おすすめのジャガイモ22選

一口にジャガイモといっても、食感や皮の色、肉色に至るまで、品種ごとの特徴はまったく異なります。そのため、好みや用途によって、ジャガイモの選び方も大きく変わってきます。

それぞれの品種の特徴を解説していきますので、ぜひあなた好みのジャガイモを見つけてください!

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男爵

みんな知ってる、ジャガイモの代名詞的な品種。日本の品種と思われがちですが、1908年に川田龍吉男爵によって外国から導入され、のちにアメリカの品種「アイリッシュコブラー」と判明しました。

目(新芽が出てくるくぼみのこと)が深くて皮がむきにくく、病害虫抵抗性も最近の品種には劣りますが、導入から100年以上たっても圧倒的な知名度を持つ主力品種です。

ゴツゴツした形で、品種名を名乗らずに売っているジャガイモはたいてい男爵いも。「今金男しゃく」「三方原馬鈴薯(ばれいしょ)」など、品質を上げてブランド化に力を入れている地域もあります。おすすめ料理はホクホク感を生かしたじゃがバター、肉じゃが。

キタアカリ

病害虫であるジャガイモシストセンチュウへの抵抗性を持つ食用品種として、日本で初めて育成された品種です。命名の由来は、育成地である北の大地をセンチュウ被害から守るという意味が込められており、希望と明るさを表現したネーミング。

ジャガイモの中でもビタミンCが多い(100gあたり50㎎)のが特徴で、母親の男爵によく似ていますが、皮をむかなくても目が赤いことで見分けられます。

果肉が黄色く、甘みがあるので「栗じゃが」と呼ばれることも。電子レンジ調理もしやすい反面、煮崩れしやすいので注意。おすすめ料理はポテトサラダ、コロッケ。

メークイン

イギリス原産のジャガイモ。名前の由来は、中世ヨーロッパの春の祭り(メーデー)で村の娘の中から選ばれる女王のこと。

大正時代初期に日本に導入され、昭和30年代は関西で人気を博しました。現在も男爵とともに親しまれている、ジャガイモの代表的な品種です。明るいところでは緑化して、有毒になりやすいので注意が必要。冷暗所で保管しましょう。

長時間煮ても形が崩れにくいので、じっくり味をしみこませる料理に向いています。おすすめ料理はカレー、シチュー。

インカのめざめ

ナッツや栗に似た独特のフレーバーがあり、人気のジャガイモです。強い甘みは他の品種とは明らかに異なり、この品種の一番の特徴といえるでしょう。

アンデス地方から導入した品種をもとに育成され、2001年に品種登録されました。イモの形は小粒の卵型で、カロテノイドを多く含む肉色は濃い黄色です。

品種名はジャガイモの原産地・古代文明インカと新しさをイメージして名付けられました。人気のためか、飲食店でも、品種名が前面に出ていることが多いです。芽が出やすいほか、低温下で貯蔵すると甘みが増すという特徴があるので、冷蔵庫での保存がおすすめです。

アンデスレッド

品種登録はされていませんが、直売所でよく見かける品種です。皮は赤色で果肉は黄色。地域によっては春と秋の二期作栽培も可能です。

煮崩れしやすいので、ホクホク感を生かしたり、形を崩す料理に向いています。「アンデス赤」、「レッドアンデス」、「ネオデリシャス」といった名前で呼ばれることも。

インカのひとみ

「インカのめざめ」の開放受粉種子を選抜した品種です。赤皮で、目の部分だけが黄色という、独特の見た目が特徴。インカのめざめと同様に、栗のような風味があり、甘みが強く、食味は優れています。

名前の由来はジャガイモの原産地の古代文明インカと、目の周りの黄色から。なお、「インカ」がつくジャガイモの品種は他にも、「インカレッド」、「インカパープル」、「インカルージュ」などがあります。おすすめ料理は煮物、フライドポテト。

ながさき黄金

「インカのめざめ」をもとに育成した品種で、病気に強く、暖地の二期作に適したジャガイモです。暖地とは年平均気温が15~18℃の地域のことで、四国・九州の大部分および関東・東海・中国の一部が当てはまります。

名前の由来は長崎県で育成されたことと、肉色が黄金色を連想させる鮮やかな黄色だから。長崎県の離島・壱岐では、品質基準をクリアしたものを「壱岐黄金」として販売し、ブランド化を図っています。

