CES 2024に出展したシャープのブースを紹介します。2023年のシャープは、CESの開催期間に合わせてラスベガス中心のリゾートホテルにブースを構えていましたが、2024年はより多く来場者が期待できるラスベガス・コンベンションセンター(LVCC)の中央ホールに戻ってきました。

北米再参入のテレビ「AQUOS」、最上位のXLEDを展示

シャープのテレビ「AQUOS」といえば日本国内では知名度の高いブランドですが、北米では2016年ごろにコンシューマー向けテレビの販売が途絶え、2023年に復活・再参入を遂げています。再参入以来となるCESのメインホール出展ということもあり、mini LEDバックライトを搭載するAQUOS XLEDのグローバルモデル「FV1」ラインがブースの正面に堂々と置かれていました。

  • 2022年にシャープのテレビが北米に再上陸。現在は最上位のAQUOS XLEDシリーズなどを展開しています

FV1は日本のEP1ラインに相当する4K液晶テレビ。純度の高い光の三原色が生み出す「量子ドットリッチカラー技術」や、ディスプレイの上下部にスピーカーを配置して、画面の映像と一体になったような臨場感の高いサウンドを再現する「AROUND SPEAKER SYSTEM PLUS(ARSS+)」を特徴としています。

今回はFV1の画質・音質を体験するシアタールームのような環境がなかったため、残念ながらその実力を知ることができませんでした。もし来年(2025年)のCESにシャープが出展するとしたら、来場者が自由に出入りして没入体験を味わえる視聴スペースを設けてほしいところです。

スマートグラスは「AI連携」という方向が見えてきた

CES 2024のメインホールで今年もっとも注目されていたジャンルは、没入型コンテンツを楽しむXR/VR系のスマートグラス。シャープも2023年のCES 2023や、2023年末に日本国内で開催した技術展示会「SHARP Tech-Day」で見せていたスマートグラスの試作機を展示。ブースの中央で一番目立っていました。

  • シャープが開発を進めているXRスマートグラスの試作機

  • ガラス製のレンズを採用。画質はまだまだ向上すると思いますが、シャープらしい高精細で力強い画づくりの個性が光っていました

ブースでは、本体に搭載するカメラでキャプチャしている現実世界の映像をディスプレイに表示しながら、さまざまなテキストや画像情報を重ねて見る使い方がコンセプトとして紹介されました。

複数の用途提案も。例えば、オフィスの会議で繰り広げられた話題をスマートグラスが解析して、重要なキーワードをリアルタイムに拾ってディスプレイに映したり、頻出したテーマに関連する言葉をデバイスがまとめたりしてくれます。ほか、衣服の「コーディネートアシスタント」は、XRスマートグラスを装着した状態で衣服に視線を送ると、カメラがその日の気温や天気、スケジュールに合わせたコーディネートを提案してくれます。

  • XRスマートグラスが搭載しているAIがユーザーを支援する使い方を見せていました

筆者もXRスマートグラスを装着してデモンストレーションを体験しましたが、今回はコンセプトムービーを見るところまで。実際にAIとコミュニケーションをしてデータを生成するような使い方が見られなかったことは残念ですが、次回に期待しましょう。

「AIと連携するスマートグラス」というシャープが目指す方向が見えたことで、ソニーやシフトール、アップルにメタなど、国内外でXR/VRデバイスを手がけるライバルとの競争が熱を帯びてきました。シャープのスマートグラス開発チームには、AQUOSスマートフォンを長年にわたって担当してきたエキスパートが続々と合流しているそうです。意欲的な製品が爆誕してほしいものです。

  • Tech-Dayにも展示されていたVRタイプの試作機

プレミアムな白物家電が根を張りつつある

家電については、シャープは1979年から北米市場に電子レンジの生産にて参入しました。キッチンの壁面やカウンター下に埋め込むビルトインタイプのオーブンレンジは、2004年から投入しています。

日本だと据え置き型のオーブンや電子レンジが主流ですが、シャープは北米ユーザーの生活スタイルに合わせて、ビルトインタイプの家電をそろえてきました。シャープの担当者によると、現在はプレミアムクラスのモデルが好評を博して、北米でもブランドが着実に根を張りだしたそうです。

白物家電に関連する展示では、SHARP Tech-Dayにも出展された「低騒音化&ハイパワーヘアドライヤー」と、同じ静音化技術を応用したスティック型掃除機もありました。ヘアドライヤーは内部のモーター×2基で強い風量を得ながら、ノズルの設計を工夫することによって、響き続ける低音のノイズを解消。ここが技術面に見るシャープの独自性です。ヘアドライヤーそのものとしては、試作機のデザインをもう少し使いやすくスタイリッシュに仕上げる必要もありそうですが、その点においては経験豊富なシャープにぬかりはないでしょう。

  • 低騒音&ハイパワーヘアドライヤーの試作機

  • 空気の通り道を長くレイアウトして、低音域の騒音漏れを少なくしています

一方、先進技術の分野では、AIとディスプレイの基盤技術を組み合わせた「においセンサー」の試作機を出展。ワインの香りをデバイスが分析して、あらかじめデータベース化された「ワインの香り」情報にマッチングさせます。工場でワインや日本酒を製造するときの品質チェックなどを想定しているそうです。

  • 試作中の「においセンサー」。国内では日本酒の製造品質チェックにも実験的に使われたそうです

シャープが宇宙用のソーラーパネルシートを提供していることはご存じでしょうか? シャープは国内で唯一、JAXA(宇宙航空研究開発機構)に認定された太陽電池メーカーなのです。1976年の実用衛星「うめ」にシャープの太陽電池が搭載されて以来、180基以上の日本の人工衛星にシャープの技術と製品が活躍してきました。-100℃~100℃まで温度が変化し、強い宇宙線にさらされる過酷な環境でも劣化しない宇宙用ソーラーシートも、シャープが手がけています。

  • シャープの宇宙用ソーラーパネルシート

ブースにはソーラーシートの実物がありました。本体は巻き取りが可能で、コンパクトに収納して持ち運び、使用環境で大きく広げて発電するという使い方ができます。宇宙空間でパネルを変形・展開する、人工衛星のソーラーシートモジュールとしても活躍しています。CESではまだあまり多くは見かけませんが、いま宇宙に関わるテクノロジーやビジネスが世界中で注目されています。CESの出展をきっかけに、シャープの宇宙用ソーラーシートが米NASAにも採用されたらとても誇らしいでしょうね。