不妊治療患者をはじめ不妊・不育で悩む人をサポートするセルフサポートグループ「NPO法人 Fine」は、2023年6月1日~8月15日に実施した「仕事と不妊治療の両立に関するアンケート2023」の結果を1月24日に発表した。同調査は、不妊治療・不育治療を受けている(受けたことがある)1,067人を対象に、WEBアンケート形式で実施された。

なお、本調査の回答者の性別は、女性が98%、男性が2%、年齢は30歳代が54%、40歳代が33%、20歳代が6%、居住地は、関東地区(1都3県)在住者が40%であった。

  • 不妊・不育症治療の状況や期間、仕事との両立など

対象者に不妊や不育症治療の状況や期間、仕事との両立について尋ねたところ、両立が困難で働き方を変えた人(治療経験者全体の39%)の中で、「退職」(39%)が最も多く、次に「転職」(16%)、「休職」(14%)という結果になった。

  • 不妊・不育症治療を両立している(していた)時の就業形態・業種

また、就業形態別の「退職」を選んだ人の割合は「個人業務請負」(80%)が最も多く、次に「派遣社員」(60%)、「パート・アルバイト」(46%)となり、業種別の「退職」を選んだ人の割合は、「建設業」(50%)、「教育、学習支援業」(45%)、「卸売業、小売業」(44%)であった。

  • 不妊・不育症治療の期間と働き方を変えたことがあるか

仕事と不妊や不育症治療との両立が困難で働き方を変えたことがあるかどうかの質問への回答を不妊や不育症治療の期間別で見てみると、働き方を変えたことがある人の治療期間で最も多かったのは「10年以上」(84%)、次に「5年~10年未満」(59%)、「2年~5年未満」(43%)であった。また、働き方を変えたことがない人の治療期間で最も多かったのは「1年未満」(85%)、続いて「1年~2年未満 」(68%)、「2年~5年未満」(57%)という結果に。

  • 働き方を変えたことがある人の職業形態・業種

また、上記の質問で働き方を変えたことがあると回答した人を就業形態別で見てみると、最も多かったのは「内職」(100%)、次いで「パート・アルバイト」や「会社役員」(ともに67%)、「嘱託・契約職員」や「派遣社員」(ともに47%)となった。また、働き方を変えたことがある人が働いている(いた)会社等の業種別に見ると、最も多かったのは「運輸業、郵便業」(52%)、続いて「農業、漁業、林業、水産業」(50%)、「医療、福祉」(48%)であった。

  • 職場で「不妊や不育症治療をしている」ということを周囲に話しているかどうか

職場で「不妊や不育症治療をしている」ということを周囲に話している人は65%であった。

  • 職場で「不妊や不育症治療をしている」ということを周囲に話しづらく感じるかどうか

一方、職場で「不妊や不育症治療をしている」ということを周囲に話しづらく感じている人は81%という結果になった。

  • 職場で「不妊や不育症治療をしている」ということを周囲に話しづらい(話しづらかった)理由

その理由で最も多いのは、「不妊や不育症であることを伝えたくない」(68%)。次いで「妊娠しなかった時、職場にいづらくなりそう」(57%)、「不妊や不育症治療に対する理解が少なく、話してもわかってもらえなさそう」(53%)であった。

  • 職場に不妊や不育症治療をサポートする制度等があるかどうか

  • 職場に不妊や不育症治療をサポートする制度等があるかどうか(業種・サポート例)

職場に不妊や不育症治療をサポートする制度があると回答した人は全体の20%と低かった。また、中でも仕事をしながら不妊や不育症治療をしたことがある人の職場に、不妊や不育症治療をサポートする制度等がある業種は「電気、ガス、熱供給、水道業」(43%)が最も多く、「教育、学習支援業」(34%)、「運輸業、郵便業」(33%)となっている。

  • 職場の不妊や不育症治療をサポートする制度を使ったかどうか

  • 職場の不妊や不育症治療をサポートする制度を使わなかった(使おうと思わない)理由

職場に不妊や不育症治療をサポートする制度等があっても「使った(使おうと思う)」人は60%(Q20)。「使わなかった(使おうと思わない)」(40%)と回答した人の理由の中では、「不妊や不育症治療をしていることを知られたくない」(63%)が最も多かった。

  • 職場にどのようなサポートが欲しいか

不妊や不育症治療をサポートする制度で職場に望むことは、「休暇・休業制度(不妊や不育症治療が病欠・休職、有給扱いにされるなど)」(77%)が最も多く、次いで「就業時間制度(不妊や不育症治療による時短・フレックスタイム、正規からパートタイムなど雇用形態の一時的な変更が認められるなど)」(72%)、「不妊や不育症治療費に対する融資・補助」(52%)であった。

  • 在宅ワークによる不妊・不育症治療への取り組み方の変化

在宅ワークができることにより、不妊や不育症治療への取り組み方に変化が「ある」人は90%、「ない」人は10%であった。

在宅ワークができることにより治療への取り組み方に変化が「ある」人からは、「仕事と治療の時間調整をしやすくなった」(84%)、「リモートワークだったので、病院の待ち時間に仕事の対応ができた」(17%)、「採卵後や服薬の副作用があった時など、体調不良の際も自宅で体を休めながら仕事ができた」や「精神的な負担が減った」(ともに16%)などの声が上がった。