CES 2024に出展するLGエレクトロニクス(以下、LG)のブースには、夢あふれる家電が勢ぞろい。独自開発による生成AIの搭載を予定するパーソナルアシスタントロボット「Q9」や、透明な4K有機ELテレビ「LG SIGNATURE OLED T」シリーズなどを現地取材しました。
AI=愛あるインテリジェンスを乗せたLGの新ロボットくん
LGはCESの開幕前日にプレスカンファレンスを行い、CEOのWilliam Cho氏が「これからLGはスマートライフソリューションカンパニーとして本格的な転換を加速させる」と宣言しました。これまで、LG独自のAI(人工知能)「LG ThinQ(シンキュー)」に関わる製品やサービスについては「技術の先進性」をプッシュしてきましたが、今後はライフソリューションプラットフォームとしての在り方を追求。LGならではの目線から「Affectionate Intelligence(愛あるインテリジェンス)」として、AIに関わる製品やサービスを再定義します。
足がかりになるのは、全世界でLGが5億台以上を販売してきたというスマートホーム家電、ITテクノロジーデバイスで培ってきたAIソリューションの経験、膨大なユーザーデータという資産。これらをもとにLG独自の生成AIソリューションとなる「LG AI Brain」を開発し、Affectionate Intelligenceの基礎を築きます。
LG AI Brainがどのような大規模言語モデル(LLM)によって構成されるのか、学習にはユーザーデータをどのように使うのかなど、具体的な展望が今回のCES時点で語られることはありませんでした。代わりに、生まれ変わろうとする新しいLGのAIを象徴するコンセプトモデルとして、スマートホームアシスタントの「Q9」を発表。LGエレクトロニクスのブースでデモンストレーションも行っています。
LG AI Brainの搭載を予定するQ9は、まるで人間同士が交わすようにユーザーと自然に会話したり、宅内に設置したLGスマートホーム家電の動作状況を監視しながら最適化したりといった、オーケストラの指揮者のような役割を果たします。2本の脚には車輪あり、室内を自由に動き回ります。頭脳であるSoCには、クアルコムがロボット製品向けに最適化した「Qualcomm Robotics RB5 Platform」を採用しています。
CESのデモンストレーションは残念ながら録音された音声。プレゼンターの女性と直接会話を交わす様子は見られませんでした。LG AI Brainのロードマップもまだ明らかにされていないので、当然といえば当然です。
Q9のデザインをはじめ、できることとして発表されている内容もまた、今後の展開に合わせて柔軟に変わることでしょう。LG AI Brainが、LG ThinQに対応するエアコン、洗濯機、空気清浄機といったスマートホームデバイスの数々を賢く連動させて、ユーザーの生活習慣を学習しながら快適な暮らしを演出する将来も描いているそうです。2024年も9月にベルリンで開催されるIFAにて、進化したLG AI Brainの姿が見られるかもしれません。続報を楽しみにしましょう。
高画質なだけじゃない! たたずまいも美しい「透明テレビ」が誕生
今年のCES 2024において、LGがもうひとつ話題をさらったが透過OLEDテレビ「Tシリーズ」です。
透明な有機ELディスプレイモジュールそのものは、特段珍しいものではありません。2020年にはパナソニックも55V型のフルHDモジュールを商品化しています。
LGのTシリーズは、コンシューマー向けの4Kテレビとしてデザインも含めた完成度を高めていることと、ディスプレイ部とワイヤレスメディアプレーヤー「Zero Connect Box」を分けて、レイアウトフリーな使い方を提案していることです。画面サイズは77型と55型がそろう予定。ブースでは北米での発売時期や価格は未定として紹介されていました。
透明ディスプレイは明るい場所では映像の視認性が落ちてしまいますが、ファブリック素材の「コントラストスクリーン」を立ち上げると黒も引き締まったシアターライクな映像が楽しめるようになります。
画作りもまた、LGが独自に開発する高画質AIプロセッサの最新世代「α11」を搭載して安定させています。本気の映画鑑賞を楽しむテレビとして、あるいはリビングルームに置いて映像を絵画やインスタレーションのように楽しむアートディスプレイとしても楽しめそうです。Tシリーズの日本上陸もあるのでしょうか。