国土交通省 神戸運輸監理部は18日、兵庫県神戸市の神戸ポートオアシスにて海運事業者による企業説明会「めざせ!海技者セミナー」を開催。会場は海の仕事を志す若者たちでにぎわった。最近の就職状況はどうなっているのだろう? 生徒、企業の双方に話を聞いた。
会場は盛況!!
北海道から鹿児島まで、全国から51社の海運事業者(と1社の独立行政法人)が参加した今回の説明会。国土交通省 神戸運輸監理部の大當伸子課長は「神戸管内には商船学校が少なく、そのため全国から練習船が神戸に寄港するタイミングを狙って、毎年この時期にセミナーを開催しています」と説明する。
北海道からは「銀河丸」に乗った小樽海上技術短期大学校の1年生104名が、愛媛・今治からは「青雲丸」に乗った波方海上技術短期大学校の1年生83名が参加。地元兵庫県からは香住高等学校の16名、このほか京都府立海洋高等学校の14名、富山(富山県)、弓削(愛媛県)などの高等商船学校から機関科の74名、そして海技大学校の21名などが会場を訪れた。
「その多くが、来年(2025年)3月に学校を卒業する子どもたちです。したがって今回のセミナーがすぐに就職につながるわけではありませんが、それでも企業のブースで積極的に話を聞いてまわる生徒を多く見かけます。堅実的に将来を見据える子が多い印象です」と大當課長。
今回のセミナーは、もともと38社のブース枠を用意していた。しかし76社から応募があり、急遽、別フロアの会議室にもブースを増設。それでも20社を超える企業が漏れてしまった。このため、会場にはVTRで企業を紹介するコーナーがもうけられた。
船内環境は? 女性の働きやすさは?
会場にて何人かの生徒に話を聞いた。友だちと2人で企業の説明を聞いてまわっているという女子生徒は「この業界に興味を持ったきっかけが、人の役に立つ仕事ができる、ということを知ったからです。日本は島国ということもあり、海運事業は色んな形で私たちの日常生活に関わっています」と話してくれた。LPG(液化石油ガス)運搬船に興味があり、すでに数社の説明を聞いたという。
ある男子生徒は「船内生活に興味があったんです。訪ねた企業では、早ければ来年くらいにもStarlink(スターリンク)衛星の通信機器を導入してくれるそう。船底にいてもインターネットが使えると聞きました」と笑顔を見せる。
またセーラー帽を被った、大柄な男子生徒は「学校の先生から勧められていた企業を訪ねたところ、船員の生活をよく考えている企業、ということが分かりました。内航船と外航船をどのように運行しているのか、あとは休暇のサイクルだったり、福利厚生だったり、そのあたりも分かりやすかった。普段の実習では分からないところも聞けて、船の勉強にもなりました」と満足した表情で話してくれた。
一方で、企業担当者にも話を聞いた。ある企業の男性担当者は、最近の生徒の傾向として「ビジョンのある子が多い印象です。待遇(給料)については、あまり気にしていない様子。どのくらい休暇がとれるのか、どのくらいの乗船サイクルか、そういったことを聞かれます。これから1年間かけて、仕事のイメージを膨らませてもらえたら」と期待する。またある企業の男性担当者は「皆さん真剣に話を聞いてくれます。もう質問攻めです(笑)。ひとしきり説明が終わったあと、企業を訪問させてくださいということで、アポをとっていく子もいます」と手応えを口にする。
まだまだ男性社会の業界、という話も聞く。女性に優しい環境は、どの程度、整ってきたのだろうか。そこである企業の女性担当者に尋ねると「弊社が所有するのは小さい船なので限界もあるんですが、お風呂(男性用)とシャワーブース(女性用)に分ける、居住スペースにも男女の区分けをつくる、など少しずつ環境も改善が進んでいます」と話した。
最後にあらためて、神戸運輸監理部の大當課長に話を聞いた。同氏によれば、この業界も深刻な人手不足に苦しむ企業が多い。ただ、ひと昔前のように”即戦力”を期待するばかりでなく、イチから育てる、というところも増えてきたという。
そのうえで「そもそも海の仕事について、あまり知らない、という人もおられるでしょう。バスや電車の運転手さんのように、すぐに業務内容がイメージできる業界ではありません。でも実は、専門学校を出ていなくても、未経験者でも歓迎する企業が少なくありません。肉体労働が仕事の中心にはなりますが、20代、30代で体力に自信のある人を歓迎します。海が好き、大きな船に憧れがある、世界に羽ばたく仕事がしたい、あるいは地上職よりも良いお給料で働きたい、きっかけは何でも構いません。若い人の転職先の選択肢のひとつに加えてもらえたら嬉しいです」と大當課長。そのためにも、まずは海の仕事を知ってもらえたら、と話していた。