私たちは時折、自分自身を厳しく責めてしまいがちです。客観的な事柄に基づき反省したり、たまに落ち込んだりするくらいならいいですが、自分を過度に責めるのが常態化すると、精神的な負担が大きくなってしまいます。そうなる前に、自分を責める癖を一度見直してみませんか。
本記事では、つい自分を責めがちな人によくある特徴や心理に、自分を責める癖から抜け出し、自己肯定感を高めるためのコツを紹介。自分を責めることによるメリットやデメリットもまとめました。
自分を責める人によくある特徴・心理とは
まずは、すぐ自分を責めてしまう人にありがちな特徴や、その心理について解説します。
「人のせいにしてはいけない」と思い過ぎる
自己責任を重視する文化の中で、多くの人が「人のせいにしてはいけない」という価値観を持つようになりました。しかし、この考え方が逆に自己批判の原因となり、自分を過度に責める行動へとつながることがあります。
他責をせず、何事にも責任感を持つことは、自己認識や問題解決に一定の効果をもたらします。しかし一方でそれが行き過ぎると、自己否定感を増幅させ危険です。
また、他人に上手に頼れなくなり自分で仕事を抱え込むことで、他人との関係性や仕事のパフォーマンスに悪影響を及ぼすこともあります。
答えのない「なぜ」に縛られがち
世の中は、自分の思い通りにいかないことの方が多いものです。自分が最大限努力していても、どうにもならないことで結果が左右されてしまうこともよくあります。
そんな中で「なぜこんなことが起きてしまったのか」「なぜあの人のようにうまくいかないのか」「なぜ幸せになれないのか」などと考えることは、「私があのときこうしていれば」「私があの人ほど優秀ではないから」「私には幸せになる資格がないから」などといった、自己否定につながる可能性があります。
もちろん、うまくいかない事柄に対して、客観的に分析をして次につなげる行為は大切です。しかし、どうにもならないことに対して嘆いたり、やみくもに自分のせいにしたりするのは、精神衛生上、望ましくないです。
自分の失敗や欠点にばかり注目する
自分を責めがちな人は、完璧主義であったり、自分に対して過度な期待をしていたりすることがあります。非現実的な高い目標や期待を持つことで、それを満たせないことに対して、自己批判的になるのです。
人間は誰しも、限られた時間の中で、全てのことを完璧にこなすことはできません。「ここまでしかできなかった」と考えるのではなく、「ここまでできた」ととらえることが大切です。自分を過小評価せずに、できたことはできた、できなかったことはできなかったと、客観的な視点を持ちたいものです。
過去の失敗や後悔に縛られている
過去の失敗や後悔にずっと縛られ、自分を責め続けて、やがて自己嫌悪に陥ってしまう人もいます。
いくら思い悩んでも、過去は変えられません。過去の失敗や後悔にとらわれ続けることで自分自身を苦しめる行為が、自分の現在や未来にどのように影響するかを理解しましょう。それが、自分を責めるスパイラルから脱出する一歩となります。
「調子に乗ってはいけない」と思い過ぎる
特に日本には、褒められたり成果が出たりしても謙遜する文化があります。「謙遜するのが美徳」のような雰囲気は、私たちの行動や思考に大きな影響を与えているでしょう。
「調子に乗ってはいけない」という言葉もよく見聞きします。この考えは、「勝ってかぶとの緒を締めよ」という言葉のように、気が緩んで失敗することを防ぐ役割もあります。
しかしこれらも度が過ぎると、「今回成功したのはたまたまだ」「本当はあの人の方がすごいのに、不相応に私が評価されてしまった」というように、自分を正しく評価せずに罪悪感を抱いたり、自分を責めたりすることにつながるのです。
自分を過度に責めるデメリット
自分を責めることは、自己改善の一環として一定のメリットをもたらすことがありますが、それが過度になるとさまざまなデメリットが生じます。ここでは自分を責め過ぎることで生じるデメリットを紹介します。
自尊心が下がる
