40代を超えて、ふと焦燥感にかられてつらくなった、というような経験はありませんか? もしかしたらそれは、「ミッドライフクライシス」かもしれません。

そこで今回は、数多くの悩み事を聞いてきた高円寺の占いスナック「美星」のマスターである人気占い師・大清水高山先生に、40~50代の男性が持ちやすい悩みの傾向について、取材を実施。そしてミッドライフクライシスの解決のヒントについて考えてみました。

ミッドライフクライシスって何?

ミッドライフクライシスとは、直訳すると「中年の危機」。その言葉の通り、40代~50代頃に訪れることが多い、アイデンティティに対する疑問や不安、焦燥感を指します。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實さんによると「中年期の8割の人が陥る」そうで、度合の違いはあっても、多くの方が通過する悩みと言えそうです。

急激に変化した価値観、競争ではなく個人を重視する時代へ

では、実際に40代~50代の人にはどんな悩みがあるのか、多くの人の悩みに寄り添い続けている大清水先生に聞いてみました。

「若いころは猪突猛進できたけれど、中年期に入ると体が衰えて、社会の情報についていけなくなり、取り残されたような気持ちを持って悩まれる方が多いです。また、経済的にも、お金を稼ごうと躍起になっても給料は増えないのに、増税や物価の高騰でほとんど貯まらない。なんとかしてこの先も競争社会を生き延びなくてはと、心をすり減らしている方が多いと感じます。

さらに、私たちはコロナ禍を経験し、価値観が大きく変動する様子を目の当たりにしました。40~50代の方たちは、より今までの人生に疑問を持ち、今後の人生に不安を感じてしまうのでしょう」(大清水先生)

たしかに、ただでさえ不安を感じやすい時期に、今まで経験したことのない有事が起こったのですから、より揺らぎが見えてもおかしくはないですよね。また先生によると、今は「競争社会は頭打ちに遭っている」のだとか。

「もうある程度、人間が実現できる文明には、限界が見えてきていると感じます。その中で、ミリ単位での競争に立ち向かおうとするには、かなりの気力と根気が必要になる。だからこれからは、競争ではなく個人を重視する価値観に変わっていきます。自分が心地よいと感じる生き方を、大切にする時代になるんです」(大清水先生)

働き方だけでなく、地方移住など暮らし方も多様になってきている昨今。たしかに、ナンバーワンよりオンリーワンを尊重する動きがあるように感じます。ここにミッドライフクライシスを解決するヒントが見えそうです。

ミッドライフクライシスを乗り越えるヒントは「3つの考え方」

大清水先生のアドバイスをもとに、ミッドライフクライシスを乗り越える考え方のコツを考えてみましょう。

■将来ではなく、今を優先的に考える

ミッドライフクライシスに陥ると、どうしても過去や未来に対して考えが執着しがち。でも過去は変えられないですし、コロナ禍がそうであったように、どんなに未来を想像しても何が起こるかは誰にも予測できません。

だからこそ、今の自分を最優先にして、大切にしましょう。

「将来のためにお金を作らなくてはと、せっせと働いても、心と体を壊してしまっては元も子もありません。特に40~50代は健康の高度が下がり、若い頃に比べて無理がきかなくなってきます。そこに焦りを感じてより頑張ろうとするのではなく、今の自分が心身健康でいられるような生活にシフトチェンジしてみてください。

心と体はつながっています。体に良い物を食べ、体を動かして、健康でいれば、心にも活力が湧いてくるでしょう。今の笑顔が明日の笑顔につながるのです」(大清水先生)

■仕事はそこそこに、やりたいことをしてみる

人生100年時代と言いますが、折り返しといっても、まだ数十年もあります。体力が落ちたとはいえ、老年期に比べれば、まだまだ力はあるはず。ぜひあきらめないで、やってみたいことに挑戦してみましょう。

「副業でもプライベートでも、自分が楽しいと感じることをやってみてください。自分はどんな時に笑っているのか、と考えてみると、何のために生きていきたいかというアイデンティティが見えてくるのではないでしょうか。その分、仕事は疲れすぎない範囲で割り切って取り組めばいい。ぜひこれからは自分の時間を大切にしてみましょう」(大清水先生)

■周りと比べてしまう時は、下を見る

上には上がいる、と言いますが、落ち込んでいる時は特に、自分より上にいる人たちと比べてしまうもの。40代以上になると、仕事で結果を出している人や、経済的な余裕が見える人など、自分にないものを持っている人がちらほら見えてくる頃でもあります。

「自分は劣っている」と感じると、より人生に不安を感じたり、追いつこうと無理をしたりしてしまうので、ミッドライフクライシスを助長する可能性があります。

どうしても他人と比べてしまう時は、上ではなく、下を見てみましょう。

「上ばかり見ていると、どうしても負けた感を持ってしまう。でも実際は、自分のことをすごいと認めてくれている人の方が圧倒的に多いんです。高みを設定したらキリがありません。時に周囲にいる人たちを見て、毎日感謝の気持ちを持ちましょう。真の幸せはSNSやネットではなく、身近な日常にあるはずです」(大清水先生)

幸せの基準を上にすると苦しみが強くなりますが、自分の手元に近づければ幸福感に気付き、自信につながるのです。

中年期の不安は、多くの人が通る道。悩んでいるのは、あなただけではありません。もし、ふと人生に疑問や不安を感じたら、力を抜いて、「今の自分が楽しいと感じること」をやってみましょう。人間は適度なストレスが必要な生き物。不安が消えなくても、上手に共存しながら、少しずつ前に進めれば大丈夫です。


大清水高山 先生
警察官を経て、葬儀屋、インストラクター、SP、旅行会社経営など数多くの職業を経験し、29年前に高円寺に占いスナック「美星(ビスター)」をオープン。的中力の高い鑑定と豊富な人生経験からくるアドバイスには定評があり、テレビや雑誌、動画配信など数々のメディアでも紹介されている。