ケンコーマヨネーズは、「2024年春夏新商品発表会」を開催し、同社が2024年2月1日に発売する、外食・中食、ベーカリーなどの各種業態および一般家庭でも使えるサラダ総菜類、タマゴ加工品、マヨネーズ・ドレッシング・ソース類、ア・ラ・カルトなどの新商品全10品を発表した。
アップサイクル商品にも注力
発表会に先立ち、ケンコーマヨネーズ 執行役員 経営企画本部 本部長の謡田能孝氏が能登半島地震について言及。日本赤十字社を通して義援金を拠出することや、今後も被災の状況に応じて、行政、業界団体と連携しながら適切な支援活動に努めていく旨を語った。
そして、同社の2024年3月期上期における損益計算書をもとに決算概要を解説。2024年3月期第2四半期の業績は、連結売上高43,763百万で対前年同期比+7.4%、連結経常利益847百万円で対前年同期比+31.8%となるなど、新型コロナウイルス感染症が5類に移行し経済活動が正常化に向かう中、外食産業やインバウンド需要の回復にあわせて売上高も回復し、前年度からの原材料価格やエネルギーコストの高騰に対しても、価格改定や経費の圧縮などによって収益改善を進めたことで増収増益を記録している。同社の中期経営計画「KENKO Transformation Plan」の最終年度となる今期は、価格改定、商品の統廃合、徹底した効率化の3つを重点課題に、利益回復を最優先課題に掲げ、目標達成のために全社一丸となって施策を推進しているとした。
新商品の開発、販売についても、中期経営計画の目標達成を見据えて進捗。今回発表される新商品においても、中期経営計画で掲げられている4つのテーマ「B to B to C」「イノベーション」「構造改革」「グローバル」に加え、「サステナビリティ」指針に基づきながら、食市場や時代のニーズに応え、サステナブルな社会の実現を目指し、社会課題の解決に繋がる商品がラインナップされているという。
「現在、食を取り巻く環境はかつてないほどのスピードで変化しており、2024年もフードサービス業界に取りましては、物流問題、持続可能なサプライチェーンの構築、深刻化する人手不足など、課題は多い」という謡田氏だが、大きな転換期の1年になると捉え、「今後も時代の変化を見極め、市場やお客様のニーズに迅速に対応した商品、サービスをお届けすることで、企業価値の向上に努めてまいります」と今後の動向を示した。
続いて、ケンコーマヨネーズ 取締役 商品開発担当の立花健二氏が、新商品の概要と商品開発の取り組みについてを紹介。今回の注目商品となる新ブランド「WABI-DELI(わびでり)」は、「見つめなおす、和食のちから」をテーマに、日本各地で親しまれている食材、食文化をもとに、野菜の旨味・甘味を活かした味わいと、素材の色を活かした豊かな彩りにこだわった商品となっており、これまで同社のラインナップにおいて和惣菜は冷蔵中心だったが、「WABI-DELI」は冷凍食品として展開される。
持続可能な社会を目指すための取り組みとして、同社グループでは、サステナビリティ方針に基づき、重要課題の取り組みテーマとして、食品ロスの削減を掲げている。昨年7月に発売された新シリーズ「FDF Plus」は、同社のロングライフサラダとしては初めて冷蔵で賞味期間90日を実現。賞味期間が長いことで、使える期間が長くなり、在庫管理もしやすく、食品ロス削減に繋がることから、今回も新たに新商品を追加し、さらなるラインナップの拡充を図っていくとした。
また、同社グループでは、本来食べられるにも関わらず、使われていない食材を有効活用するアップサイクル商品にも注力。連結子会社であるダイエットクックサプライでは、規格外の野菜を活用した福山工場長シリーズなどを手掛けているが、ケンコーマヨネーズ本体としては初めて、キャベツを丸ごと使った商品や、宮城県産元茎わかめを使用した商品が展開される。「アップサイクル商品は、普段の暮らしの中で手軽に環境負荷の低減や食品ロスの削減に貢献できる選択肢の一つ」という立花氏は、「食を通じて世の中に貢献するという弊社の企業理念に沿った新しい美味しさを提供していく」と続けた。
そのほか、小容量形態のスイーツ商品は人手不足による簡便化のニーズに対応。たまご加工品の新しいジャンルとなる商品では、日頃不足しがちな栄養素の補給を助け、高まる健康志向にも応え、「B to B to C」として、業務用ルートだけではなく、コンビニエンスストア、ドラッグストア、量販店、通販サイトなどで広く提案していきたいとの考えを示した。
2024年春夏新商品は、中期経営計画「KENKO Transformation Plan」の4つのテーマとサステナビリティ方針に基づきながら、社会課題や食を取り巻く市場の課題解決に寄与する商品。「社会課題への対応は今や企業価値を高める重要な位置づけとなっており、企業にとっては必須」との考えから、「弊社、商品開発本部は常にトレンドや世の中の動きなどの最新情報を収集し、市場やお客様の変化を的確に捉え、さらに一歩先を進んだアイデアでご満足いただける商品、メニューを提供し、社会に貢献してまいります」との意気込みを明かした。