自尊心とは、自分自身をどの程度尊重し自信を持つか、価値ある存在と認識しているかを示す感情のことです。自分を過度に責め続けると、自分自身の価値を誤って低く見積もり、自尊心が下がることになります。
また、自尊心が低いと、他人の評価に過剰に反応してしまい、そのたびに自分を責める悪循環に陥りがちです。加えて、前向きな思考や行動を取ることが難しくなります。
消極的な思考に陥る
自分を責める行為は、多くの場合、消極的な思考につながります。心の中で自分自身を過度に非難することは、自分自身の能力や価値を過小評価し、自信の喪失や自己価値の低下を引き起こす可能性があります。
それが挑戦や物事の変化に対しての足かせとなり、何事にも消極的になってしまう原因となり得ます。自分自身への信頼が失われることで、自分自身の可能性や能力を十分に発揮できなくなることにつながるのです。
ストレス過多となり、うつ病につながる可能性がある
うつ病は、過度なストレスをきっかけに発症することが多いといわれています。
自分を責めがちな人は、自分に対してのネガティブな感情を増幅させ、また自分で何でも抱え込んで思い悩むことが多いです。これらのことがストレスを増やし、ゆくゆくはうつ病などの心の病気につながる可能性もあるのです。
自分を責める癖を改善し、自己肯定感を高める方法
ここでは自分を責める癖を抱えている方へ向けて、その改善方法と自己肯定感を高める秘訣(ひけつ)をお伝えします。ここに書いてある全てのことを取り入れる必要はありません。どれか一つでも大丈夫なので、できることから試してみましょう。
自分のせいでないことは、他人のせいにしてもいい
自分を責めがちな人は、何でもかんでも自分のせいだと思ってしまうことが多いです。しかし中には、実際に他人のせいで悪い結果につながったということもあるでしょう。
一人で責任を背負い込まずに、人のせいにしても、言い訳をしてもいいのです。ただしこれを他の人に言うとトラブルの基なので、「ここの部分は、私は悪くなかったよね」「私はできることをやり切ったよね」と、自分の中で、自分に対して伝えてあげるようにしましょう。
自分ではどうにもできないことは気にしない
あなたに(というより、一人の人間に)できることは、能力的にも時間的にも限られています。これは動かしようのない事実です。世の中には、誰がどうやったとしても、絶対にうまくいかないことも存在します。
もちろん、自分が責任を持つべき物事について、他人に責任転嫁するのは良くないです。しかし、自分では端からどうにもできないことで思い悩んでも、何も解決しません。どうにもできないことで悩むよりも、目の前の大切なことに集中した方が、あなたの人生はより良いものになるでしょう。
自責を「感謝」に置き換える
例えば「私がダメだから失敗した」と思ったとき、「失敗したから、新しいことを学べて感謝だ」と考えてみましょう。これにより、同じ状況でも自己否定から自己肯定へと感情を転換できます。
自分を責めることから解放され自己肯定が高まると、毎日がよりポジティブで充実したものになるでしょう。
過去を嘆くのではなく「どうしたら良かったか」を考える
ただ自分を責めることは、過去にとらわれるだけで、物事の解決にはつながりません。
そこで「どうしたら良かったのか」を考えるようにしましょう。「どうしたら」の問いは、未来を見つめ、解決策や改善策を探すことにつながります。それにより、自己成長や自己改善に向けた道筋を描けるようになるでしょう。
新たなことに挑戦し、小さな成功体験を大切にする
自分を責め、自己肯定感が低い人は、全てがうまくいかないような感覚に陥りがちです。そして、何も挑戦しない日々が続き、またじわじわと自己肯定感が失われていきます。
そこで、何か新しいことに挑戦してみましょう。ここでいう「挑戦」は、すごいことではなくて大丈夫。「嫌いな野菜を一口食べる」「朝が苦手だが、いつもより5分早く起きてみる」「家族に一日一回は『ありがとう』と言う」など、ささいなことで十分です。
