け銀に進みました。後手の伊藤七段が右銀を引いて争点を消したのは近年主流となっている待機策です。
やがて高野六段は単騎の桂跳ねで仕掛けを敢行。この桂はすぐに捕獲されるものの、手順に伸びた4筋の歩が攻めの拠点になるのが狙い筋です。ともに研究の範囲内か両者速いペースで指し手を進め、71手目にして本局はようやくすべての前例を離れました。
高野六段が実力者制す
盤面全体を使った押し引きが続くなか、中盤戦をリードしたのは高野六段でした。自玉付近に垂らされた拠点の歩に対し、合わせの歩の手筋でこれを丁寧に除去したのが大切な下準備。手順に後手の攻め急ぎを誘って自玉を安全にすることに成功しました。
手番を得た高野六段は4筋の拠点に銀を打ち込んで反撃開始。角捨ての強手から飛車金両取りをかけ返したのがこの戦型特有の決め手となりました。終局時刻は20時59分、最後は自玉の詰みを認めた伊藤七段が投了。勝った高野六段は二次予選まであと1勝です。
水留啓(将棋情報局)