グラウンドペチカ

長崎県雲仙市のジャガイモ農家・俵正彦さんが発見した「レッドムーン」の変異株で、2000年に品種登録されました。なお、出願時の名称は「ですとろいや」でした。

皮が紫色で、目の周囲が赤いという、まるでレスラーのマスクのような見た目から、「デストロイヤー」の名称で販売されていることが多いです。

水分が多く、粘り気のあるしっとりした食感と、サツマイモをを感じるようなほどよい甘み・うまみが特徴のジャガイモです。

タワラヨーデル

グラウンドペチカを育種した俵正彦さんが、「アンデスレッド」の中からイモの形が勾玉(まがたま)状の変異株を発見し、2000年に品種登録しました。俵さんは2016年に亡くなるまで、ジャガイモの育種に情熱を注ぎ続け、個人で10種類以上の品種を育成しました。

目がとても浅く、つるんとしていて、煮崩れしやすい性質があります。名前の由来は、アルプス地方で歌われる民族音楽ヨーデルに使われるアルプスホルンにイモの形が似ていることから。
スウェーデンで1970年に育成され、ホクレン農業協同組合連合会が1985年に導入した品種。疫病に強いという特性を持ち、名前の由来は豊作の女神・マチルダからきています。

その年の気候によって肉質が変化する性質がありますが、一般的には舌触りが滑らかで、冷めてもおいしく、サラダにも向きます。イモは小粒のものが多いため、半分にカットして揚げるのがおすすめ。マチルダのポテトフライはうまみとコクが強いため、何もつけなくてもおいしいですよ。

シェリー

2004年に品種登録された、フランス原産の楕円(だえん)形のジャガイモ。鮮やかなピンク色の美しい皮が特徴的で、掘りたてはフルーツのような明るい色ですが、貯蔵することで濃く、暗く変化します。

メークインのようにつるっとした形なので、料理の下処理も簡単。特に煮込み料理に向いています。ただし、作り置きのおかずには不向きという意見も。母国フランスでも人気がある品種だそうです。

シンシア

フランスの育種会社・ジェルミコパ社が育成した品種。日本ではキリンビール系の企業が導入し、2003年に品種登録されました。ジェルミコパ社が作ったジャガイモは他にもあり、ジョアンナ、ドロシー、サッシーなど、女性的な名前が多いです。

母国フランスではすでに流通していないそうですが、日本では家庭菜園用の種芋も出回っています。しっとり系でバターやクリームとの相性がいい他、煮崩れしにくく、煮込み料理に向いています。

農林1号

1943年(昭和18年)、ジャガイモとして日本で初めて農林省(農林水産省の前身)に登録された品種で、登録番号がそのまま品種名になりました。母親は男爵、父親はデオダラという品種です。

全国で栽培できる広い適応性を持ち、春と秋の二期作を可能にした品種で、料理にはもちろん、ポテトチップスのための加工用、デンプン用としても適性があり、オールラウンダーとして活躍しました。

日本で育成された多くの品種の祖先になっており、若干の芋臭さはありますが、どこか懐かしい味がします。

シャドークイーン

キタムラサキの開放受粉種子から選抜され、2009年に登録された品種です。肉色が黒に近い紫であることから影をイメージさせ、メークインのように長い形であることが名前の由来です。

毒々しく見えるほどの濃い紫色は、天然の色素・アントシアニンによるもので、健康志向の高まりを受け、機能性にも期待されています。色による味の違いはそれほどなく、サツマイモの紫芋のような味を想像して食べると、甘さがない、と拍子抜けするかもしれません。

おすすめ料理は、何といっても紫色が映えるポテトサラダやポタージュ。シャドークイーンを使うと、普段のジャガイモ料理がミステリアスなハロウィンパーティー仕様に様変わりしますよ。

ノーザンルビー

サツマイモのような見た目で、肉色もかわいいピンク色のカラフルポテト。ポリフェノールの一種・アントシアニンが含まれているため、このような色になります。

調理後も色が落ちず、スナックなどに利用されることも。味はあっさりしていますが、ほのかに芋臭さもあります。角切りや細切りでベーコンと一緒に料理すると、どれがジャガイモかわからなくなるほど。おすすめ料理はピンク色を生かしたポテトサラダ、ポタージュ。

