第37期竜王戦(主催:読売新聞社)はランキング戦が進行中。1月16日(火)には3・5・6組の計3局が東西の将棋会館で行われました。このうち、東京・将棋会館で行われた3組の行方尚史九段―黒沢怜生六段戦は61手の短手数で行方九段が勝利。本戦出場に向け好スタートを切りました。
「序盤は飛車より角」
今期の3組は本戦トーナメントに向けた1枠を16名で争うもの。本戦進出には4連勝が必要です。振り駒が行われた本局は黒沢六段が後手番ながら早石田を目指す積極策を展開。先手の行方九段がこれをとがめる角打ちで対抗した結果、盤上は早くも力戦模様に突入です。
双方の角が飛び交う乱戦を前に行方九段は一手ずつ慎重に時間を使います。やがて8筋に作った馬の後ろに飛車を配備したのは敵陣攻略に向けた着実な一歩。テンポよく指し手を進めていた後手の黒沢六段ですが、これを見てようやく手が止まりました。
勝敗分けた飛車の働き
中盤の競り合いが一段落した局面は行方九段の優勢。ともに敵陣に大駒を成り合っていますが、後手だけが飛車の活用で出遅れています。敵の歩頭に飛を回ったのは黒沢六段の勝負手ながら、行方九段は丁寧に指してこの攻めを余せることを読み切っていました。
終刻時刻は21時29分、黒沢六段の投了で行方九段の勝利が決定。投了図で先手玉に詰みはなく、後手玉は受けなしの状態でした。勝った行方九段は2回戦で梶浦宏孝七段と対戦します。敗れた黒沢六段は昇級者決定戦に回って2組昇級を目指します。
水留啓(将棋情報局)