一般向けのデジタルカメラでは初めて、全画素のデータを一気に読み出すグローバルシャッター方式のCMOSセンサーを搭載したソニーのフルサイズミラーレス「α9 III」がついに発売になりました。落合カメラマンも、シリーズで定評のあるAF性能や速写性能を継承しつつ、一切の歪みのない撮影やフラッシュの全速同調が可能なα9 IIIに、まず大きなインパクトを感じていました。
ついに現れたグローバルシャッター機に感じたインパクト
天下のソニーさんも、そろそろいい加減に息切れしてくるんじゃないのぉ? なんてイジワル半分、イジり半分で思っていたこの頃だったのだけど、ととととんでもなーいっ!! ってな実感が、そのまま「α9 III」に対する率直な第一印象になってしまった。こりゃ、ヤバいっすよ。ナニがって、ワタシのフトコロが、そして他メーカーの苦虫を噛みつぶしたような顔が見えそうでヤバいかも~ってハナシです。
α9 IIIの世間一般が認識するところの目玉は、やはりグローバルシャッター方式の採用ということになるのだろう。レンズ交換式デジタルカメラとしては世界初となる(2023年11月時点)この偉業は、「いつか出る、そのうち出る、もうすぐ出るに違いない!」と思い続けてきたギョーカイ関係者、およびコアなユーザー層には、口角が高角度で吊り上がるのを抑えきれない“思わずニヤリ案件”であることも間違いない。
ただ、「グローバルシャッターは歪まないのがいいんだよね」と言われても、実感としてピンと来る人は、実際には少ないのかも? ローリングシャッターによる像の歪みは、たしかに一度、気になり出すと、とことん気になり続けてしまうものだけど、そこまで気にするのは日常から動体に対峙している人、あるいはアクティブに動きながらシャッターを切る人に限られるのが現実。しかも、最近のミラーレス機、とりわけ各メーカーのハイエンドモデルは、その多くがすでに「ローリングシャッターでありながらローリングシャッター歪みを“ほぼ”解決している」のも、もうひとつの現実ではある。
とはいえ、ここでネガティブな宿命と完全に手が切れたのは、撮影に関わる大きな制約が解消されたという意味において大変に喜ばしいことであるのは確か。また、同様の意味において、私はフラッシュの全速同調に、より大きなインパクトと可能性を感じており、今回さっそく試してみようと、個人所有のソニー製フラッシュ「HVL-F45RM」を持ち出してみたら・・・おおっと、コイツはグローバルシャッター方式には未対応だぁぁ!(泣) α9 IIIの発売に合わせ、グローバルシャッター方式に対応するアップデーターが提供されたフラッシュは、「HLV-F60RM2」と「HVL-F46RM」の2機種。なんでボクの「HVL-F45RM」は対象外なの?(涙)
グローバルシャッターの採用で損なわれたものはないのか
グローバルシャッター方式採用とはいっても、基本「フルサイズの2400万画素」なので、画質的なバランスはバッチリだ。おおよそどんな場面においても、きわめて精細な仕上がりが得られると思って間違いない。
ただし、常用感度域はISO250~25600(拡張ISO51200)と、α9IIのISO100~51200(拡張ISO102400、電子シャッター時ISO100-25600 拡張下限ISO50)との比較では若干、狭域化。なかでも、ほかのαが軒並みISO100(一部モデルはISO80)を確保している最低感度には、ナニやら先祖返りのような感覚も生じることになった。まぁ、でも、そこは初モノ、まだまだ伸びしろを携えての登場であると受け止めるべきなのだろう。なお、ISOマニュアル設定の拡張領域でISO125、160、200の設定は可能だ。
高感度側は、α9 II比で1段ほど弱いと告白しているかのような常用感度域ではある。でも、そこはやはりバランスに優れるフルサイズの2400万画素機だし、前掲の通り電子シャッターでの比較ではISO25600並びのスペック。重箱の隅をつつかなければ、大きな不満を抱くことはないハズだ。
α9 IIIを試用して、これは欲しい!と感じた
さて、残りは後編で・・・ということになるのだけれど、出し惜しみするほどのこともないので、ここで早くも結論めいたことを独り言のように呟いておきたいと思う。
今回、限られた期間ではあるもののα9 IIIを使ってみた結果、実は私の中でひとつ大きな変化が生じることになっている。これまで、α9シリーズにはまったく惹かれてこなかったのに、α9 IIIのことはナゼかすんなり素直に欲しい!と思ってしまったのだ。つまり、ワタクシゴトに限った話をすれば、新たに登場したα9 IIIは、α9シリーズで初めて欲しくなったα9だったということ。これ、私にとっては、けっこう大きな事件だったりするのです。いやはや、なんとも、困ったもんですなぁ。。。