■オンロードでの快適性に舌を巻く
ようやく実現したレクサス新型GXの公道試乗の舞台はアリゾナ。1月だというのに眩しい陽光の下、改めて対面したのは北米仕様GXに用意される3つのグレードだった。
まず試したのはイメージリーダーのGX550“OVERTRAIL”である。足元に18インチ、外径830mmのオールテレインタイヤを履き、フェンダーエクステンションの追加でボディをワイドに。前後スタビライザーを電子制御するE-KDSSを組み合わせて、プレミアムオフローダーとしての資質を最大限に引き出したモデルだ。
一般道では、まずその快適性の高さに舌を巻いた。E-KDSSは通常時はスタビライザーをフリー近くまで緩めてサスペンションのトラベルを確保。進化したフレーム構造のGA-Fプラットフォーム、しっかりと強化されたボディ、電子制御ダンパーのAVSなどが相まって、路面の凸凹をスムーズに受け流す。
それでいて電動パワーステアリングはすっきりとした手応えを示し、コーナリング時の反応も正確。軽やかな身のこなしを見せるのだ。
ゴツいパターンのタイヤが直進性、乗り心地、リニアリティなどあらゆる面で質の高い乗り味を実現しているのにも驚いた。トーヨータイヤと共同開発のこのタイヤ、トヨタの風洞なども使って開発されたという。
静粛性にも触れないわけにはいかない。ロードノイズも低いが、風切り音もよく抑えられている。スクエアなフォルム、角度の立てられたフロントウインドウなどの弊害はなく、きわめて高い静粛性を実現しているのだ。
■そして豪快、余裕のオフロード性能
全車共通の3.5L V型6気筒ツインターボエンジンは最高出力354PS、最大トルク650Nmを発生する。LX600用のそれより小型のターボチャージャーを使うことでレスポンスを向上させており、低回転域からいつでも欲しいだけのトルクを即座に取り出せるドライバビリティが光る。さらに走行モードで「SPORT S」、「SPORT S+」を選べばフロントスピーカー、リアゲート内のウーファーからのサウンドも加わって、加速感を豪快に演出してもくれるのである。
続いてはオフロード走行へ。昨秋、富士スピードウェイで開催された「LEXUS SHOWCASE」で、その片鱗はうかがっているが、今回のコースは桁違いのハードな設定。しかしながら新型GXは、サスペンションストロークの長さ、E-KDSSがもたらす接地性にクロールコントロールなどの最新デバイスが相まって、片輪が浮き上がるような状況だろうと常にトラクションを確保。こちらが車体の傾きに「無理無理!」と思う場面も、余裕で走破してみせたのだ。
オンロードでのフレーム構造の車体であることを忘れさせる洗練された走り、そして快適性からは、想像できないほどの走破性はまさしく期待以上。どんな舞台でも、まさにレクサスらしい上質な走りを実現していることに、ただただ唸らされたのである。
■マツダ ロードスターのように軽やかに!?
続いて乗ったGX550“LUXURY+”は、3列シートを備えるインテリア、E-KDSSの付かないシャシーにAVS、大径22インチのオールシーズンタイヤを組み合わせる。扁平率の高いタイヤにも関わらず、ふだんの乗り心地は悪くなく、よりシャキッと引き締まった走りを楽しめる仕様だ。
ワインディングロードでは、より一体感の高い走りを披露する。一方で道が悪くなってくると、やや路面からの入力が強まる感があるが、もっともスタイリッシュで洗練されたグレードはと聞かれたら、このGX550“LUXURY+”になる。
最後に乗ったのはGX550“PREMIUM+”。AVSは未装備で通常の固定減衰力のダンパーを持ち、オールシーズンタイヤは欲張らない20インチサイズ。要するに、もっともすっぴんに近いGXである。
しかしその走りは想像以上で、凸凹路でなければ乗り心地は上々。サスペンションがしなやかにストロークして、軽やかに走ってくれる。電子制御系のアイテムは使われていないが、かえって素のすっきりとした味わいが好印象。YOKOHAMAのGEOLANDER X-CVというタイヤ選択も良いのだろう。例えるならマツダ ロードスターのSグレードのような、ひらり軽快な乗り味に仕上がっていた。
本格オフローダーであることにこだわり、今までのレクサスにはない文脈で描き出された直線基調でスクエアな外観だけでも興味をソソった新型GXだが、実際にステアリングを握って、その姿かたちは伊達じゃないなと大いに感心させられた。レクサスの世界をさらに拡大する存在と言える新型GX。価格を含めた日本仕様の詳細、早く知りたいところだ。
〈文=島下泰久〉