明大・宗山塁 (C)Kyodo News

◆ 白球つれづれ2024・第5回

 プロ野球のキャンプインまで、あとわずか。名だたるスター選手を差し置いてこの春、最も注目を集めているアマチュアがいる。明大の宗山塁選手だ。

 きっかけは、本年3月に予定される侍ジャパンの対豪州強化試合(3月6、7日、京セラドーム)に向けてメンバー構成を進める中で、アマの宗山がリストアップされていることが明らかになったことからだ。

 今では「侍ジャパン」の名が定着した野球の日本代表がオールプロによる編成となったのは2003年のアテネ五輪予選以降。以来ドラフト指名後に代表入りしたアマ選手はいるが、宗山の場合は今春に大学4年を迎える。いわば“飛び級”の侍ジャパン入りだから注目度は極めて高い。

 1月6日の明大初練習には、すでに7球団10人のスカウトが集結している。ソフトバンクや日本ハムは今秋ドラフトでの1位指名候補を公言、他球団の関係者も「複数球団の競合は確実」と口を揃える逸材である。

 広島・広陵高時代から頭角を現すと、明大では1年春から遊撃のレギュラーに定着している。同年秋の東京六大学リーグ戦では打率.378のシュアな打撃と堅実な守備で早くもベストナインを獲得。3年秋までの通算でも安打数は94本を数え、明大の先輩である高山俊選手(前阪神、今季からイースタン加盟のオイシックス新潟)の持つ131安打のリーグ最多安打記録も射程圏に捕えている。

 175センチ、79キロの体躯は大型化の進む現代野球にあって、決して恵まれた部類ではない。しかし、走・攻・守三拍子揃った野球センスは際立っている。中でも、プロが一目置くのは守備だ。広い守備範囲に加えて、強肩で正確なスローイング。侍ジャパンの井端弘和監督は現役時代に中日で名遊撃手として鳴らした名手だが、宗山の大学1年時から非凡な才能に注目。大学代表候補合宿を視察した際には「群を抜いている」と最大級の評価を与えている。また守備の名手としてプロナンバーワンの源田壮亮選手(西武)も、その映像を見て「巧い!」と太鼓判を押している。

 ショートと言うポジションは、守備の要でありチームの生命線とも言われる。宗山の場合は、プロに入団すれば、その先10年は安泰と言われるほどの大器だから井端監督に選出の迷いはなかったのだろう。

◆ 侍ジャパン“世代交代”の中心選手としての期待も

 昨年のWBCで世界一に立った侍ジャパンは、新たな強化策として、この先10年を見据えた長期のチーム作りを決定している。いつまでも大谷翔平やダルビッシュ有選手らのメジャーリーガーばかりに頼っているわけにはいかない。新たな人材育成に舵を切ったことで、プロだけでなくアマチュアの有望選手にも目を向け始めたわけだ。その筆頭格が宗山となる。

 ネクスト侍ジャパンを見据えた時に遊撃のポジションは特に若返りが求められる。前述の源田も今年で31歳。その前の正遊撃手だった巨人・坂本勇人選手も故障などで三塁へのコンバートが決まっている。そこで井端監督が期待を寄せるのがオリックスの紅林弘太郎や広島の小園海斗選手ら。加えて宗山が頭角を表せば不安材料は一気に解消される。

 この春からは明大の主将に就任する宗山。甘いマスクも手伝ってスター性は十分。もちろん本人は春・秋のリーグ戦と全国選手権など主要大会も含めた「四冠」を目標に掲げ、その先のプロ入りを目指している。

 明大では昨年まで14年連続のドラフト指名が続いている。過去には山﨑福也(今季から日本ハム)、佐野恵太(DeNA)、森下暢仁(広島)各選手ら偉大な先輩も多い。昨年のドラフトではロッテ1位指名の上田希由翔ら3選手がプロ入りを果たしている。今年も宗山以外でも最速154キロ右腕・浅利太門投手らがドラフトの指名を狙う。

 今や「ドラフトの星」を飛び越して、井端ジャパンの秘蔵っ子であり、秘密兵器にも成り得る男。3月のジャパンデビューが待ち遠しい。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)