●2024年春夏新商品のラインナップ
ケンコーマヨネーズが2月1日から発売を開始する2024年春夏新商品のラインナップは全10品目となっており、その詳細については、ケンコーマヨネーズ 商品開発本部 企画開発部 部長の五十嵐大介氏によって紹介された。
■「WABI-DELI 花がんもの含め煮」
■「WABI-DELI ひじきと打ち豆の煮物」
「WABI-DELI(わびでり)」は、サステナブルな社会のために日本の食文化を見つめなおし、その魅力を存分に発揮した商品として開発された新ブランドとなっている。日本の伝統的な食文化である「和食」が2013年にユネスコ無形文化遺産に登録され、昨年12月で10周年。自然を尊重し、栄養バランスの取れた食生活を支える和食文化の継承は重大な課題であり、海外でも認知が拡大し、高い注目を集めている。
プラントベースフードの広がりや環境問題、健康志向など、食の多様化が進む中、穀物や野菜を活かした料理が多く受け継がれてきた和食は、普遍的な現代の食生活にも根付いており、「この伝統的な日本の食文化を通じて、サステナブルな社会に貢献していきたいという考えのもと『WABI-DELI』シリーズが開発された」という。
「WABI-DELI」シリーズは、日本各地で親しまれている食材や食文化に着目しており、「素材の色を活かした豊かな彩り」「野菜の旨味・甘味を活かした味わい」が特長。使い切りが容易な450g形態で、賞味期間が冷凍で365日と長く、いつでもできたての美味しさを味わうことができる。
「WABI-DELI 花がんもの含め煮」は、福井県で親しまれている「がんもどき」に注目。ふんわりとした食感で、だし汁をたっぷりと含み、噛んだ瞬間に口いっぱいに広がるのが特長となっており、「WABI-DELI」ならではのこだわりとして、見た目にも楽しめる可愛らしい「花がんも」が使用されている。きび砂糖や本みりんを使用し、植物性のみでもコク深い味わい。シンプルな原材料にこだわり、素材の味を活かしている。
一方、「WABI-DELI ひじきと打ち豆の煮物」は、北陸地方や滋賀県、東北地方で親しまれてきた「打ち豆」に注目。「打ち豆」は、水に浸した大豆を石臼でつぶして乾燥させた、保存食として重宝されてきた食材で、打ち豆とひじき煮を合わせたものに、にんじん、油揚げ、たけのこを加え、具だくさんかつ彩り豊かに仕上げられている。
■「塩キャラメルバターソース」
ケンコーマヨネーズが製造するバターソースの年間売上は、2020年で約4億円、2022年では5億2000万円超と、年々増加傾向。昨年2月には、これまで同社であまり扱っていなかった甘系のソースとして「ハニーバターソース」を発売するなど、ラインナップの拡充が行われてきた。
「塩キャラメルバターソース」は、キャラメル×バター×岩塩によるやみつきになるテイストが特長。2000年代初頭に、しょっぱい塩と甘いスイーツをかけあわせた塩スイーツが台頭し、その代表格となる塩キャラメルテイストは、ブーム以降も関連商品も毎年発売されるほど定着している。この人気のテイストを調味のソースとして活用できないかというのが開発のきっかけとなっており、本格的なカラメルの香ばしさとほろ苦さを持つキャラメルペーストを使用し、甘さの中にほろ苦さが後を引く設計となっている。
冷やしても固まらず、バターを溶かす手間やキャラメルのべたつきがなく、冷蔵庫から出してすぐに使用できるハンドリングの良さも特長で、和えることで素材に照りつやを与える点も注目ポイント。料理の見た目をワンランクアップさせるため、美味しさだけでなく高付加価値メニューとして提供することも可能になるという。
■しっとりたまごのケーキ(ココア味・抹茶味)
コロナ禍を経てもなお健康志向の高まりによって拡大を続ける“たんぱく質補給食品”市場だが、プロテインパウダーやサプリメントを中心としたアスリート向けだけではなく、お菓子や飲料、ゼリーなど一般消費者でも手軽に食べられる商品の需要が特に伸びてきており、10年前と比較すると約4倍の売り上げになるなど、今後の需要も期待できる分野となっている。
そして、たんぱく質のみならず、ほかの栄養素入りを謳っている商品も数多く、今回の商品設計にあたり、+αの栄養素は必要か、また入れるとすればどの栄養素かをアンケートで調査したところ、カルシウムの割合がもっとも多く、特に30~60代の幅広い世代の主婦層や会社員層からの支持が集まったという。
また、現在の市場を固形タイプと液体タイプに分けたところ、プロテインバーやクッキー、チョコレートなどの固形タイプは、満足感は得られるが硬く、一方、飲料やヨーグルト、ムースなどは、柔らかくて食べやすいが満足感はあまり得られないというイメージとなっている。そこで同社は、満足感がありつつ、しっとり柔らかく、子どもから大人まで、どの世代でも食べやすく、かつ手軽に栄養補給ができるスイーツの開発に着手した。
