阪神・才木浩人 (C)Kyodo News

◆ オフに取り組んだ肉体改造が成功

「一番」になるためにストイックに歩んできた道のりが、今年一気に加速するかもしれない。

 1月、鳴尾浜球場に姿を見せたタイガース・才木浩人の体は一回りサイズアップしているように見えた。

 聞けば、オフに取り組んだ肉体改造が成功したそうで体重はキャリア最重量となる92キロ。ウエートトレーニングや食事で88キロから4キロの増量を遂げた。

 ただ、重要なのは体重ではない。

「フィジカル的にちょっと強くしたいっていうのがあったので。体重どうこうというよりは、ウエートした結果。筋肉量とかがついてきている結果だと思う」

 20年に受けた右肘のトミージョン手術から復帰2年目となった昨年は開幕からローテーションを任され自己最多を更新する8勝をマーク。規定投球回には到達できなかったが防御率は1.82と出色の数字を記録した。

 ハイライトと言えるのが、佐々木朗希との投げ合いとなった6月4日のマリーンズ戦。プロ初完封で令和の怪物に投げ勝って見せた。

◆ 「まだまだフィジカル的に弱く、強くないって感じだった」

 常時150キロを超える直球と上から投げ下ろす落差あるフォークが武器。“フィジカル負け”したような場面は3月の侍ジャパンとの強化試合で大谷翔平に一発を食らった場面ぐらいのように感じたが、本人が課題としているのは1年間、ローテを投げ切るという部分での「フィジカル」だった。

 昨年も夏場に疲労が抜けにくい時期が続いたという。手術明けとあって登板間隔を空けるなどの配慮もあった中でも1年間戦う難しさ、壁を感じざるを得なかった。

「(増量は)昨年投げた現状からもっと良くなるためには、って考えたところで。まだまだフィジカル的に弱く、強くないって感じだったので」

 中6日の通常の登板間隔を守りながら、長いシーズンをどう乗り切っていくか。球速アップや球種を増やすことよりも先に、まずは土台を大きくすることに着手した。

 若手随一の“練習の虫”。昨年12月のハワイ優勝旅行でも現地で毎日、トレーニングを敢行。「練習したかったので本当は行くつもりはなかったんですけど。親が(ハワイに)行く気満々だったので」の言葉は本音だろう。

 今オフも「自分のやりたいこと、良いと思う練習をするため」専属トレーナーを付けて単独で自主トレを行っている。才木に取材しているといつも、視線は対戦する打者というよりも自分自身に向けられることが多い。己を高めることにひたすら注力し、その結果、敵を圧倒する。

「昨年は優勝っていうことができたと思うので今年は連覇できるように。自分が中心選手としてやっていけるように。1年間ローテを守っていけるように頑張りたい」

 間もなく始まるキャンプでは大きくなった体の操作性を高めて2024年の投球フォームを完成させる。

 今年も史上最高の「才木浩人」を追い求めていく。

文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)