今年も、あの非日常感と背徳感に溢れた“珍イベント”の幕が切って落とされた。JR両国駅のホームで熱燗とおでんが味わえる「おでんで熱燗ステーション」である。

毎年欠かさず通うファンも多いようだが、会場の様子を見ればそれも納得。全国から集まった美酒と最高のロケーションに酔いしれること請け合いのこのイベント、さっそく今年の様子をレポート!

背徳感も酒の肴!「おでんで熱燗ステーション」が愛されるワケ

例年、この時期になると実施される熱燗イベント「おでんで熱燗ステーション」。舞台はJR両国駅の3番線ホームである。

普段、両国駅を利用しない人はご存じなくて当然だが、実はこのホームは、30年前に定期旅客列車の発着が廃止となって以来ほとんど使われておらず、一部では「幻の3番線ホーム」などと呼ばれている隠れ名スポットとなっている。

  • 「全国燗酒コンテスト 2023」で入賞した美酒がズラリと並ぶ

向かい側の1・2番線ホームは通常通り運行しているので、総武線が発着する景色を眺めながら杯を重ねることができるというわけだ(もちろん、向こうからも丸見えである)。こんな珍しいロケーションで熱燗を飲めるなんて、多分、日本広しといえどこのイベントだけなのではないだろうか。

  • 「スターターキット(試飲券10枚、おでん一人前、したらば)」。おちょこは記念に持ち帰りOK!

「おでんで熱燗ステーション」の主催者は「全国燗酒コンテスト実行委員会」で、今年は2月1日から2月4日までの4日間にかけて開催されている。イベントは事前予約制で参加費は3500円。参加費の中には「スターターキット(試飲券10枚、おでん一人前、したらば)」の代金も含まれており、試飲券1枚でおちょこ1杯分の熱燗を飲むことができる。

  • 試飲券1枚でおちょこ1杯分の熱燗が飲める

1時間交代制なので10枚も試飲券があれば十分に満足できるはずだが、追加の試飲券も5枚1000円で販売されているので、呑兵衛のみなさんもご安心を。

  • 紀文食品のおでん。味が染み込みまくっていて心に沁みる

熱燗は常時10種類の銘柄が用意されており、前半の2日間と後半の2日間ではラインナップも変わるという。

  • 「熱燗」は50〜55℃くらいで提供される。これ以上熱いと「飛び切り燗」、もう少しぬるいと「ぬる燗」と、温度によって呼び方も変わるのだとか

「『おでんで熱燗ステーション』で出しているのは、毎年行っている『全国燗酒コンテスト』で入賞した燗酒ばかり。どれも熱燗の状態で美味しく飲んでいただきたいので、このイベントでは冷酒などは提供していません。毎年、大体半分くらいは銘柄が入れ替わっているので、欠かさず参加してくださる常連のお客さまも少なくありません」(全国燗酒コンテスト実行委員会担当者)

今年は暖冬ではあるが、やはりこの時期に屋外で楽しむ熱燗とおでんは格別である。参加者の男性に話を聞いてみると……

「去年も一昨年も参加しました。日本酒も好きだし、電車も好きなので、本当に最高のイベントですね。熱燗はどれを飲んでも美味しいし、いろんな種類が試せるので、毎年来ても飽きません。ゆっくり楽しみたいので、毎回ひとりで参加しています(笑)」

……とのこと。複数人でワイワイ飲むのももちろん楽しいだろうが、確かにひとりで電車を眺めながらまったりと過ごすのもまた最高に違いない。

数年ぶりに参加したという女性に、このイベントの魅力を聞いてみると……

「やっぱり背徳感がたまらないんだと思います(笑)。夕方になると、向こう側のホームには会社帰りの人たちで溢れますし、電車も満員に近くなります。その様子を眺めながら美味しい熱燗を飲む。そんな背徳感、罪悪感がクセになっているという人も少なくない気がします」

……とのこと。なるほど、ものすごい説得力である。1日仕事を頑張って、これから満員電車に揺られて帰ろうとする人が、向かい側のホームで熱燗と日本酒を楽しんでいる人たちの姿を見てどう思うだろうか。自分なら嫉妬に狂うに違いない。美味しいおでんだけでなく、乗客たちの羨望の眼差しまで酒の肴にできるのだ。それは確かにクセになりそうだ。

ちなみに、会場にはこたつ席まで用意されている。すぐ横で総武線がガタンゴトン、ガタンゴトンと走る中、こたつでぬくぬく温まりながら熱々の熱燗とおでんに舌鼓を打つ。こんな非日常感、そうそう味わえるものではない。

当然、イベントは毎回大好評。チケットは発売され次第、あっさりソールドアウトとなるようだ。この記事を読んで「何これ、参加してみたい!」と思った皆さんには本当に申し訳ないが、すでに今年分のチケットは完売済なので、ぜひ来年参加してみてほしい。

  • 本当に申し訳ないが、すでに今年分のチケットは完売済。興味をもたれた方は来年ぜひリベンジを!