第82期A級順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、8回戦計5局の一斉対局が1月31日(水)に東西の将棋会館で行われました。このうち、豊島将之九段―斎藤慎太郎八段の一戦は142手で斎藤八段が勝利。激戦の終盤を制して残留に望みをつなぎました。

挑戦/残留争いの大一番

豊島九段は6勝1敗で首位を独走。自身が勝ってライバルの菅井竜也八段が敗れた場合はこの日に挑戦が決まります。豊島九段の先手番で迎えた本局は矢倉の出だしへ。対する斎藤八段が中住まいの布陣を急いだのは角筋を生かした仕掛けを目指す、近年流行の構えです。

豊島九段が中央からの仕掛けを目指すと斎藤八段は左桂を跳ねて徹底抗戦。争点を消してから地下鉄飛車の要領で1筋逆襲を目指す狙いで、実戦はここから盤上右方での長い制空権争いに入ります。豊島九段が後手陣にと金を作り、形勢互角のまま戦いは一段落。

順位戦の魔境

戦いが深夜に突入すると形勢の針は徐々に豊島九段に触れ始めます。2枚のと金で後手玉を左辺に追い込んだのが単純ながら厳しい攻め。続いて打った飛車取りの香が確実な2手スキとなるため、逆転を目指す斎藤八段としてはスピード感のある反撃が求められます。

両者一分将棋のなか、角を飛び出して王手をかけたのが斎藤八段渾身の勝負手。対して先手は歩を打って守る手が正しく、その後20手近く正確に受け続ければ逃げ切っていたという結論に。実戦で豊島九段の選んだ香合いに対しては長手数ながら即詰みが生じています。

終局時刻は翌1日0時52分、豊島九段が投了。勝った斎藤八段は3勝5敗で残留に望みをつなぎました。6勝2敗の豊島九段は次戦菅井八段との直接対決に勝てば無条件で挑戦決定です。最終9回戦の一斉対局は2月29日(木)に静岡県静岡市「浮月楼」で行われます。

水留啓(将棋情報局)

  • 斎藤八段にとって佐々木勇気八段戦は勝てば残留、負ければ降級の大一番(写真は第79期名人戦第1局のもの 提供:日本将棋連盟)

    斎藤八段にとって佐々木勇気八段戦は勝てば残留、負ければ降級の大一番(写真は第79期名人戦第1局のもの 提供:日本将棋連盟)