「マイナビ2023年卒入社半年後調査」では、2023年に新卒で就職した学生を対象に、入社半年後の満足度やキャリア観について追跡調査を実施しています。その結果によると、新社会人の40.1%が入社半年で就活時より勤務先満足度が低下しているそうです。
いったいなぜ満足度は低下するのでしょうか? アンケート調査結果をもとに原因を探ります。
新社会人の40.1%が、就活時より勤務先満足度が低下
今回の調査の主な目的は、「就職活動をした人の"その後"の状況」を知ることです。新社会人として入社して、現在の職場をどう感じているのかを聞いています。
調査結果で特に気になるのが、就職活動時と入社半年が経過した時点での、勤務先への満足度の変化です。驚くべきことに、全体の約40%の新社会人が入社半年で満足度が低下していると回答しています。
その主な要因として筆者が着目したのが、「インターンシップ・仕事体験の参加の有無」と「就活満足度」です。
今回の調査では、勤務先満足度を「満足度1(満足度低い)」から「満足度5(満足度高い)」まで5段階で聞いています。
その結果を、インターンシップ・仕事体験の参加有無別で比較したところ、勤務先満足度4と5を合計した回答者の割合は、インターンシップ参加者で見ると80.2%ありましたが、不参加者の場合は71.2%と、9.0ポイントの差がついています。
インターンシップ・仕事体験に参加することで、企業風土や職場環境に対する理解度が上がり、就活時と入社後のイメージギャップが低く抑えられたことが、勤務先満足度の向上にもつながったのではないでしょうか。
また、就職活動を振り返り満足のいく活動ができたかについて、5段階で聞いた結果では、「満足のいく活動ができた」就活満足度の高い学生ほど、勤務先満足度が高い結果となっています(グラフ中:総合満足度4・5)。
逆に、「不満が残る活動だった」と回答した就活満足度が低い学生は、勤務先満足度も低い結果となりました(グラフ中:総合満足度1・2)。
インターンシップや仕事体験の参加を含めて、就職活動全般について自分なりに満足できる活動をすることが、結果的に後悔のない就職先選びにもつながっていると考えられそうです。
入社後のギャップは、「給料が少ない」「体質が古い」「残業が多い」
会社に対するイメージギャップが、入社前後でできるだけ小さくできると、勤務先に対する満足度も高くなると考えられますが、学生は入社後にどのようなギャップを感じているのでしょうか。
今回の調査では、入社を決めた時と実際に働いてみて感じたギャップについて、21のネガティブな項目で確認しています。
「思ったより給料が少ない」(26.2%)、「体質が古い」(23.4%)、「残業が多い」(19.6%)などが上位にあがっています。
「思ったより給料が少ない」と感じるのは、初任給から税金や社会保険料が引かれてしまうので、そう感じるのは仕方がない部分があると思います。しかし、想像していたより「体質が古い」とか「残業が多い」と感じるのは、リアルな情報収集が不足していた可能性があります。
今回の調査では、2022年卒と2023年卒とで比較していますが、「業績が悪い」や「女性が活躍するための環境が整っていない」の2項目だけは前年に比べて回答者の割合が増加しているようです。
「業績が悪い」というのは、世界情勢や日本の経済状況を考えると一時的な傾向とも考えられますが、先行き不安な状態が続く限り、就活時に企業の業績を再確認しておくべきでしょう。
また、「女性が活躍するための環境が整っていない」という項目についても、女性活躍推進に対する企業の経営方針や実際の取り組み状況などについて、企業研究の一環として理解を深めておきたい部分です。
後悔のない就活をするために必要なことは?
今回の調査結果を踏まえ、これから就職活動をスタートする就活生に向けて、二つアドバイスをしたいと思います。一つは、インターンシップ・仕事体験に参加することです。
学業、クラブ活動、アルバイトなど学生生活が忙しくて、なかなか時間が取れないという事情はあるかと思いますが、社会人として後悔のないファーストキャリアを歩み始めるためにも、インターンシップ・仕事体験には積極的に参加して企業理解を深めましょう。
ここでは詳しくご紹介していませんが、インターンシップや仕事体験は、参加日数が多いほど、また参加回数が多いほど、入社後の勤務先満足度も高いようです。その点も考慮してプログラム選びをしてください。
もう一つは、OB・OG訪問を通じてできるだけリアルな情報収集をすることです。
入社後のギャップとしてあがった「体質が古い」や「残業が多い」といった項目は、就職サイトや企業ホームページでは知ることができません。また、給与、労働時間、休日休暇などの労働条件や、教育研修制度や学習支援制度なども同様です。
これらの情報は、実際にその会社で仕事をしているOB・OGに確認しましょう。
どれだけ制度が整っていても、実態とは食い違っている可能性があります。実際にどのように運用されているのかについてOB・OGに確認しましょう。
就活のさまざまな苦労を乗り越えて入社した会社なのに、半年もしないうちに自分の企業選びを後悔する事態にならないよう、インターンシップ・仕事体験の参加とOB・OG訪問は、決しておろそかにしないようにしてください。