TVアニメシリーズから約20年の年月を経て制作された、「SEEDシリーズ」完全新作の映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が1月26日に公開される。2002年10月より全50話で放送されたTVアニメ『機動戦士ガンダムSEED』は、当時の若い世代に向けて制作された21世紀最初のガンダムシリーズとして始まった。これまでのファン層に加え多くの女性層に人気が広がり、最高視聴率8.0%を獲得。さらに小学生を中心に第二次ガンプラブームを巻き起こし、新世代のガンダムシリーズとして一世を風靡した。

その後2004年10月から続編となるTVアニメ『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の放送が開始されると、最高視聴率は前作の『SEED』を上回る8.2%を獲得。シリーズ累計のパッケージ販売数は驚異の400万本を超え、TVアニメシリーズの枠に留まらないそのムーブメントは、グッズ、音楽、イベント、実物大フリーダムガンダム立像(上海)など多岐にわたり世界中を席巻した。

それから約20年ぶり、待望の新作となる映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』を手がけた福田己津央監督が、「ガンダムSEEDシリーズ」最新作への“原動力”を語った。

  • 映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』

■『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の原動力に「飢餓感」

大ヒットTVアニメシリーズ『機動戦士ガンダムSEED』『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』を産み出し、新世代ガンダムシリーズとして新たなる一時代を築き上げた福田監督。劇場版制作の決定以降、「ガンダムSEEDシリーズ」の“新作”として、どうすれば『ガンダムSEED』ファンが楽しめるのかを模索し続けたという。「事前にTVシリーズやスペシャルエディションを見ていただければ、最大限に楽しめる映像とストーリーを用意したつもり」と最新作について語る。

これほどまでの人気作を生み出してきた福田監督だが、「これまでの作品でやり残したことがない作品など1つもないです、全部やり残してます」と意外な言葉が。「これで良いし、満足という気持ちだと次を作るパワーが生まれないんですよ。やったらやった分だけ、また新たなやり残しが出てくる気がします。結局満たされない“飢餓感”のようなものが全て次の作品に繋がっていくし、作品作りとはそういうものだと思うんです」と独自のスタンスからは、“やり残したこと”こそが次につながる原動力であるという、飽くなき探究心や情熱がうかがえる。

時代の流れと共に、当然、製作手段やスタッフ陣の顔ぶれも変化していく。新旧スタッフが入り混じった体制となった中、福田監督は「若い世代が持つデジタルスキルや知見は本当に素晴らしいし、デジタルで作る部分にはその特性を存分に活かしてどんどん挑戦してほしい」と称賛する。とはいえ世代の異なるスタッフ間でのやり取りには、難しさも感じるようだ。「言い方が悪いかも知れませんが、作品作りに対する温度感やこだわりの部分で、僕らは自分たちの仕事に対してそれほど満足してないし、『これが正解だ』とも思っていない。常に新しいものをつくりたいと思っているんですが、若い人からすると、『でも、“SEED”を創りたいんですよね?』となってしまう」と、各々の“SEEDっぽさ”、“SEEDらしさ”のすり合わせに苦戦したそう。若い世代の考えやデジタル化の風潮への理解も示しつつも、「デジタル化が進みすぎると、一切が似たようなものに塗りつぶされてしまう危険性があります。もしそうなった際、自分の名前だけで仕事ができる人が、今後のアニメ業界で果たして出てくるのか……。アニメーションにおいてクリエイター個人の持つ独創性がやはり重要だと思います」と業界全体の課題を指摘した。

今作のサブタイトル『FREEDOM』。そこに込めたのは、そのまま「自由」という意味のようだが、「長々としたサブタイトルをつけることや、予告編を作ることが、実はあまり好きではないんです。色々手を施しすぎると、かえって送り手の弱気な姿勢や嫌らしさに見えかねないので。当時なファンの方々からすれば大事な“約20年ぶりの再会“であるので、(予告編などが)何もないまっさらな状態で再会して欲しいんです」と希望する。さらには、「皆さんに作品を好きになってもらえるように、たくさんのことを考えて作りました。なので、アレコレ考えずストレートに『あのラストから2年後なんだな』とだけ思って観てほしい。当時のテイストは全部残っているはずですし、『ガンダムSEED』を一番好きなのは多分僕だと思うので、そこは信用して頂けると(笑)」と自信をにじませた。

公開を楽しみにしているファンに向けては、「『ガンダム』の映画だと思って観ないでほしい。誰でもリラックスして観られる“普通の映画“として楽しんでいただけたら嬉しいですね。僕が監督として何をやっているのか言われたら、僕が観たいものを作ってもらうためにみんなを誘導しているとしか言いようがない。そういう意味では『SEED』と『DESTINY』はとても上手くいったと思うし、今でも好きですよ。でも新しい作品の方がより好きになるので、ゆくゆくは今作が一番好きになると思います」と並々ならぬ「ガンダムSEEDシリーズ」への愛を語った。

■福田己津央監督
1960年10月28日生。栃木県出身。早稲田大学高等学校卒業後にサンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)へと入社し、『無敵ロボ トライダーG7』(1980)、『超力ロボ ガラット』(1984)などで、設定制作を担当する。独立後に『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』(1991)で監督デビューし、『機動戦士ガンダムSEED』(2002)、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』(2004)で世界的大ヒットを樹立。監督最新作『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』がいよいよ2024年1月26日に全国ロードショー。

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