2021年にノーザンルビーとシャドークイーンの置き換えを目的とした新品種「シャイニールビー」「ノーブルシャドー」が登場したため、今後カラフルポテトの世代交代が起こるかもしれません。

はるか

2009年に品種登録された、白い果肉の品種。きれいな淡ベージュの皮で、目の周りだけが赤く、その特徴的な赤い目から雪解けの春の香りをイメージして名付けられました。

ポテトサラダ専用といわれる「さやか」の血を引き、サラダ加工適性とコロッケ適性がある上、煮崩れしにくいので幅広い料理に使えます。へこみのない滑らかな俵形は皮をむきやすく、学校給食でも使われています。

ベニアカリ

1997年に品種登録された、赤い皮の品種。皮色の紅と、キタアカリと同じくジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種であることを示す「アカリ」が名前の由来となっています。

食用としては、かなりデンプン価が高く、マッシュポテトやコロッケ、いももちに適します。煮崩れしやすいのが弱点。「紅男爵」の名前で販売されていることもあります。

ホッカイコガネ

北海道で育成された、初めての黄肉色のフライドポテト用品種。イモの形が長めで、焦げの原因となる糖の含量が少ないことからフレンチフライに最適です。

名前の由来はもちろん育成地の北海道と、肉色が黄金色であることから。1982年に品種登録されました。登場当時は、フライドポテトの原料に用いられていた品種の肉色は白色だったため、加工業界からの風当たりが強かったそうです。

家庭調理用としてスーパーにも並び、「北海黄金」「ゴールド」「ゴールデンメイク」「コスモメーク」「黄金メーク」などの名で販売されていることもあります。

とうや

寝かせずに食べてもおいしい早生(わせ)品種です。主産地として期待された北海道の道南地方にある洞爺湖(とうやこ)にちなんで名づけられました。果肉が黄色く、気品のある味わいであることから、JAきたみらいなどでは「黄爵(とうや)」の名称で出荷しています。

試験場での食味評価は芳しくなかったのですが、でん粉価の少なさを逆手にとって、滑らかな舌触りと低カロリーをうたい、悪評を払拭(ふっしょく)したそう。クセがないので使いやすいです。おすすめ料理はカレー、千切り炒め。

きたかむい

2010年に登録されたホクホク系の品種で「とうや」を父に持ちます。カムイとはアイヌ語で「神様」の意味。

貯蔵により糖化が進み、越冬させると甘みが大きく変化する品種です。男爵と同じ感覚で使える品種で、おすすめの料理はコロッケ。JAようていが生産に力を入れていて、期間限定で湖池屋とコラボレーションしたきたかむいのポテトチップスを販売しています。

スノーマーチ

2007年に品種登録された、肉色が雪のように白い品種です。

低温貯蔵すると少しずつ熟成され、徐々に深まる甘みと風味を楽しめることから、「雪(スノー)が降る頃から3月(マーチ)に向けておいしくなる」と命名されました。また、「雪国で病害虫に強い品種が行進するように元気に普及するように」という願いも込められています。

JAきたみらいが生産に力を入れていて、こちらも期間限定で湖池屋とコラボレーションしたポテトチップスを販売しています。

ぽろしり

2017年にカルビーポテト株式会社によって品種登録された、まだ新しい品種です。カルビーポテトはポテトチップスでおなじみ、カルビーの原料調達部門が分離独立してできた会社で、品種開発も行っています。

品種名は育成地及び主産地の日高山脈の最高峰である幌尻岳(ぽろしりだけ)にちなみ、アイヌ語で「大きな山」の意味をもちます。ポテトチップス等の加工用に向いた品種ですが、2023年には家庭調理用にスーパーでも販売されるようになりました。

また、ホームセンターなどで売っている、袋で育てるじゃがいも栽培キット「ポテトバッグ」にもこの品種が使われています。

いろいろなジャガイモを楽しもう

さまざまな料理に使えるジャガイモですが、その色や形は千差万別。中でも注目なのが、黄色や紫、赤色の「カラフルポテト」と呼ばれる品種たち。これらの品種を使うと、いつもの食卓とは違った雰囲気になって楽しいですよ。

また、ジャガイモはその品種ごとに、用途の向き不向きもあります。この記事を参考に、さまざまな品種のジャガイモを楽しんでみてください!

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