慶應義塾大学体育会自動車部所属(現在は引退)の学生ライターが「東京オートサロン2024」を取材しました! トヨタ自動車のブースでは「モリゾウ」こと豊田章男会長の愛車6台に遭遇。なぜ展示することになったのか、担当者に話を聞いてみました。
モリゾウが"本当に"乗っているクルマ?
東京オートサロン2024のトヨタブースには、モリゾウこと豊田会長の愛車が並んでいました。ラインアップは「センチュリーGRMN」「レクサスLBXモリゾウRRコンセプト」「GRカローラモリゾウカスタム」「iQ GRMNスーパーチャージャー」のほか、他社製品のヤマハ「ビーノ」とスズキ「ジムニー」も飾ってありました。
これらはモリゾウ氏が"本当に"乗っているクルマだそうです。展示用プレートの下には、モリゾウさんの本物のナンバープレートが付いているんだとか。ちなみに、展示している愛車はモリゾウさんが所有しているクルマの「ほんの一部」とのことでした。気になったクルマがあれば「買い替える」という概念ではなく「買い足す」そうなので、ほかの愛車もいずれ機会があれば見てみたいですね。
「センチュリーGRMN」はいわゆる社用車としての位置づけ。「レクサスLBXモリゾウRRコンセプト」は発売前のため、まだ個人保有はしていないそうですが、ここに展示されているということは、いずれ購入するおつもりなのでしょう。
気になるのはヤマハのビーノにモリゾウさんがどんなタイミングで乗るのか、ということでした。近所のコンビニにでも出かけるのでしょうか? 担当者によれば、モリゾウさんは愛知県のトヨタグループ蒲郡研修所に行った際、現地での短距離の移動にビーノを活用しているそうです。
GRカローラモリゾウカスタムも、リアルに使っていることが伝わってくる1台です。足元を見ると、スタッドレスタイヤを履いていますからね。iQ GRMNスーパーチャージャーは限定販売されたクルマとのことでした。こちらも、「クルマ好き」であることが伝わってくるラインアップです。
なぜ愛車を展示?
それにしても、モリゾウさんはなぜ、他社製品も含めた愛車をオートサロンで展示するというダイナミックな行動に至ったのでしょうか。
それは、「愛車」という文化を守っていくためだそうです。
「愛」の付く工業製品はクルマだけとも言われています。オートサロンの来場者は特にクルマ好きで、愛車を所有している方も多いはず。カーシェアリングやレンタカーの時代になっても、愛車を持つことを大切にしていきたいという考えがトヨタにはあるようです。
それをアピールする手段のひとつとして、「車好きなおじさん」が自分のクルマを自慢するというコンセプトになったのが、今回のトヨタブースです。愛車の文化を残していきたいという思いをモリゾウさん自らがダイナミックにアピールした展示ですが、私たちがインスタグラムに好きなモノの写真を投稿するのと同じ心理なのかもしれませんね。
昨今はクルマに対して否定的な考え方を持つ方も少なくありません。カーボンニュートラルが叫ばれる時代に、エンジン=悪という偏った考えが広まりつつあることにも、トヨタとしては懸念を持っているようです。地域・国ごとに電力事情(発電の仕方)が違うので、単純に電気自動車(EV)を増やしていってもCO2の削減には直結しません。石炭を燃やす火力発電で作った電力でEVを走らせても、クリーンといえるかどうかは難しいというのが現状です。
トヨタでは最近、水素を燃やしてガソリンを回すという取り組みも進めています。いわゆる水素エンジンです。S耐久に参戦するなどして最先端技術を鍛えています。
水素エンジンの技術は、ガソリンエンジンの技術とほとんど同じだそう。部品のほとんどは共有することができます。これまで培ってきたエンジン技術や周辺産業を守っていくためにも、水素エンジンをものにしたいというのがトヨタの考えです。
カーボンニュートラルのために複数の選択肢を用意するのが重要だとトヨタ担当者は語ります。それが「マルチパスウェイ」戦略です。
モータースポーツの文化も守りたい
トヨタはモータースポーツにも力を入れています。エンジンを積んだクルマがガソリンを燃やしながら順位を競うモータースポーツは「社会悪」のように思われてしまうこともあるそうですが、同社では「モータースポーツのスピード感で」車両を開発することにより、燃費、空力、水素の活用など、カーボンニュートラルのためになる多くの知見が得られるとしています。年間で何度も開催されるレースに参戦するにはPDCAサイクルを高速で回し続ける必要があります。これが「もっといいクルマ」を作るのに役立っているとのことでした。
東京オートサロンのブースでは新型「GRヤリス」を見ることもできました。これこそ、レースの知見がいかされた市販車の代表格と言えます。こちらのクルマ、オプションでサイドブレーキの位置を変更できる仕様になっているとのこと。ジムカーナなどのモータースポーツを行う際に使いやすくするための措置だそうです。粋な工夫がされていると感じました。
モリゾウ氏の愛車を展示した背景には、クルマ文化をとにかく守っていきたいというトヨタの強い思いがあることが改めてわかりました。そんなクルマ文化を私たちも応援し続けたいと心から思えるようなブースでした!