鉄道総合技術研究所は、運転曲線予測を活用した省エネ運転支援技術とそのプロトタイプシステム(運転支援システム)を開発したと発表した。運転台に設置したタブレット端末に、定時性や省エネ性の観点で優れた運転方法を「推奨運転」として運転士に提示する。
列車の消費エネルギーは、同じ区間を走行しても運転方法で増減するため、より効率の良い走行を実現するには、走行時分・制限速度等の条件を満たした上で、列車の編成情報(質量や走行抵抗、電気機器特性など)や勾配といった走行区間の情報を考慮し、走行状況(位置と速度)に応じた運転方法の支援が重要だという。そこで、タブレット端末にリアルタイムで予測した適切な運転方法を運転士に提示する省エネ運転支援技術とそのプロトタイプシステムを開発した。
このシステムでは、通過駅までの運転方法として、いくつかの運転パターンを定め、編成情報と列車の位置・速度から運転曲線を予測。具体的には、「力行運転」「定速運転」「楕行運転」といった運転方法の中から、使用する運転方法とそれを切り替える地点・速度といった条件を定め、それらの運転パターンに従って走行した場合の速度の推移を予測する。こうして得られた運転曲線の候補の中から、駅通過時刻が定時に近く、消費エネルギーが少ない運転方法を「推奨運転」として、リアルタイムに運転士に提示する。
新たに開発された運転支援システムにより、走行抵抗や車両電機機器の特性を考慮した列車運転時のエネルギー損失抑制と、駅の通過時分の精度の高い予測による走行時分調整のための加減速回数の抑制が期待される。なお、電気機関車が石油タンク貨車を牽引する貨物列車で検証した結果、走行する区間と牽引条件によって省エネ効果は異なるが、4~14%程度の省エネ効果が確認された。
今後の予定として、運転支援システムの検証対象線区や対象車両を拡大し、2025年3月まで運転支援システムの試験運用を実施。その上で、実用的なシステムとしての開発を進めていくとしている。