◆ 6度目のチャレンジで殿堂入りを果たせるか
現地時間23日(日本時間24日)に2024年度の米国野球殿堂入り投票結果が発表される。昨年度は名三塁手のスコット・ローレンが唯一の殿堂入りを果たしたが、今年度は複数人の選出が濃厚とみられている。
殿堂入りが確実視されているのは、強靭な肉体を武器にメジャーで21シーズンを過ごしたエイドリアン・ベルトレ。通算3166安打、477本塁打を放ち、有資格1年目で得票率は殿堂入りに必要な75%を大きく超えてきそうだ。
今回の特集では、ベルトレに次ぐ殿堂入り候補3人を紹介したい。いずれも1990年代から2000年代にかけて活躍した打者で、現役時代は野茂英雄と対峙したり、イチローとタイトルを争ったりした強打者の面々。
第1回はコロラド・ロッキーズで17シーズンを過ごし、通算打率.316をマークしたトッド・ヘルトンである。
ヘルトンは1995年のドラフトでロッキーズに1巡目(全体8位)で指名され入団。23歳の誕生日を目前に控えた2年後の97年夏にメジャーデビューを果たした。
当時のロッキーズにはアンドレス・ガララーガという長距離砲がいたため、ヘルトンは本職の一塁以外に、外野の守備に就くこともあった。ヘルトンは僅か35試合の出場ながら、その打撃がメジャーレベルにあることを証明。そのオフにガララーガがFAでチームを去ると、98年開幕からレギュラー一塁手に定着した。
実質1年目の98年は152試合に出場し、打率.315、25本塁打、97打点と大活躍。新人王こそ逃したが、1993年の創設から間もないロッキーズの生え抜き選手としてチームの顔となった。
翌年以降もヘルトンは勝負強い打撃と堅い一塁守備でチームに貢献。2007年まで10年連続で打率3割をマークしたが、これは同時期に活躍したイチロー(2001~10年)と並ぶ大記録でもある。
自己ベストの打撃成績を残したのは2000年。打率.372で、ナ・リーグ首位打者に輝いたほか、216安打、59二塁打、147打点、OPS1.162など多くの項目でリーグトップだった。
2013年に39歳で引退するまでに、2519安打、369本塁打、打率.316という通算成績を残したヘルトンだが、過去5回は殿堂入りを逃している。
その大きな理由の一つが、生涯ロッキーズ一筋で過ごしたためだろう。
ロッキーズの本拠地デンバーはマイルハイシティーと呼ばれ、打球が飛ぶことで知られる。ヘルトンの通算成績をホームとアウェイに分けると、打率はホームの.345に対して、アウェイでは.287まで落ち込む。本塁打数も227と142とその差は一目瞭然。ホーム球場の名称から、打者有利な現象は“クアーズエフェクト”と呼ばれている。
実際にヘルトンが“クアーズエフェクト”の恩恵を受けたのは紛れのない事実だろう。もし他の球団に入団していれば、通算打率3割はもちろん、300本塁打にも届かなかったかもしれない。それでもヘルトンが実際に残した数字は、有資格1年目で殿堂入りを果たしてもおかしくないもの。昨年度に72.2%の得票率を獲得したヘルトンは、6度目のチャレンジでついに殿堂入りを果たすことになりそうだ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)