目の前の小さな課題を乗り越えたり、自己改善に向けて小さな一歩を踏み出したりすることは、自己肯定感を高め、自分を責める癖を軽減する助けとなります。それぞれの成功体験を心から祝うことで、自分を好きになっていきましょう。
素直に喜んでいいし、自分を褒めていい
特に日本には、成功しても謙遜すべきだという風潮があります。素直に喜ぶと「調子に乗ってはいけない」「その程度のことで」などと言われることもあります。
しかし成功したり自身の成長を感じられたりしたときは、素直に喜んでいいし、自分を褒めても大丈夫です。それが自信につながり、新しい挑戦に対するモチベーションになるでしょう。
ただし注意点もあります。それは他人と比較してはいけないという点です。他人と比較すると、比較された側は不快な気持ちになります。その悔しさや悲しみから、「調子に乗るな」とあなたを責めてくる可能性もあります。
また他人と比較するということは、せっかく成功しても、自分よりももっとすごい人と比較することにもつながります。そうすると、自己肯定感の低下を招きかねません。
比較していいのは、過去の自分です。過去の自分よりも成長できたのなら、素直に喜び、自分を全力で褒めてあげましょう。きっとそれだけであなたの見える世界が変わってきますよ。
自分を責めることのメリット
自分を責めすぎることは自己肯定感を下げ、ストレスにもつながります。しかし自分を責めることが、自己成長のためのステップとなることもあります。
すぐに自分を責める癖をやめられない人も、自分を責めることのメリットにも目を向けると、心が楽になるかもしれません。
次回の成功につながる
失敗を他人や環境のせいにすることは簡単です。確かに、実際に自分の力ではどうにもならないこともあります。
しかし自分にも改善の余地がある場合は、自分を責め、内省することで、次回の成功につながるでしょう。
ただしこのとき大切なのは、ただ悲観的になって自分の全てを責めるのではなく、「自分のここは良かった」「ここはこういう点で良くなかったので、次回はこうした方がいい」というように、自分の言動に対して、客観的に正しく評価することです。
責任感が育つ
自分を責めるということは、別の言い方をすれば、物事を自分事としてとらえているということになります。物事に対して真剣に向き合っているからこそ、その結果について一喜一憂するわけです。これはすなわち、強い責任感につながります。
もちろん、全ての物事に対して強い責任感を発揮していては、身が持ちません。しかしこれは、と思う物事に対しては責任感を発揮することで、自らのやる気が上がったり、他者からの信頼を得たりすることができるでしょう。
他者から「向上心がある」「努力家」などと認められる
自分を責めるということは「自分の欠点に目を向けている」ということの裏返しでもあります。それは「現状で満足してはいけない」という考え方にもつながります。現状で満足できない人は、さらに成長しようと努力を繰り返すでしょう。
それは終わりのない、それでいて実らない努力かもしれません。しかし、あなたが悩みながらも努力している姿を、実は周りの人たちは見ています。努力しているあなたを見て「自分も頑張ってみようかな」と感化される人もいるかもしれません。
努力が全て実を結ぶ保証なんてどこにもありません。しかし、あなたの努力を素直に称賛してくれる人は必ずいるはずです。
自分を責めることから卒業して、自分を認めてあげよう
この記事では自分を責めがちな人の特徴や、自己肯定感を高める方法を解説しました。忘れてはいけないのは、自分を責めること自体は決して悪いことではないということです。自分を責めることで成長につながることもあります。注意が必要なのは、過度に自分を責める行為です。
この機会に「自分を過度に責める」のではなく「ダメなところも含めて、自分を肯定できる」ようになりませんか。
そのためには小さな成功体験を大切にしたり、自分の良いところを素直に褒めてあげたりしましょう。自分を認めてあげられると、きっと心が軽くなりますよ。