「しっとりたまごのケーキ」は、どこでも手軽に栄養補給ができる商品形態で、1パック100g(4切れ入り)あたり、たんぱく質12g、カルシウムを320mgを摂取できる。さらに、やわらかくしっとりとした食感と満足感が特長で、バウムクーヘンや蒸しパンのようなイメージに仕上がっている。味付けは、馴染みのあるココア味と抹茶味をセレクト。抹茶は静岡県産茶葉が使用されており、静岡富士山工場で製造する地産地消商品となっている点も注目したい。
■「FDF Plus ごぼうサラダ」
ごぼうサラダは同社が1986年に業界で初めて開発した、発売当初から同社を代表するアイテムのひとつで、低温殺菌技術を使用することによって、ごぼうに風味が馴染み、食感が残り、日持ちがすることが大きな特長となっている。
今回新たに発売される「FDF Plus ごぼうサラダ」は、同社が昨年7月に発売した、冷蔵90日の長期賞味期間と長期の開封保証で食品ロス削減を目指す「FDF Plus」の第2弾となる商品。金ごまの香りが柔らかく香る「アレンジ自在なシンプルな味付け」が特長で、液だれしづらい適度な粘性をつけることによって、時間が経っても盛りたてのようなきれいな状態を維持することができる。
そして、美味しさをそのままに、製造日+90日の賞味期間を実現。食品ロスの削減に寄与する商品となっている。
■「5種ハーブ香るキャベツマリネ」
食品ロスの削減はSDGsの観点などから日本を含めた世界の課題となっているが、同社グループも持続可能な社会の実現に向け、「環境」「社会」「健康」に貢献するサステナビリティ方針を掲げており、その重要取り組みの課題のひとつとして食品ロスの削減に取り組んでいる。
その活動の中で、食べられるのに廃棄されてしまう食材や規格外品に付加価値をつけることで新たな食品に生まれ変わらせるアップサイクルを推進。現在同社では、じゃがいもの皮をポテトピール(飼料)にする取り組みが行われている。
「5種ハーブ香るキャベツマリネ」も、そんなアップサイクル商品のひとつで、同社の関係子会社にて、カットサラダを製造する際にキャベツの芯が1日あたり約150kgほど廃棄されているという現状に着目。そのまま食べると硬い芯を、マリネにすることで、シャキシャキとした食感や甘味という特長を引き出している。なお、芯の部分が多くなると、エグみのような独特の風味が気になるため、食感と風味が良くなる葉と芯の配合比にもこだわっている。
またキャベツのほかに、にんじん、赤ピーマン、黄ピーマン、そしてきゅうりを加えることで鮮やかな彩りに。白ワインビネガーのすっきりとした風味に、5種のハーブ(タイム、セージ、パセリ、ローレル、ローズマリー)とスパイスをアクセントに使用することによって、全体に深みのあるマイルドな味に仕上げられている。
■「国産しょうが香る宮城県産元茎わかめサラダ」
■「コリッとおいしい冷凍宮城県産元茎わかめの中華仕立て」
続いてもアップサイクル商品で、同社グループは宮城県女川町にある鮮冷と、地方創生に向けたアップサイクル商品を共同開発しており、これまでに、ホタテの貝ひもと同社のガーリックバターソースをあわせた「ホタテ貝ひものガリバタ醤油」を共同開発している。
宮城県の漁業関係者に食品ロスについてヒアリングをしたところ、「元茎わかめ」が話題に。「元茎わかめ」は、めかぶの上30~50cmほどの長さの部分で、硬い食感と独特の風味から食用としてはほとんど利用されず、ウニや牡蠣の餌として海にまかれていたが、今後の海産資源の減少もあり、廃棄量のさらなる増加が予想されていたという。
そこで、同社の加工技術と調味技術を活かし、アップサイクル商品として開発されたのが「国産しょうが香る宮城県産元茎わかめサラダ」と「コリッとおいしい冷凍宮城県産元茎わかめの中華仕立て」。いずれも抜群の食感とやみつきになる味付けが特長となっている。
「国産しょうが香る宮城県産元茎わかめサラダ」は、コリッとした食感の元茎わかめに、大根やにんじんなど食感の良い具材を合わせた一品。相性の良い「きざみ生姜ドレッシング」をベースにした味付けで、隠し味ににんにくやはちみつを加えることで、コク感をアップしている。元茎わかめの緑に、大根の白、にんじんの赤、生姜の黄色を加えることで、サラダとして彩り良く仕上げられている。
一方、「コリッとおいしい冷凍宮城県産元茎わかめの中華仕立て」は、短冊切りのたけのこを合わせることで、より食感が楽しめる設計。味付けも元茎わかめの磯の香りと相性の良い、ごま油と醤油によって、コクと旨味がしっかりと感じられる濃いめのテイストとなっている。また、赤唐辛子のピリ辛がアクセントになっており、食欲をそそる味わいに仕上げられている。